【カブス0−3パドレス】シカゴ/リグレーフィールド、10月1日(日本時間2日)
マニー・マチャドの頭には、そもそも右打席に立てるのかという思いがよぎっていたはずだ。 一塁は空き、パドレスは1点差のリード。対戦相手は左腕の今永昇太(32)。カブスにとって好ましいマッチアップではない。
だがマチャドは余計なことを考えなかった。五回、打席へ向かい、カブスのベンチから申告敬遠の指示が出ることもないまま打席に入った。勝負は一瞬で決した。
初球、今永のスプリットがど真ん中に入った。マチャドは持ち味のスイングを解き放つ。激烈でありながら滑らか。右足に体重を乗せてのけぞる。それは「行った」と確信している合図だ。
案の定、打球はリグレーフィールドの左翼スタンド深くへ。3戦先勝方式のナ・リーグ、ワイルドカードシリーズの流れを呼び込む2ランとなった。少なくともパドレスの3-0の勝利を引き寄せ、「勝った方が勝ち抜け」の最終戦にもつれ込んだ。
「これこそがポストシーズンというものだよ。この観客の前で、そして大きなものが懸かっている状況でプレーできるのは本当に素晴らしいことだ」
マチャドはそう語った。
この勝利でパドレスは、短い歴史しかない3戦先勝方式のワイルドカードシリーズでこれまで誰も成し遂げなかったことをやってのけた。敵地で第1戦を落としながら、第2戦で巻き返して勝った最初のチームとなった。
「この山を登るのは簡単じゃない。いまは最高中の最高が集まっていて、みんながとんでもないシーズンを送ってきた。だからこそ、われわれはここにいる。とにかくグラウンドに出て、競い合って、楽しんで、持てるものをすべて置いてくるだけだ」
マチャドはそう続けた。
右腕ディラン・シースが3回2/3でこのキャリアで最高といえるポストシーズンの先発。継投はパドレス自慢の「スーパー救援陣」へつないだ。今季ポストシーズンで初めて与えられたリードを守る役目にその名に違わぬ働きで応えた。
エイドリアン・モレホンはわずか33球で相手打者7人をすべて打ち取った。メイソン・ミラーは登板直後から5者連続三振と支配を継続。なかでもカーステン・ケリーを見逃し三振に仕留めた、コーナーに決めた104.5マイル(約168.2キロ)の速球は「史上最高の1球」と主張してもおかしくない代物だった。少なくとも、2008年以降の投球データではポストシーズン最速記録を更新した。
クローザーのロベルト・スアレスが4アウトのセーブで試合を締めくくった。投手起用が完璧にハマったこの日、必要だったのは一振りだけ。相応しく、その一撃を放ったのはマチャドだった。
「3点リードはレギュラーシーズンなら8点差みたいなものだ」
マチャドの打球がバットを離れた瞬間、二塁と三塁の間で歓喜のジャンプを見せたフェルナンド・タティスJr.はそう語った。
「僕らにも投手陣にも、それで十分だった」
マチャドはこのパドレス野球の時代を通じて、常に“柱”であり続けてきた。6年で4度のポストシーズン進出、そして球団史上2度目となる連続のプレーオフ出場を実現した、前例のない時代だ。その間にマチャドは、ポストシーズン通算本塁打8本、15打点の球団記録を打ち立てている。
「力み過ぎず、落ち着いて、いいスイングをしようとしている」
マイク・シルト監督はそう語った。
「マニーがあの状態にある時は、相手にとって致命的な場面になる」と続けた。
そもそもマチャドがあの場面に打席へ立てたこと自体に話を戻そう。第1戦は上位打線が11打数0安打に終わったが、第2戦は見違えるように機能した。
タティスとルイス・アライズがともに安打で出塁、ダブルスチールを決めて初回の先制点を演出した。五回は、タティスが1死から四球で出塁し、アライズがバントで走者を進めた。一塁は空いた。
カブスは第2戦の初回、右腕アンドリュー・キトレッジをオープナー起用。上位打線で強打の右打者(タティスとマチャド)に今永を対戦させない狙いだった。
右腕マイケル・ソロカはブルペンで待機していたが、クレイグ・カウンセル監督はソロカの投入を見送り、代わりにマチャドを歩かせるかどうかを思案した。
カウンセル監督は試合後にこう語った。
「結果だけ見れば、別の手を打つべきだったのかもしれない。要するに、今永を信頼していたということだ。彼はいい投球をしていたし、ボールも本当によかった。残念ながら、一つのミスが出た」
カウンセル監督の胸中がどうであれ、マチャドは打席に入る際、敬遠か勝負かについて考えは一つだったという。
「打つ」
そしてマチャドは、パドレスにとって今季最大の一打を放った。
