シーズンの開幕戦やポストシーズンの初戦の伝統になっているのが、両チームの選手による試合前の整列だ。ホームチームは大歓声。アウェイチームは大ブーイングで迎えられる。
こういった慣習を好む人もいれば、そうでない人もいる。ブルワーズの指揮官パット・マーフィーはどうやら後者のようだ。整列の際には、チームメートやコーチ陣とハイタッチや握手をすることが恒例。しかし、マーフィー監督はそれを全て無視する。
ナ・リーグ地区シリーズの初戦でも、当然のようにこの光景が見られた。先発メンバーが順にマーフィー監督の前を通り、手を差し出すが、指揮官は頑なに動かない。前を見据えたまま、反応せずに立っている。通り過ぎる選手たちからは、ついつい笑みがこぼれる。
「伝統みたいなものだね」とマーフィー監督は5日(日本時間6日)、笑みを交えながら話した。
「こういうセレモニーは“happy horse manure (=くだらないこと)”みたいなものだ。もっと言葉のキツい言い方もあるけど、公の場では言わないようにしてる」
と、言った直後にその「言わないようにしてる」言葉をうっかり口にしてしまうのが、まさにマーフィー監督らしさ。2年目の指揮官が何を言って、何をするかは誰にも読めない。
「それが“マーフ”って人なんだ。面白いよ。チーム全員が楽しんでると思う」
第2戦でオープナーとして先発する予定のアーロン・アシュビーは話す。
マーフィーにはもう一つよく知られたこだわりがある。
それが、10歳を過ぎたら誕生日を祝う必要はないというもの。理由は握手をしないのと同じく「無駄な儀式だから」とのことだ。
「だって、整列して握手して、ウォームアップしてからベンチに戻ったらまた握手して、変なハンドシェイクまでやるんだよ?そんなの“happy horse manure”だよ。さっさと試合を始めよう」
そんな名物監督に対して、選手たちがどのように応じるのかも個性が表れる。
「昔、確かオルランド・アルシア(元ブルワーズ遊撃手)に胸をパンチされて、倒れそうになったことがあったんだ。今はイェリッチがそんな感じだね。彼は分かっててやってるけど、アンドリュー・ボーンみたいに本気で握手しに来るヤツもいる。忘れてる選手もいるしね」とマーフィー監督は笑顔で語る。ただ、何があっても、自分の信念を曲げるつもりはないようだ。
「でも俺は絶対に握手しない。真っすぐラインに立つだけだ。誰も気づいてないと思ってたけど、見られてたんだね」
