パイレーツの143年の歴史で、スティーブ・ブラスほど多くの試合を現地で見てきた人物はいないかもしれない。選手時代から実況解説者として50年以上にわたりパイレーツに関わり、2019年に放送席を離れた今もPNCパークで姿を見かけることが多い。
ブラスは1960年代以降のほぼすべてのパイレーツ選手を現地で見てきたが、唯一、ポール・スキーンズだけは自宅で観戦するという。
その理由をスキーンズが尋ねると、ブラスはこう答えた。
「登板日には、自分の椅子に座り、センター方向のカメラで彼の投球をじっくり見るんだ。球筋は本当に踊っているように見えるからね」
そしてこう続ける。
「(スキーンズは)完璧な人間野球マシンだ。普通、パワー系投手は速球と変化球しか持たないが、スキーンズは速球、変化球に加え、さらに4種類の球種を操る。単なる『投げる力』じゃなく、投球の『パッケージ』を持っている。見ていて本当に楽しいんだ」
2025年、スキーンズは大きく飛躍した。
右投手としてパイレーツのシーズン最多三振(216)を記録し、投球回数も大幅に伸ばして187回2/3に到達。そして、防御率1.97はライブボール時代(ボールの反発が高い時代=1920年〜現在)のパイレーツ先発投手として歴代最高という記録づくめのシーズンとなった。この活躍により、スキーンズはサイ・ヤング賞の最終候補にも名を連ねている。
では、本当にパイレーツ史上最高のシーズンだったのか? 主要な指標を見てみよう。
防御率(ERA)
- ポール・スキーンズ 2025:1.97
- ボブ・ヴィール 1968:2.05
- スティーブ・ブラス 1968:2.12
ERA+で時代背景を考慮すると、1882年のデニー・ドリスコルの218に次ぐ217で、ほぼ歴代トップクラスだ。
勝利貢献度(Win Probability Added)
スキーンズの10勝10敗はサイ・ヤング賞への不利材料とされるかもしれないが、10敗はチームがわずか11点しか援護していないことが原因だ。
同指標でのランキング(WPAdded):
- グース・ゴッサージ 1977:5.9
- ケント・テクルヴ 1979:5.7
- レイ・クレマー 1926:5.5
- マーク・メランコン 2015:5.5
- ホワイティ・グラズナー 1921:5.1
- ポール・スキーンズ 2025:5.1
この指標はリリーフ投手に有利だが、スキーンズは先発でありながらリストに入る。つまり、フランチャイズ史上の先発投手としてチームの勝利確率を最も上げた可能性がある。
奪三振率
スキーンズは右投手として最多三振を記録したが、
三振率(K%):
- オリバー・ペレス 2004 29.7%
- ポール・スキーンズ 2025 29.5%
- フランシスコ・リリアーノ 2015 26.5%
9回あたり三振:
- オリバー・ペレス 11
- ポール・スキーンズ 10.4
- フランシスコ・リリアーノ 9.9
奪三振/与四球
- ポール・スキーンズ 5.1
- デニー・ドリスコル 4.9
- デーコン・フィリップ 4.7
回や打者単位の効率ではペレスやリリアーノに挟まれるが、与四球との比率ではスキーンズがトップで、デッドボール時代(ボールの反発が低かった時代=1900〜1919年ごろ)の投手も上回る。
防御率、三振数、チームへの貢献度を総合すると、スキーンズはパイレーツ史上最高の投手シーズンを送った可能性が高い。サイ・ヤング賞を獲得すれば、バーン・ロー(1960年)、ダグ・ドラベック(1990年)に続く3人目のパイレーツ受賞者となる。
「まだ若い。これからもっと良くなるだろう」と、1960年のサイ・ヤング賞受賞者、バーン・ローも期待を寄せている。
