パイレーツのポール・スキーンズが8日(日本時間9日)、地元のリトルリーグ球場に突然姿を見せた。
午後7時過ぎ、ペンシルベニア州ウェックスフォードを車で走っていたスキーンズは、インゴマー・フランクリンパーク・リトルリーグの本拠地であるベスタル・フィールドの照明がまだ灯っているのに気付いた。
ふと立ち寄ったスキーンズは、ベンチに座って子どもたちの練習を見守っていたが、スーパースターに気づいた選手や保護者たちが集まり始めると、球場はたちまち騒然となった。
その後、スキーンズは約2時間にわたってサインや写真撮影に応じただけでなく、子どもたちとキャッチボールも楽しんだ。
現場にいたインゴマーのコーチで球団理事を務めるエディ・デュビス氏は、「子どもたちの笑顔は本当に忘れられない。みんな憧れの選手を目の前にして、ただただ夢中になっていた」と振り返った。
スキーンズは翌9日(同10日)、本拠地PNCパークでドジャース戦に先発予定。そんな中で登板前日に足を運んだのは、自らが野球と出会い、夢を育んだ原点ともいえるリトルリーグのグラウンドだった。
インゴマーチームは10歳から12歳の選手で構成されており、レギュラーシーズンを終えたばかりで、この日は夏に控える複数の大会に向けて、平常の練習を行っていた。
ところが、スキーンズが現れたことで練習は事実上中断され、選手も保護者も24歳の若きエースにくぎ付けとなった。
当時、インゴマー・フランクリンパーク・リトルリーグの会長を務めるクリス・グレコ氏は仕事でニューヨークに滞在していたが、妻と3人の息子たちは球場にいた。騒ぎが始まると、現地にいた保護者の一人からすぐにメッセージが届いたという。
その夜遅く、グレコ氏は10歳の末っ子アンソニー君と電話で話した。憧れのスキーンズ本人に会ったアンソニー君は興奮冷めやらず、何が起きたのかを父親に説明しようとしても言葉がうまく出てこなかったという。
グレコ氏は「今夜はなかなか眠れないだろうね」と笑った。
アンソニー君は多くのピッツバーグの野球少年たちと同じように、パイレーツ戦ではいつもスキーンズのユニホームを着用し、誕生日やクリスマスにはスキーンズのサイン入りグッズを欲しがるほどの大ファンだ。
グレコ氏によると、今季、インゴマー・リトルリーグには、彼が知る中で最多の参加者を記録した。その背景には、スキーンズの人気と、近年のパイレーツの盛り上がりがあると感じている。
「ピッツバーグの子どもたちにとって、彼はまちがいなく野球界で一番大きな存在です」とグレコ氏は語る。
そして、こう続けた。
「子どもたちにとって、スキーンズこそが”野球そのもの”なんです」
グレコ氏らインゴマー・リトルリーグ関係者は、スキーンズとのつながりを持ち続けたいと考えている。ボランティアの保護者たちによって運営されているリーグでは、スキーンズのために特別仕様のインゴマーのユニホームを作成し、チームグッズなどを詰め合わせたギフトを贈る計画も進んでいる。
一方のスキーンズにとって、この日の立ち寄りは特別なイベントではなく、ごく自然な行動だったようだ。
その場にいたデュビス氏は、スキーンズがこう話していたと明かした。
「彼は『とにかく野球が大好きなんだ』と言っていました。野球のすべてが好きで、自分もあの年代だった頃を覚えている。リトルリーグがどれだけ特別な存在だったかも忘れていないんです」
約2時間、子どもたちとの交流を終えると、コーチ陣は感謝の気持ちを込めてビールを勧めた。しかし、スキーンズは笑顔でそれを断った。
理由はシンプルだった。
「いや、飲めないんだ。明日ドジャース戦で投げるから」
