若手左腕トールがグラブに刻む、亡き母の言葉

August 20th, 2026

MLBでは8月21日から23日(日本時間22日から24日)にかけて、「プレーヤーズ・ウィークエンド」が開催される。3つの主要テーマの一つが「感謝」だ。

そのテーマを体現しているのが、レッドソックスの新人ペイトン・トールだ。この週末に限らず、左腕は毎日、感謝と母への思いを背負ってプレーしている。

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その感謝は投球姿勢に表れている。マウンド上で跳ね回りながら拳を突き上げ、どんなことに対しても満面の笑みを浮かべる。到底届かない打球にも大げさなほど勢いよく跳びつき、ダグアウトではチームメートを力いっぱい抱きしめる。

トールは間違いなく、大きな体と大きな心を持った男だ。そして、その絶えることのないその喜びと感謝は、亡き母ジーナから受け継いでいる。

ジーナ・トールは、何年にもわたり大腸がんと闘いながら一度も弱音を吐かず、2024年5月に亡くなった。それからわずか2カ月後、レッドソックスは息子をドラフト全体50位で指名した。

彼女はレッドソックス、そして野球界全体にペイトンという特別な贈り物を残した。球界でも屈指の飾らない、清々しいほど純粋な人物である。

「毎試合前にセンターの中央まで走っていくんだけど、そこでは母と会話しているような感覚になる。心の支えが必要なとき、いつでも応援してくれる人がいると分かっているのは本当に心強い。母からは、喜びを持ってプレーし、なぜ野球を愛しているのかを周りに示しなさいと言われてきた。僕は5日ごとにマウンドへ出て、それを実践できる」と先日、ペイトンは語った。

母からの愛はグラブにも表れており、外側に“You’re so pretty.”(あなたは本当に素敵だ)の言葉が刻まれている。

これはトールが高校時代、緊張をほぐそうとジーナがふざけて叫んでいた言葉だ。当時は恥ずかしく感じていたが、今は母の声が聞こえてくることを愛おしく思っている。年月を経たことで、母の思いが理解でき、心の支えになっている。

「母の声が聞こえてくるようなんだ。高校時代は毎試合、母が来ていることがすぐに分かった。必ず『You're so pretty』と叫ぶからね。長い間、僕を恥ずかしがらせるために言っていると思っていたけど、母はただ僕を愛してくれていたんだと気づけたんだ」と、その言葉に込められた意味を尋ねられ、トールは涙を流しながら語った。

「だからグラブを見てその言葉を目にするたび、ちょっとしたメッセージを思い出す。『グラウンドでは嫌なことも起きる。でも、あなたは今も素敵で素晴らしい。あなたはただの野球選手以上の存在だ』ってね」

実際、トールは野球選手である以外にも、さまざまな顔を持っている。先日のオールスター休暇には、ボストンで小規模ながら心温まる式を挙げ、妻デビンの夫となった。プロ野球選手を目指すチャーリーにとっては、献身的な兄でもある。そして、ジーナが亡くなってから絶え間ない支えを与えてきたチャドの誇り高き息子だ。

そして何よりも、ペイトン・トールはジーナ・トールの息子だ。今も母にメッセージを送り続けている。

「毎日メッセージを送る人のリストがあって、母もその一人だ。悪態をずらりと並べた後に、『愛してる、会いたい』と送っている」とトールは笑顔で語った。

ジーナはかなり歯切れのいい言葉遣いをする人だった。それもペイトンが受け継いだものの一つだ。

「母の言葉で一番好きなのは、おそらく『私はイエスを愛しているけど、ちょっと口が悪い』だ。母にはそういう気の強さがあった。母が時々送ってくれたメッセージを思い出すと、かなり荒っぽい言葉も入っていた。でも、それ以上ないほど愛情のこもった言葉でもあったんだ。それが僕たちの話し方で、母が愛情を示す方法だったんだ」とトールは語った。

ペイトンの受信ボックスには、母から繰り返し届くお気に入りの言葉がいくつかあった。

その一つがこれだ。「今日は最高にイカした自分でいるのにぴったりの日。行け、思いっきりぶちかましてこい」

もう一つはこうだった。「行ってこい。自分のやるべきことをやってきなさい。私ががんをぶっ飛ばしているんだから、あなたも相手をぶっ飛ばしてきなさい」

ジーナは優しさと強さを絶妙に併せ持っていた。

「僕の家族が持っている粘り強さ、勤勉さ、そして絶えることのない思いやりは、すべて母から来ている」とペイトンは語った。

トールが2025年8月29日、フェンウェイパークでポール・スキーンズを相手に堂々のメジャーデビューを飾ったときに亡き母だったらなんと言っていたか、息子は確信しているようだ。

「『まだまだへっぽこね』と言っただろうね」とトールは笑った。

「一番謙虚にさせられたのは家にいるときだった。『調子に乗るんじゃないよ。ママはまだ、あんたを痛い目に遭わせられるんだから』と念を押されていた」

トールにとってつらいのは、その母にも負けないほどの情熱を持った土地で、球界屈指の若手投手へ成長する姿を母に見てもらえないことだ。

「母はこれまで出会ったなかで最高の人の一人だった。もちろん身びいきもあるだろうけど、同じことを言う人は大勢いる。ここにいないのが残念だ。もしここにいたら、きっと有名になっていただろう。ボストンは母を愛し、母もボストンを愛したはずだ。母の一面を少しでも見せられる機会は、いつだって特別なんだ」とトールは語った。