シュワーバー決着で、次の主役はアロンソか

December 10th, 2025

カイル・シュワーバーがフィリーズと結んだ超大型契約が、2025年ウインターミーティング2日目のハイライトとなった。閉幕する時、その主役はピート・アロンソになるだろうか。

フィリーズと結んだ5年総額1億5000万ドル(約234億円)の契約によって、今オフ最大の長距離砲はフリーエージェント市場から姿を消した。各球団が2026年以降の戦力アップを模索する中で、その市場のトップにはアロンソが残っている。

メッツ、レッドソックス、オリオールズの3球団が、今もアロンソ獲得の本命と見られている。アロンソは今季、全162試合に出場して38本塁打、126打点、OPS.871を記録。2022年以降は毎年オールスターに選出されており、この3年間の平均成績は159試合で39本塁打、115打点、OPS.838となっている。

アロンソは9日(日本時間10日)、タンパの自宅から車でオーランドへ向かい、レッドソックスとオリオールズの首脳陣と対面で会談する予定になっていたが、実際に会談が行われたかどうかは現時点で確認されていない。

レッドソックスとオリオールズは、ともに打線の中軸を打てる長距離砲の補強を目指している。一方、メッツは過去7年間にわたり、アロンソの長打力の恩恵を受けてきた球団だ。

関係者によると、メッツのデービッド・スターンズ編成本部長は、昨年2月にアロンソと2年総額5400万ドル(約84億円)の契約を結んだものの、今回の交渉では3年を超える契約を提示することには慎重だとみられている。アロンソは今季終了後、その契約の最終年と年俸2400万ドル(約37億円)の部分をオプトアウト(契約破棄)し、2年連続でフリーエージェントとなったが、今回はクオリファイング・オファーの対象にはなっていない。

アロンソより約2歳年上で、事実上DH専任のシュワーバーでさえ、5年契約を勝ち取ったことを考えると、アロンソ側も同様に5年契約を求め、年俸平均約3000万ドル(約47億円)前後の条件を狙うと見られている。

メッツが3年以上の契約に難色を示すようなら、2016年ドラフト2巡目で指名した主砲を、レッドソックスやオリオールズにさらわれる可能性も出てくる。外野手のブランドン・ニモをレンジャーズへトレードし、フリーエージェントだった守護神エドウィン・ディアスもドジャースへ移籍したメッツにおいて、この交渉の行方を左右する“切り札”になり得るのが、スティーブ・コーエン球団オーナーだ。

アロンソを失うことになれば、球団を去る人気選手は3人目となり、メッツファンにとっては大きな痛手になる。期待外れに終わった2025年シーズンを受けて、コーエン球団オーナーは、どんな条件を払ってでもアロンソとの契約をまとめるようスターンズ編成本部長に指示するのだろうか。

「今のメッツには相当なプレッシャーがかかっている」とナ・リーグ球団の幹部は話す。

「このオフにやるべきことはまだたくさんあるが、アロンソを引き留められれば、やるべき課題の中でも大きな一つを片付けたことになる」

アロンソ(あるいは、他球団と契約した場合に代役を務められる中軸打者)に加えて、メッツは先発投手、救援投手をあと1人か2人、さらにニモの代わりとなる外野手の補強を目指している。

ディアスの契約が成立し、次に動くのは誰か

ディアスがドジャースと結んだ3年総額6900万ドル(約108億円)の契約は、救援投手市場の相場を決める契約になり、残っているリリーフ投手たちの契約交渉が一気に進むきっかけになりそうだ。

その中で、パドレスで昨季ナ・リーグ最多の40セーブを挙げたロベルト・スアレスが、次に契約を勝ち取る大物救援投手になる可能性がある。

関係者によると、スアレスの評価はディアスとの契約成立後に一段と高まり、メッツ、ブルージェイズ、ブレーブスが特に積極的な獲得候補として名前が挙がっている。

スアレスは3月に35歳になるが、ここ2シーズンはリーグ有数のクローザーとして結果を残してきた。2024年シーズンの開幕以降は135試合に登板し、76セーブ、防御率2.87をマークしている。

今オフの救援投手市場では、4年以上の契約を勝ち取った投手がまだ出ていないことを考えれば、スアレスも同じ3年程度の契約を視野に入れていると考えるのが自然だろう。ディアスの平均年俸2300万ドル(約35億8800万円)には届かないとみられるが、デビン・ウィリアムズがメッツと3年契約で得た1年あたり1700万ドル(約26億5200万円)前後を狙える立場にあるかもしれない。

もう1人、大きな注目を集めている救援投手がピート・フェアバンクスだ。レイズが2026年の年俸1100万ドル(約17億1600万円)の球団オプション(契約延長権)を行使しなかったことでフリーエージェントになった。ブルージェイズ、メッツ、マーリンズ、ホワイトソックスなど複数球団が獲得に動いている。

このほか、ケンリー・ジャンセン、カイル・フィニガン、ルーク・ウィーバー、タイラー・ロジャースらも市場に残っている。

先発投手市場は足踏み

オーランドで開かれているウインターミーティングでは、シュワーバーやアロンソ、そしてフリーエージェントの救援投手たちが大きな注目を集めている一方で、先発投手市場は目立った動きがほとんどなく、ニュースもほとんど流れてこない。

市場のトップには、レンジャー・スアレス、フランバー・バルデス、今井達也、マイケル・キング、ザック・ギャレンら実力者が名を連ねている。それだけ多くの球団が先発ローテーションの補強を必要としているにもかかわらず、なぜ今週はこれほどまでに静かな状態が続いているのか――。

ディラン・シースがブルージェイズと結んだ7年総額2億1000万ドル(約328億円)の契約は、誰もが予想していたよりもはるかに早いタイミングで決まったため、先発投手市場でドミノ現象が起きるのではないかと予測する声も出ていた。だが、シースがサインしてからのこの2週間、そうした動きはまだ見られない。

ある球団幹部は、今オフの終わりまでにマッケンジー・ゴア、フレディ・ペラルタ、クリス・ブビッチ、エドワード・カブレラ、ミッチ・ケラーらが移籍候補になる可能性があるトレード市場の存在を指摘している。さらに、ア・リーグのサイ・ヤング賞を2度受賞しているタリク・スクーバルもいる。来夏のトレード期限が過ぎるまで、トレードの噂の中心に居続けると見られている。