「われわれはチームで勝ち、チームで負ける」痛恨エラーの若手投手への言葉

October 10th, 2025

NLDS第4戦は、フィリーズの若手リリーバー、オリオン・カークリングの悪送球でチームのシーズンに幕を下ろした。

延長10回、ドジャースのアンディ・パヘスの内野安打に対し、カークリングが本塁を狙った送球は大きく逸れ、捕手J.T.リアルミュートの頭上を越えてサヨナラの決勝点が入った。ドジャースの選手たちが三塁側ダグアウトから飛び出し、歓喜の輪をつくる中、マウンド付近にいたカークリングは膝に手をつき、頭を垂れたまま、その場から動けなかった。

右翼手のニック・カステヤノスは迷わず走り出した。歓喜に沸くドジャースの選手たちをかき分け、まっすぐカークリングのもとへ向かった。

「本能的に体が動いた。どんな気持ちか完全に理解したわけじゃないけれど、気づいたら走っていた」とカステヤノスは振り返る。

捕手リアルミュートがまず声をかけ、そのすぐ後にカステヤノスが横に立ち、「顔を上げろ」と肩を叩いた。

「一人じゃないってことを分かってほしかったんだ」

3人は肩を並べて一塁側のダグアウトへと向かうと、ロブ・トムソン監督がカークリングの胸を軽くたたきながら「顔を上げろ」と短く声をかけた。

「少し気持ちが高ぶっていたようだった。すべてを自分の責任に感じていたようだけど、われわれはチームで勝ち、チームで負ける」と監督は語った。

チームメートたちも同様の言葉を何度も、何度もカークリングに伝えた。世界一を目指して始まったフィリーズのシーズンは、まさかの幕切れとなったが、誰も責める者はいなかった。

「本当に大きな意味がある。みんなが自分のことを気にかけてくれていると感じた。すべてを物語っているよ」と泣き腫らした目でカークリングは答えた。

「顔を上げろ」

「野球にはこういうこともある」

「これはお前だけの責任じゃない」

「まだまだこれからだ」

チームメイトからはたくさんの言葉がかけられた。

ポストシーズンがエラーで終わった例は極めて珍しく、これが史上2度目。前回は2016年、ブルージェイズがレンジャーズにサヨナラ勝ちを収めたア・リーグ地区シリーズだった。

カステヤノス自身も、2022年のワールドシリーズで最後の打者となり、ファウルフライでアウトになった苦い経験がある。「その時、一塁コーチのパコがフィールドを一緒に歩いてくれた。あれはすごく救われた」と当時を振り返る。

カイル・シュワーバーも続ける。

「自分も昔、ポストシーズンで2つのエラーをしたことがある。一つのミスでキャリアが決まるわけじゃない。大事なのはそこから学んで前に進むことだ。カークリングのキャリアは、これで終わるようなものじゃない」

カークリング自身も、前を向こうとしている。

「今はめちゃくちゃつらい。でも、これを乗り越えて前に進んでいきたい。長いキャリアのスタートになると信じているよ」