あなたは優勝争いに加わるための大型補強や、最後のひと押しとなる選手を探すGMだとしよう。チームにぴったりのFA選手を見つけるには、市場の動きを知っておくことが大切だ
今年のFA市場は興味深い状況だ。才能ある選手は多く、特に中堅クラスの先発投手は豊富だが、球団の戦力を大きく変えるほどのスター選手はいない。ここ数年のようにアーロン・ジャッジ、大谷翔平、フアン・ソトのような存在は見当たらない。しかしその分、さまざまなポジションやタイプの選手が揃っており、チームにぴったり合う人材を選ぶことができる。ベースボール・サバントの新機能「スタットキャスト・ホット・ストーブ・トラッカー」を用い、ニーズに応じてどんな候補がいるか見ていこう。
なお、村上宗隆や今井達也といった日本のスター選手や、コディ・ポンス、アンソニー・ケイのように海外リーグから復帰する米国人選手については、2025年のStatcastデータがまだ公開されていないため、本記事では扱っていない。
ここでは野手を中心に紹介する。
野手編
総合的に最も優れた打者が欲しい!
期待加重出塁率(xwOBA、最低200打席・以下同)
- .403 カイル・シュワーバー
- .385 ピート・アロンソ
- .371 カイル・タッカー
- .366 トレント・グリシャム
- .362 グレイバー・トーレス
- .359 ジョシュ・ベル
- .353 ボー・ビシェット
今オフ、打者を補強したいなら、このあたりがエリート層だ。ここで使う指標は少し耳慣れないかもしれないが、要するに打球の質(打球速度、打球角度)だけでなく、コンタクト率(=どれだけ打球を発生できた/できなかったか。三振、四球、死球)も加味する。2025年のMLB平均は.316、最高はアーロン・ジャッジの.459であった。
つまり、カイル・シュワーバー、ピート・アロンソ、カイル・タッカーが今市場最高の打者だと考えたあなたは正しい。(ここでは2025年の打撃成績のみを対象としており、年齢補正による将来予測は行っていない点に留意)。また、トレント・グリシャムが34本塁打を正当に積み上げたこと(本拠地のヤンキー・スタジアムよりビジターで大幅に良かった点も念頭に)や、各地を渡り歩いたジョシュ・ベルにもまだパワーが残っている可能性を示している。
では、アレックス・ブレグマン(.336で12位)とコディ・ベリンジャー(.322で24位)はどうか。ともに依然として一流打者ではあるが、ブレグマンは全盛期(約.370)から落ち込み、OPSも前半戦から後半戦へちょうど200ポイント低下した。ベリンジャーは浮き沈みが多く評価を難しくしてきたが、グリシャムと異なりヤンキースタジアムの浅いライトフェンスの恩恵を受けた印象が強い(本拠地OPS.909に対しビジター.715)。xwOBAに基づけば、彼の実力はちょうどその中間あたりということになる。
とにかく強い球を打てる打者が欲しい!
ハードヒット率
- 59.6% カイル・シュワーバー
- 54.4% ピート・アロンソ
- 52.3% ロブ・レフスナイダー
- 49.5% ランダル・グリチャック
- 48.8% ボー・ビシェット
- 47.6% エウヘニオ・スアレス
- 47.2% トミー・ファム
予想通り、この指標でもシュワーバーとアロンソが上位だが、意外なことにロブ・レフスナイダーの名もある。来年3月で35歳、ここ10年は注目度の低いユーティリティとしてア・リーグを転々としたが、レッドソックスでの直近4年間ではOPS+123(平均比+23%)と、2023年の不振を挟んで優秀なシーズンが3度ある。年齢以外の明確な懸念は、極端なプラトーン型であり、右投手を極端に苦手としている点だ。
一方で左投手には滅法強い。2025年、対左125打席以上で.打率302、出塁率.399、長打率.560は全体10位、直近4年・通算500打席以上でも6位の成績だ。昨季、左投手相手に両コーナー外野/DHの生産性が低かった球団には、2026年にプレーオフ進出を狙うであろうロイヤルズ、レッズ、ガーディアンズ、ジャイアンツが含まれる。レフスナイダーが想像以上に価値あるオプションとなる可能性は高い。
強い打球を空中に飛ばす打者が欲しい!
バレル率
- 20.8% カイル・シュワーバー
- 18.9% ピート・アロンソ
- 15.3% ラウディ・テレス
- 14.3% エウヘニオ・スアレス
- 14.3% ヨアン・モンカダ
- 14.2% トレント・グリシャム
- 12.3% ロブ・レフスナイダー
- 12.0% ジョシュ・ベル
単純化して比べると、ハードヒットにはゴロも含まれるが、バレルは「上空に飛ぶハードヒット」のようなもの。打球速度・角度の最適な組み合わせで、スタットキャストの中でも特に予測性の高い指標として知られる。ここでもシュワーバーとアロンソは群を抜いている。
カイル・タッカーは10.8%(MLB平均8.6%超)で、総合力と年齢面を踏まえ最も総合力の高い選手といえる。スアレスとグリシャムも長打力を発揮した。彼らは特徴や実力がもうはっきりしている選手たちだ。
もっとも、全員がそうではない。ラウディ・テレスは調子が良ければ、コンタクトや走塁・守備の欠点をパワーで補うことができる。一方でヨアン・モンカダはより興味深い。10年前のクリス・セールのレッドソックス移籍の際に重要な駒となり、2019年にはホワイトソックスで25本塁打・OPS+141のスター級の年があったが、その後は衰えと負傷が続き、今年2月のキャンプ直前にエンゼルスと1年契約を結んだ。
再び親指と膝の負傷で離脱し、三塁守備はリーグで最も悪い部類だった。ただし打撃はOPS+116(平均比+16%)、半季で12本塁打。30歳のスイッチヒッターで、非力なチームで長く過ごしてきた経歴を踏まえれば、高いバレル率は魅力となる。こういったデータを積極的に捉える球団が価値を見いだす可能性はあるが、レギュラー三塁手としてではないだろう。
堅実な守備者が欲しい!
フィールド・ラン・バリュー(FRV)
- 9 コディ・ベリンジャー
- 7 タイ・フランス
- 6 カルロス・サンタナ
- 5 ハリソン・ベーダー
- 5 ミゲル・ロハス
- 4 ライアン・オハーン
- 3 アレックス・ブレグマン
スタッツキャストのFRVは、捕手のフレーミング、外野の送球、内外野の守備範囲(OAA)など複数の守備指標を統合し、単一指標で比較する。昨季の最高峰はパトリック・ベイリー、アレハンドロ・カーク、セダンヌ・ラファエラ、ピート・クロウ=アームストロングらで、ベイリーは31に到達した。今オフの市場にそこまでの守備者はいないが、それでも守備でチームに貢献してくれる選手はいる。
たとえばコディ・ベリンジャーは+9で、ビシェット(-10)やアロンソ(-8)といった守備に難を抱える他のFAと差別化される。外野の全ポジションと必要なら一塁もこなす器用さも魅力だ。打力はこのリストの最上位には及ばないが、総合力が高い。
タイ・フランスの守備は嬉しい誤算。ハリソン・ベイダーはスタッツキャストが計測してきた中でも屈指の外野手の一人であり、ワールドシリーズでのミゲル・ロハスの働きも記憶に新しい。
この市場が明確に欠いているのは強肩堅守の捕手だ。J.T.リアルミュート(-6)でさえ、主にフレーミングとブロッキングの面で年齢とともに守備力は低下している。ただ、走者阻止能力は依然として優れている。
足の速い選手が欲しい!
スプリントスピード(フィート/秒、括弧内はメートル/秒)
- 29.3(8.93) レーン・トーマス
- 28.8(8.78) ハリソン・ベイダー
- 28.4(8.66) JT.リアルミュート
- 28.4(8.66) セドリック・ムリンズ
- 28.3(8.63) クーパー・ハンメル
- 28.3(8.63) ヴィニー・カプラ
- 28.2(8.60) ウィリー・カストロ
- 28.2(8.60) コディ・ベリンジャー
俊足かどうかを示すのに多くの出場は要らないため、この指標は最低100打席に絞っている。MLB平均は27フィート/秒(8.23メートル/秒)で、トレイ・ターナーやビクター・スコット二世のような本物の快速は30 フィート/秒(9.14メートル/秒)を超える。目立つのはレーン・トーマスで、足底筋膜炎手術で早期離脱したことを懸念材料と見るか、それでもこのスピードを維持していた点を評価するかは見方次第だ。
ここには載っていないが、FA市場の盗塁王はジョシュ・ネイラーである。MLBで最も足の遅い部類でありながら30盗塁を記録した。盗塁においてスピードはあるに越したことはないが、今季のフアン・ソトが示したように、必須条件というわけでもない。
