ホームランダービーで勝つためには、何が必要なのだろうか。
予測は非常に難しい。毎年ルールや形式が変わる上に、一つの能力だけを競うエキシビションだからだ。さらに、毎年出場する8選手はそもそも球界屈指の長距離打者しか選ばれないため、選手間の差は比較的小さくなりやすい。
だからといって、予測が不可能な訳ではない。この10年間で、私たちは各選手がどれほど強く、どの方向へ打球を飛ばすのかが分かるようになった。近年では、バットスイングのる速さや、どのようにボールを捉えているのか、以前よりはるかに多くのことが分かるようになった。どの選手がホームランダービーで勝てるのを示す何らかの要素があるはずだ。
実際、それは存在する。
そこで、2016年にサンディエゴで行われた大会までさかのぼり、スタットキャスト時代の8度のホームランダービーを調べ、出場選手が大会前の前半戦でどのような成績を残していたのかを確認した。そのうえで、前半戦の主要なスタットキャストの打撃指標を比較し、ホームランダービーでの成功を予測する力を持つもの、あるいはまったく持たないものを調べた。そして、それらを1から99までの「ディンガー・スコア」にまとめた。前半戦の成績を一つの数字で表し、大会での勝ち上がりとどの程度関係するかを確認するもので、より先のラウンドへ進むほど比重を大きくしている。
なお、2020年には大会が開催されず、今回は2021年大会も除外しているため今回は8大会が対象となった。クアーズフィールドで行われた2021年大会は、フィラデルフィアとは当然ながら異なる物理的条件で開催されたため除外している。
これにより、8大会で各年8人の64選手と、2026年大会に出場する8選手を加えた、合計72選手を順位付けした。
もちろん、完璧な指標など存在しない。常に外部要因が影響する。たとえば、各打者が選ぶ投手の質が非常に重要な上に予測しにくい。家族やアマチュア時代のコーチが投手役として注目を浴びることも多い。結局、これは厳密な指標というより、楽しむためのツールだ。それでも「いったい何が重要なのか」を少しでも知ろうとするなら、ここには手がかりがある。なお、評価の対象はすべて、その年の大会を迎えるまでの前半戦の成績だけだ。
ディンガー・スコア上位、2016年以降(2021年を除く)
- 99 アーロン・ジャッジ(2017年、優勝)
- 99 オニール・クルーズ(2025年、2回戦進出、513フィート=約156.4メートルの本塁打)
- 97 ブラディミール・ゲレーロJr.(2023年、優勝)
- 88 フリオ・ロドリゲス(2022年、準優勝)
- 86 ロナルド・アクーニャJr.(2019年、2回戦進出)
- 85 ロナルド・アクーニャJr.(2022年)
- 81 フアン・ソト(2022年、優勝)
- 80 ジャンカルロ・スタントン(2016年、優勝)
- 79 ミゲル・サノ(2017年、準優勝)
この指標で順位付けした64選手のうち、スコア上位9人中8人が1回戦を突破し、6人が決勝へ進出、4人が優勝した。悪くない結果だ。では、反対に下位はどうだったのか。
ディンガー・スコア下位、2016年から2025年(2021年を除く)
- 1 アレックス・ブレグマン(2019年)
- 1 アドリー・ラッチマン(2023年)
- 10 アレックス・ブレグマン(2018年)
- 15 チャーリー・ブラックモン(2017年)
- 20 ホセ・ラミレス(2022年)
- 21 ルイス・ロバートJr.(2023年、2回戦出)
- 22 ホセ・ラミレス(2024年、2回戦進出)
- 23 ピート・アロンソ(2024年)
- 28 ウィル・マイヤーズ(2016年)
- 28 ムーキー・ベッツ(2023年)
この中で1回戦を突破した選手は、ロバートとラミレス(2024年)だけだった。もっとも、ラッチマンもロベルトに敗れながら見事なパフォーマンスを披露した。この指標で64選手中下位30人に入った選手たちの1回戦の成績は5勝25敗で、決勝まで進出したのは2016年のトッド・フレイジャーただ一人だった。その決勝ではスタントンに敗れている。
つまり、一定の意味はありそうだ。では、これは一体どのような仕組みで、2026年大会についてはどんなことが分かるのだろうか。
さまざまな指標を検証し、ホームランダービーでの成功と相関するものを調べた。その結果、前半戦のデータとして最も予測に役立った指標は、順に以下の通りだった。
- 補正打球速度
- バットスピード(2023年以降)
- 引っ張ったフライ性の打球に限定した打球速度
- コンタクト当たりのブラスト率(2023年以降)
「補正打球速度」とは、88マイル(約141.6キロ)以上で打たれた打球だけを対象に平均を算出した打球速度だ。それを下回る打球は結局、弱いコンタクトにすぎないため除外して考える。
「引っ張ったフライ性の打球」に注目するのは、引っ張ることが基本となる競技だからだ。過去10年間のホームランダービーで放たれた2300本以上の本塁打のうち、4分の3は引っ張った打球だった。直近3年間で逆方向への本塁打は、合計わずか6本しかない。ホームランダービーでの逆方向弾は、狙って打つものではなく、うれしい偶然だ。レギュラーシーズンにどれほど頻繁にフライ性の打球を引っ張っているかではなく、引っ張った時にどれほど強く打てているかが重要だ。
バットスピードが重要なのは、疲れた時に多少のミスを補う余裕を与えてくれるためだ。今年のバットスピード上位10人を見ると、その半数にあたるジュニオール・カミネロ、ジョーダン・ウォーカー、ジャック・カグリオーン、カイル・シュワーバー、ウィルソン・コントレラスが今回のホームランダービーに出場する。
一方、「ブラスト」とは、エリート級のバットスピードでボールを芯に近い位置で捉えた打球を指す。ルイス・アラエスやベッツのように、スイングは比較的遅くてもボールをうまく芯で捉える打者は多い。反対に、速く振れても芯で捉えられない打者も多い。その両方を実現できる数少ない選手はスターとなる。今年では、カミネロ、フアン・ソト、ヨルダン・アルバレスがブラスト率の上位5人に入っている。MLB全体でブラストとなった打球は、平均して打率.562、長打率1.181、ハードヒット率99.7%を記録している。打者にとって、まさに理想の打球そのものだと言える。
これを踏まえて、どのような示唆が得られるだろうか。その一つとして、明らかな結果だが前半戦に強い打球を打っているかどうかは非常に重要な指標の一つになる。
毎年、体格が比較的小さく軽い強打者が出場する。そうした選手は、タイミングや身体能力、狙った場所へ正確に引っ張る技術によって、試合での長打力を生み出している。もちろん、アレックス・ブレグマン(2018年、2019年)、ムーキー・ベッツ(2023年)、ジャズ・チザムJr.(2025年)のような選手が優れていないと言っているわけではない。素晴らしい選手であることは間違いない。ただ、こうした大会では苦戦する傾向がある。純粋なパワーが少なければ、それだけミスの許容範囲も狭くなり、数十回のスイングで完璧なタイミングを保ち続けなければならない。疲労が蓄積し、バットスピードがわずかに落ちるだけでも不安材料となる。
例えば、2度の優勝を誇るピート・アロンソの成績を見ればわかりやすい。クリーブランド開催で優勝した2019年や、ロサンゼルスで2回戦に進んだ2022年といずれも1回戦敗退だった2023年、2024年を比べると「ディンガー・スコア」が大きく異なっていたことがわかる。なお、優勝した2021年のコロラド大会は、ここでも対象に含めていない。
アロンソのディンガー・スコア
- 2019年:76(優勝)
- 2022年:74(2回戦進出)
- 2023年:32(1回戦敗退)
- 2024年:23(1回戦敗退)
なぜなのか。2023年と2024年は、前半戦のハードヒット関連の指標が明らかに低下していたからだ。信じられないかもしれないが、2024年には出場選手の中で、引っ張ったフライ性打球の打球速度が最も遅かった。ちなみに、今季のアロンソの基礎指標は、以前のピークにはわずかに届かないものの、大幅に改善している。仮に今大会に出場していれば、スコアは55前後となり、平均をやや上回る候補になっていた。
以上を踏まえ、2026年の出場選手の「ディンガー・スコア」は次のようになる。
2026年ディンガー・スコア
- 90 ジャック・カグリアノン
- 90 ジュニオール・カミネロ
- 86 ジョーダン・ウォーカー
- 77 村上宗隆
- 76 カイル・シュワーバー
- 63 ウィルソン・コントレラス
- 49 ブライス・ハーパー
- 44 ベン・ライス
この順位の多くは、感覚的にも理解できるはずだ。カミネロは、ウォーカーをわずかに上回ってバットスピードでメジャートップに立っている。ブラスト率もメジャー1位で、ウォーカー、カグリオーン、村上が僅差で続く。一方、「補正打球速度」でこのグループのトップに立つのはカグリオーンで、村上、ウォーカー、カミネロも大きく離されていない。
カミネロが昨年の決勝へ進出した実績は、この指標では加点されないが、もちろん不利になる訳でもない。このモデルで唯一少し評価を下げているのは、並外れたパワーを持ちながら、引っ張ったフライ性の打球の打球速度では出場選手中最下位であること(もちろんMLB全体と比較すれば依然として優秀な数字だ)。ただ、それでもなおカグリオーンとトップタイに入るほどのスコアを収めている。
下位メンバーについては、メジャー全体ではなく、過去と現在のホームランダービー出場選手と比較していることを忘れてはならない。そのため、ここの水準は極めて高い。ライスが素晴らしいシーズンを送っていることは間違いないが、2023年以降の出場選手では、バットスピードがホセ・ラミレス(2024年)と並び、ムーキー・ベッツ(2023年)に次いで遅い。
ただ、本当に注目すべきなのは、誰がトップにいるかではなく、最下位の評価だ。ライスは8位だが、1から99までのスケールで44を記録していることを考えれば、そこまで低い評価ではなく、72選手全体ではトップ40のすぐ外に位置する。前述したように、多くの年では最下位の選手が1、10、15といったスコアだった。つまり今年は、8人全員に可能性があり、これまで以上に層の厚い顔ぶれとなっている。
実際、各年の平均を比較すると、今年は圧倒的に最も層が厚く、最も強力な顔ぶれとなっており、フリオ・ロドリゲスとフアン・ソトが圧巻のショーを見せた2022年をも上回っている。
年別ディンガー・スコア平均
- 72/2026年
- 64/2022年
- 61/2017年
- 54/2019年
- 54/2025年
- 47/2016年
- 43/2023年
- 41/2018年
- 40/2024年
結果として、ライスは歴代でも群を抜いて「最も優れた最下位選手」となる。少なくともこの指標では、2024年大会なら4番目に高い評価を受けていた。今年の8人では最下位でも、過去10年間のホームランダービー出場選手と比較すれば、平均をほんのわずかに下回る程度だ。
今年はジャッジや大谷のような存在はいないかもしれない。それでも、将来の殿堂入りが極めて有力なハーパーとシュワーバーがいる。若い選手たちも、これからさらにキャリアを築き上げていくだろう。才能にあふれ、非常に強くバットを振る未来のスターたちがそろっている。さらに、8年前に近年屈指の記憶に残る決勝を演じた地元のスター2人も加わる。ホームランダービーに求められるものが、すべてそろっている。
文句のつけようがない、最高のシナリオだ。
