【プールB】イタリアがアメリカに勝利する番狂わせ アメリカは敗退の可能性も

March 11th, 2026

アメリカ6ー8イタリア】ヒューストン/ダイキンパーク、3月10日(日本時間11日)

イタリア代表は“カンツォーネ”を歌いながらやってきた。イタリア代表のドミニク・キャンゾーン(カンツォーネと綴りが同じ)ではない。イタリア語で歌を意味するカンツォーネだ。

アリゾナでの短いエキシビションマッチですぐに絆が深まり、プールBの試合に向けてここに向かうイタリア代表のメンバーは、チャーター機の座席の通路に立って、抱き合ったり体を揺らしたり、イタリアのバラードを大声で歌ったりしていた。

「私はワールドシリーズに出る球団にもいたことがあるが、こんなことは見たことがない」と、イタリアのネッド・コレッティGMは語った。

今、球界は、8対6で強大なアメリカ代表を打ち破った“アズーリ(イタリア代表の愛称)”への称賛を歌っている。

捕手カイル・ティール、遊撃手サム・アントナッチ、そして右翼手ジャック・カグリオーンが本塁打を放ち、先発のマイケル・ロレンゼンがスター揃いのアメリカ打線を4回2/3にわたって無失点に抑えた。そして、イタリア代表は、このプールBで無傷のまま決勝ラウンドに進出できる位置までたどり着いた。

「イタリアのような素晴らしい国のためにあんな番狂わせができたなんて。だからこそ私はスポーツを愛し、野球を愛するんだ。そして、チームがイタリアの人々のためにそれを成し遂げられたことをうれしく思う」と、ロレンゼンは語った。

イタリアはあす11日(日本時間12日)にメキシコと対する。そして、アメリカ代表はヒューストンのホテルで試合を観戦し、イタリアが自分たちにしたのと同じことをメキシコにもやってくれと呼びかけるだろう。

イタリアがメキシコに勝てば、イタリアとメキシコは共に準々決勝に進出する。メキシコが勝てば、メキシコは次のラウンドへと進出し、イタリアとアメリカの運命は失点率などのタイブレーカー(次ステージの進出条件)に委ねられる。

試合の流れは非常に単純だった。イタリアが序盤に大きなリードを奪い、その後終盤まで必死に耐え抜く。

九回2死、本塁打が出れば同点の場面で恐るべきアメリカのキャプテン、アーロン・ジャッジが打席に入った。イタリアの守護神グレッグ・ワイサートがジャッジを空振り三振に打ち取ると、イタリア野球史上最大の勝利が完結した。

「人生最高の日の一つだ。選手たちを誇りに思う。彼らは若いが、まるで10年間メジャーリーグでプレーしてきたかのようにプレーしている。集中力は抜群だった。そして、イタリア中の誰もがこのプレーを見るべきだ。私たちは彼らのために、子供たちのためにやっている。実現できる。可能性はある」と、イタリアのフランシスコ・セルベーリ監督は語った。

チームの大半がイタリア系アメリカ人で構成されているため、この試合はイタリアチームにより一層、刺激と活力が加わっていた。

もちろん、ベンチでのカフェイン補給もその一助となっている。

チームのキャプテン、ビニー・パスカンティーノがアルマーニのスポーツコートを着た本塁打を放った打者にエスプレッソを回し、両頬に軽くキスをする、というダグアウトでのセレブレーションは、話題を呼んだ。しかし、今大会序盤、数人の打者が飲んだエスプレッソを吐き出さなければならなかった。パスカンティーノがエスプレッソにアルコールを混ぜたからではなく、熱すぎたからだ。

「(温度の)調整を行った」とパスカンティーノ。 

エスプレッソは少し冷めてきたが、バットはまだ熱いままだ。

高く評価されているメッツの新人ノーラン・マクリーンと対峙したイタリア打線は、二回に爆発。ホワイトソックスの有望株コンビ、ティールとアントナッチが共に本塁打を打ち、イタリアが早々に3ー0とリードを手にした。

四回、カグリオーンがライアン・ヤーブローから時速110.4マイル(約177キロ)の2ランを放つと、アメリカファンの3万8653人の観客は静寂に包まれた。そして六回、救援右腕ブラッド・ケラーが送球エラーと暴投で崩れると、イタリアは信じられないことに8ー0とリードを奪った。

試合前、アメリカ代表のメンバーは、メキシコに対する感動的な勝利を酒を飲みながら笑いながら祝って、夜遅くまで起きていたと話していた。

アメリカ代表はアクセルから足を離してしまったのだろうか?

「いや。私たちが平凡だったと言うよりは、イタリアを称賛したい」とアメリカのマーク・デローサ監督は言った。

デローサ監督は同日早朝、MLBネットワークの番組「ホットストーブ」に出演し、チームが、もちろん事実ではないが、すでに準々決勝進出を決めているという印象を持っていると示唆して注目を集めた。

「言い間違えた。仲間(マット・ヴァスガーシアンとハロルド・レイノルズ)と『ホットストーブ』に出演していたが、計算を完全に読み間違えてしまった。メキシコがイタリアと対戦することを知っていて、もし今夜負けた場合の失点数、得点、アウト数など、あらゆる数字を計算していた。ただ言い間違えただけだ」

もしアメリカがイタリア戦で逆転勝利していれば、数字を計算する必要はなかっただろう。

アメリカはあと一歩で勝利をつかみかけた。ピート・クロウ=アームストロングの2本塁打とガナー・ヘンダーソンの本塁打で勢いづいたアメリカ打線は、試合の行方を分からなくした。九回1死でボビー・ウィットJr.がワイサートから単打を放ち、続くヘンダーソンは空振り三振。そして、残り1アウトの局面で打席にはジャッジ。観客は総立ちとなった。

「最後のアウトはジャッジだと分かっていたよ。だって、ジャッジはいつも地球上で最高の選手だからね」と、セルべーリ監督は振り返る。

キャプテン・アメリカはチャンスを得て、全力を尽くしたが、倒れた。

「自分の運命は自分の手で握っているものだと、いつも思う。運命は目の前にあったのに、イタリアがバットを振りながら現れたんだ」

 そして、イタリア代表は歌いながらやってきた。