マーリンズのエース、サンディ・アカンタラはトレード期限の日、家族とTVを観ながら、携帯電話を2秒おきに確認していたという。昨オフから続く移籍の噂が今回も絶えず、本人も「人生で最も厳しい一日」と語るほど落ち着かない一日だった。
午後6時の期限を過ぎると、アカンタラはようやく安堵の表情を見せた。
「移籍すると思っていたので、マイアミに残れてうれしい。ここが自分の家だからね。もし昨日、トレードされたら、それはそれ。今ここにいることがすべてで、すごく幸せだ」と語った。
今夏のトレード期限で最も注目すべき点は、「マーリンズが何をしなかったか」だ。球団はアルカンタラに加え、エドワード・カブレラ、アンソニー・ベンダーといった注目株を全員キープした。いずれも複数年の契約下にあり、即戦力レンタルとは違う高い価値が付けられていた。
編成本部長ピーター・ベンディックスは、「(マーリンズの決断が)トレード市場全体にどう影響したかは分からないが、われわれにとっては大きな意味を持つ。カブレラを含め、ほとんどの選手が来年以降も在籍できる。そこに若手を加えていく。それが持続可能な強さの土台になる」と語る。
マーリンズは6月13日以降、ブルワーズと並んでリーグ最多の27勝を記録している。シーズン前は“再建期”と目されていたチームが、ワイルドカード争いに7ゲーム差と急浮上し、フロントがトレード市場で慎重だった背景には、チームの近況が大きく影響していた。
「スプリングトレーニングからこのチームには力があると信じていた。選手個々の成長やチーム全体の結束がこの2カ月で結果として現れた。驚きはないし、今後も継続していくと信じている」とベンディックス本部長は言う。
期限前にチームを離れたのは捕手ニック・フォーテスと外野手ヘスス・サンチェスのみで、フォーテスの放出により、若手のアグスティン・ラミレスとリアム・ヒックスが正捕手を争う。またサンチェスの移籍により、プロスペクト10位のヤコブ・マーシーが昇格した。
「このグループで戦い続けられることを、みんなワクワクしている。ピーター(ベンディックス本部長)とはずっと連携してきた。多くの選手が今季大きく成長し、組織全体のタレントもステップアップしている。今いる戦力で勝負し続けることが楽しみだ」とクレイトン・マッカラー監督も笑顔を見せる。
6月13日時点で借金16だったチームが、残り2カ月で“奇跡の逆転”を狙う。
支えるのは残留した3人の投手陣だ。
ベンダーはチーム最多の18ホールド、防御率2.18と高い数字をマークし、カブレラは制球難や故障に悩まされながらも、5月4日以降の防御率2.39はナ・リーグ5位タイにつける。アカンタラもトミー・ジョン手術後の19登板で防御率7.14と苦しんだが、直近2試合は無失点と復調気配を見せる。
「すごくワクワクしてる。チームは勝ってるし、雰囲気も素晴らしい。自分もようやく調子が戻ってきた気がする。クラブハウスもベンチも以前とは全然違う空気で、今の野球を続ければ、プレーオフに行けると信じてる。みんなで歓喜を分かち合いたい」
エース・アルカンタラが見据えるのは10月だ。
