オリオールズは積極的に先発投手の補強を目指しており、アメリカン・リーグ東地区のライバル球団とトレード交渉を行った。そして19日(日本時間20日)、複数のプロスペクト(若手有望株)を放出し、高いポテンシャルを秘める右腕を獲得することに成功した。
オリオールズはレイズとのトレードで右腕シェーン・バズを獲得。対価として4人の有望株だけでなく、2026年ドラフトの戦力均衡ラウンドAの指名権(全体33位)を放出した。
トレードの詳細
オリオールズ獲得:右腕シェーン・バズ
レイズ獲得:外野手スレイター・デブラン(オリオールズの球団6位の有望株)、捕手ケイデン・ボディン(同10位)、右腕マイケル・フォレット(同11位)、外野手オースティン・オーバーン(同30位)、2026年ドラフトの戦力均衡ラウンドAの指名権(全体33位)
オリオールズはバズ獲得のために大きな対価を支払うことになったが、26歳の右腕が先発陣の戦力アップに貢献してくれると確信している。そう信じるだけの理由もある。
2017年にパイレーツからドラフト1巡目指名を受けたバズは、これまでのキャリアで健康維持に苦しみ、メジャー昇格後の4年間(2021~24年)でわずか23試合の先発にとどまった。2022年9月にトミー・ジョン手術を受け、翌2023年にはシーズンを全休している。
今季は防御率4.87に終わったが、先発登板(31)、投球イニング(166回1/3)、三振(176)はいずれもキャリアハイを更新。球団の保有権は2028年シーズンまで、あと3年残っているため、今後数年間はオリオールズの先発ローテーションの一角を担い、さらに成績を伸ばしていくことが期待される。
また、今季のバズがヤンキースのキャンプ地であるジョージ・M・スタインブレナー・フィールドで苦戦したことも覚えておくべきだろう。レイズは今季、本拠地トロピカーナフィールドを使えなかったため、ジョージ・M・スタインブレナー・フィールドを仮の本拠地として使用した。バズは打者有利のこの球場で16試合に先発し、防御率5.90と打ち込まれたが、敵地では15度の先発登板で防御率3.86に抑えている。被本塁打26本のうち18本はジョージ・M・スタインブレナー・フィールドで打たれた。
バズはフォーシーム、カーブ、カットボール、チェンジアップ、スライダーの5球種を投げ、フォーシームは今季、平均97マイル(約156キロ)を計測。100マイル(約161キロ)以上を10度マークし、最速100.4マイル(約162キロ)を2度記録した。
バズが加入したことで、オリオールズの先発ローテーションは以下のような顔ぶれになる。
- 右腕 カイル・ブラディッシュ
- 左腕 トレバー・ロジャース
- 右腕 シェーン・バズ
- 右腕 ディーン・クレーマー
- 右腕 タイラー・ウェルズ
その他の先発要員
左腕 ケイド・ポビッチ
右腕 アルバート・スアレス
右腕 ブランドン・ヤング
オリオールズが放出した選手のうち、ボディンは2025年ドラフト全体30位、デブランは同37位で指名された。偶然にも、オリオールズがデブランを指名した戦力均衡ラウンドAの指名権(全体37位)は、7月10日に救援右腕ブライアン・ベイカーをトレードで放出した際にレイズから獲得したものだった。
オリオールズとレイズは近年、頻繁にトレードを成立させている。2024年7月26日にはオリオールズが3人の有望株(外野手マシュー・エッツェル、外野手マック・ホーバス、右腕ジャクソン・バウマイスター)を放出し、レイズから先発右腕ザック・エフリンを獲得。なお、エフリンは現在フリーエージェント(FA)となっている。
フォレット(2023年ドラフト14巡目指名)とオーバーン(2024年ドラフト3巡目指名)はオリオールズに入団して以来、目覚ましい成長を遂げてきた。しかし、保有可能年数が残っている先発投手を獲得するためのコストは高く、オリオールズはバズのような質の高い先発投手を手に入れるために、4人の有望株を放出せざるを得なかった。
しかし、オリオールズの先発補強はこれで終了とはならないだろう。フランバー・バルデスとレンジャー・スアレスの両左腕のような大物FA投手の獲得を狙っており、先発ローテーションをさらにレベルアップさせるために、エース級の先発投手を1人、チームに加えようとしている。
75勝87敗でア・リーグ東地区の最下位に沈んだ今季からの巻き返すために、オリオールズは忙しいオフシーズンを過ごしている。マイク・エライアス編成本部長は2018年11月の就任以降、最も積極的に動いており、大型補強を続けている。
まずブルペンの補強に手を付け、クローザーのライアン・ヘルズリーとセットアッパーのアンドリュー・キットリッジを獲得。次に外野手の補強を敢行し、テイラー・ウォードとレオディ・タベラスを手に入れた。
そして、今オフ最大の補強は5年1億5500万ドル(約232億5000万円)の大型契約を結んだピート・アロンソだ。強打の一塁手にはチームの中心選手となることが期待されている。
こうした動きにより、オリオールズに残された最大の課題は先発ローテーションの強化となった。実力と将来性を兼ね備えた右腕(バズ)を手に入れたが、スプリングトレーニングが始まるまでに、先発ローテーションをさらに強化する余地は残されている。
