【ドジャース5-1ブルワーズ】ロサンゼルス/ドジャースタジアム、10月17日(日本時間10月18日)
仮にタイミング悪く瞬きした人がいても、音だけで何が起こったのかわかったはずだ。
大きな打球音と共に起こった歓声の後には、金属屋根の鈍い衝撃音とそれにつられて再びどよめきが聞こえる。フレディ・フリーマンは「おいおい、全然飛んでないじゃないか!」と冗談まじりに叫んでいた。
15日の練習で、大谷翔平(31)を見ていない人はいなかった。記憶に残る限り、ドジャースタジアムのフィールドで打撃練習を行ったのは初めて。さすがのパワーを発揮して、次々と打球を外野席まで運んだ。その中には、2日後の試合でも見られた右翼席の屋根にぶつかる、場外弾も含まれていた。
この試合は、まさに大谷劇場だった。3本塁打と6回10奪三振。投打二刀流の本領を発揮し、ドジャースをワールドシリーズへ導いた。一人の選手としての、MLB史上屈指のパフォーマンスとして語り継がれる活躍だった。直前まで打撃不振に陥っていた大谷は、この活躍でナ・リーグ優勝決定シリーズMVPに輝いた。
「この試合以外は僕も苦戦していましたし、逆に言えば僕が打てない時に、ムーキー(ベッツ)、テオ(ヘルナンデス)、その他の右バッター含めて全員がカバーしてくれる試合が多かった」と大谷は試合後にコメントした。
「なので、こういう日は逆に、打てない人がいる時にしっかり自分が打ったり、打線が苦しい時に先発ピッチャーがしっかりと抑える、カバーのし合いっていうのが、大事だと思う。今日の試合は僕の役割の中で、それがしっかりと発揮されていたのかなと思います」
ナ・リーグ地区シリーズでは18打数1安打(打率.056)に終わった大谷について、デーブ・ロバーツ監督は「原因はスイングのフォームの問題ではなく、フィリーズの左投手陣の充実や打席での判断にあった」と見ていた。ロバーツはブルワーズとの優勝決定シリーズ第1、2戦での打席内容には手応えを感じていたが、それでも大谷の成績は7打数1安打(打率.143)にとどまっていた。
メジャーキャリアで6試合連続2安打以下、しかも長打なしは、大谷にとってこれが3度目だった。ミルウォーキーからロサンゼルスへの移動中、打撃コーチのアーロン・ベイツとロバート・バン・スコヨックに「フィールドで打撃練習をしたい」と伝えた。
大谷は普段、スイングの細部に集中でき、管理された環境の室内バッティングケージで練習することを好む。だがフィールド上で打つことで、視覚的な感覚を変化させることができる。外野の芝生、あるいはそれをはるかに越える場所に打球が落ちるのを見ることには、独特の意味がある。
「打球の軌道やバックスピンのかかり具合を確認することは、とても有効だ。それにライトスタンドの屋根に当たるのを見るのも、悪くないだろうね」とロバーツ監督は語った。
さらに見逃せないのは、大谷のルーティン変更が早急に調子を取り戻す必要性から生まれながらも、同時にプレッシャーに飲み込まれない冷静さを保っていたという点だ。
「彼は特別な状況を意識するというよりも、単にルーティンを変えようとしていただけだと思う。普段から大谷はとても穏やかで、特にオフの日はリラックスしている。おそらくその日は新しい感覚、新しい流れを作りたかっただけだろう」とベイツ打撃コーチは話した。
ルーティンの変更は、すぐに結果に現れた。ナ・リーグ優勝決定シリーズ第3戦の初回、左腕アーロン・アシュビーの外角低めのスライダーを捉え、ライトへ痛烈な三塁打を放った。ワイルドカードシリーズ第1戦で2本塁打を放って以来の長打となった。
しかし、その試合での安打は1本のみ。その後、2三振を喫し、ポストシーズン全体での44打席のうち17度目の三振となった。
第4戦を迎えた時点で、大谷は7試合で29打数3安打(打率.103)と苦戦していた。加えて、この日は先発登板日であり、今季は登板と打撃好調が同時に噛み合うことは少なかった。2日前の会見では、「投手としての復帰が打撃に影響しているのでは」との質問にやや不快な表情を見せていた。
だが、この日たった一度の「生涯最高」の試合が、その見方を完全に覆した。
「ショウヘイを抑え込める期間には限界がある」とアンドリュー・フリードマン編成本部長は語った。
「ブルワーズは彼をよく封じていたし、素晴らしい仕事をした。でも誰よりもショウヘイ自身が自分にプレッシャーをかけている。彼がこうして爆発するのを、私たちは毎日待っていた」
ルーティンを変更しなくても、大谷が復調するのは時間の問題だったのかもしれない。だが、その活躍はチームの期待を凌駕した。そう、いつもと同じように。
