大谷翔平はいかに最強打者になったのか? 成長をデータで分析

5:01 AM UTC

大谷翔平(31)は球場でこれまで誰も見たことのないようなことをやっている。

読者の皆さんにとっては当たり前のことかもしれないが、近年の大谷の活躍を振り返るのに悪い時期はない。二刀流の天才は3年連続でMVPに輝き、そのうち2回はドジャース時代に受賞。また、大谷はドジャースのワールドシリーズ連覇にも貢献した。

ドジャース入団1年目、大谷は「50-50(50本塁打50盗塁)」の新記録を打ち立てた。そして今季、リーグ優勝を決めたポストシーズンの試合では、打っては3本塁打を放ち、投げては6回無失点、10三振の前人未到のパフォーマンスを見せた。ワールドシリーズでは1試合で4長打、そして9度の出塁を記録した。

大谷の成功の明白な理由は誰もが知っている。2024年以降、大谷はどの打者よりも多くのボールをバレルゾーン(理想的な打球速度と打球角度の組み合わせ)に打ち込み、同期間における盗塁数(79)はMLB4位であり、2025年にはかつてないほどの好調ぶりでマウンドに復帰した。しかし、もし可能なら、大谷に関してあまり報道されていないのは、過去の弱点をどのように克服し、真のスーパースターへと成長したかということだろう。

大谷の成功の秘訣のうち、特に打者としての活躍に注目して、過小評価されている点をいくつか見てみよう。

どの球種も大谷に対して安全ではない

大谷はエンゼルスでプレーした最初の3シーズン、直球に強い打者だった。直球に対しては長打率.586を記録し、556打席で36本塁打を放った。しかし、変化球に対しては弱く、長打率.396、本塁打は11本にとどまった。

大谷はエンゼルスで2021年にブレークし、自身初のMVP受賞の快挙を成し遂げた。このシーズンを境に、あらゆる球種を力強く打ち分ける打者として成熟の兆しが見え始めた。直球、変化球、そして緩急を問わず、その強さはエンゼルスでの最終シーズンとなった2023年以降、さらに強烈なものとなっている。

大谷の球種別長打率(2021年以降)

2021: 対直球.630 / 直球以外.557
2022: 対直球.582 / 直球以外.460
2023: 対直球.783 / 直球以外.558
2024: 対直球.577 / 直球以外.714
2025: 対直球.648 / 直球以外.595

さらにドジャース入団以降、大谷の各球種分類に対する打撃成績はリーグの中でも際立っている。

大谷の各球種分類における本塁打とランバリューのMLB順位(2024年以降)

  • ブレーキングボール(スライダー、スイーパーなど)に対する37本塁打(1位)
  • オフスピードピッチ(チェンジアップ、スプリットなど)に対する17本塁打(1位)
  • ブレーキングボールに対するランバリュー(得点価値)+49(1位)
  • オフスピードピッチに対するランバリュー+27(1位)
  • 直球に対するランバリュー+57(4位)
  • 直球に対する103本塁打(5位)

本塁打数であれ、全体的な得点への貢献であれ、大谷は直球、ブレーキングボール、オフスピードピッチに対してすべてトップ5に入る打者だ。あらゆる球種に対してこれほどの好成績を残すことは、特に大谷の周りに控えるドジャースの好打者を考えれば、対戦する投手にとっては非常に難しい状況を強いる。

2025年、大谷は8球種に対して20打席以上の打撃結果を記録。その内、7球種に対して長打率.571以上を記録したが、長打率が唯一.500を下回った球種もスイーパーで、長打率.488(49打席)だった。

苦手だった左腕を攻略

大谷は新人年に左腕相手に110打席でOPS.654を記録した。それ以来、長いキャリアを歩んで、左腕への対応を改善させてきた。

大谷の対左腕打撃成績(シーズン別)

2018: OPS.654、2本塁打(110打席)
2019: OPS.794、3本塁打(116打席)
2020: OPS.629、1本塁打(54打席)
2021: OPS.980、18本塁打(224打席)
2022: OPS.787、9本塁打(228打席)
2023: OPS.898、11本塁打(170打席)
2024: OPS.867、12本塁打(249打席)
2025: OPS.898、15本塁打(244打席)

大谷はエンゼルス入団当初は、左腕が先発するときは休養することも多かったため、対左腕の経験を積んだことが成長に寄与したかもしれない。大谷は最初の2シーズンでは左腕に対して合計216打席にしか立っていないが、2021年には224打席に立っている。

さらに、左腕に対する三振率も大幅に下がっている。2018年から2020年にかけて、左腕に対して大谷は31.1%の三振率を記録した。しかし、2021年以降は26.7%にまで改善。三振を減らし、より多くのボールを前に飛ばせるようになったことが、打撃成績の向上につながった。

ボールをさらに打ち上げるように

大谷は右腕、左腕を問わず、あらゆる球種を打ちこなせる打者に成長した。そして、ボールを空高く飛ばす技術も身につけた。

大谷のエア率(全打球に占めるフライ、ライナー、ポップフライの割合)は2018年は56.0%だったが、2019年と2020年は50%をわずかに上回る程度だった。つまり、大谷の打球のおよそ半分はゴロであり、より良い打撃結果に結びついていなかった。

しかし、この傾向は2021年に一変。大谷はそれ以降、毎年55%以上のエア率を記録し、直近3シーズンでは60%を超えた。2018年から2020年にかけては52.5%だったエア率は、2021年以降は59.9%の高水準に達した。

ボールを打ち上げることのメリットは明白だ。大谷のパワーポテンシャルはデビュー当時から明らかだったが、打球の半分がゴロだったことで、それを上手く発揮できないでいた。2021年以降、大谷の約6割の打球を打ち上げるようになってから、計233本塁打を放っている。これはアーロン・ジャッジの249本塁打に次いで、同期間のMLB2位の数字だ。

これらすべての要素を合わせると、大谷は球界で最も完成度の高い打者の一人と言えるだろう。確かに、大谷は空振りが多い。空振り率(Whiff%)は33.4%で、2025年の時点で下位4%にランクインしている。しかし、これはこの種のパワーヒッターにはつきものだ。そして、大谷は他のあらゆる面で優れているため、空振りは事実上問題にならない。

31歳になったが、大谷はまだ投打の両面で衰えの兆候を全く見せていない。あらゆる面で成長を遂げていることから、大谷の世代を超えた活躍がすぐに終わるとは考えにくい。