大谷翔平(31)は常に秘密兵器を持っている。
7つの球種を操り、しかもどれも厄介な球種を持つエースならではの稀有な能力だ。そして今季のポストシーズンで、"マジシャン"大谷は既に最新の技を繰り出している。
大谷はこの大一番でスプリットを復活させた。
かつて大谷の代名詞だったスプリットは、2025年のレギュラーシーズンではほぼ投じられてこなかった。しかし、フィリーズとの地区シリーズ(NLDS=5回戦制)の第1戦で、フィリーズの強力打線を相手に大谷はスプリットを復活。カイル・シュワーバー、ブライス・ハーパーといったリーグを代表する強打者から三振を奪った。
したがって、あす17日(日本時間18日)に行われるナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS=7回戦制)第4戦で投手・大谷と対するブルワーズも、あらゆることに備えなければいけない。ただ、大谷が投げてくるあらゆる球種に備えるのは不可能だ。
エンゼルス時代に幾度となく三振を奪ってきた決め球のスプリットは、ドジャース移籍後はほとんど見られなくなっていた。しかし、この大一番でスプリットは復活した。この背景には何があるのか。
覚えておいてほしいのは、MLBに挑戦した当初、大谷はスプリットが最大の武器だったということだ。それだけではなく、球界有数の球種だったと言っても過言ではない。
しかし、年を追うごとに大谷はスプリットをコントロールできなくなっていた。ストライクゾーンから遠く離れた、無駄な球が増え、そしてついにスプリットを封印した。
代わりに、大谷はスイーパーを多用し、2022年と2023年は第1球種となった。そしてドジャースに移籍してトミー・ジョン手術からのリハビリを終えた今季は、フォーシーム、スイーパー、新しいハードスライダー、カーブを決め球として用いた。投手のレパートリーが多様化の一途をたどる現代(英語記事)らしいアプローチだ。
そして、ついにかつての決め球・スプリットは、全体の5%に満たない割合に減っていた。
大谷のシーズン別スプリット投球割合:
- 2018: 22%
- 2021: 18%
- 2022: 12%
- 2023: 6%
- 2025: 5%
しかし、フィリーズ戦で突然、大谷はスプリットを復活させた。スプリットの投球割合は10%を超え、前述のように強打者から三振を奪った。そしてはるかに重要なのは、スプリットの使用割合が増えたことではなく、大谷のスプリットが良い状態に戻ったということだ。
大谷のスプリットは、ハーパーとシュワーバーから4度の空振りを奪った。大谷がスプリットでこれだけ多くの空振りを奪った試合は、2023年6月27日に遡る。
鍵となったのは、コントロールの復活だ。フィリーズ戦では大谷のスプリットはストライクゾーン下辺に見事に集まり、相手のスイングを誘いやすかった。
これが大谷がスプリットを投げたいスポットだ。相手に追いかけさせるボール球であっても、無駄球にはならない。エンゼルス時代末期のように、ゾーン付近に散らばる球ではなく、ゾーン下辺に集中させることが重要だ。
大谷が突如としてスプリットを増やした理由は何だろうか。
それはフィリーズの左打者に対して、2巡目で目先を変えるためだった。スプリットは大谷にとって、左打者に有効な3つの球種の1つだ。残りの2つであるカーブとハードスライダーは、共に2025シーズン中に開発し、使用頻度を高めてきた。この2球種はスプリットと並んで、フィリーズ打線に効果を発揮した。
たとえば、カーブは6月の投手復帰以降、8月までは一度も投げられていなかった。しかし、ポストシーズンに進出する頃にはカーブに自信を深め、NLDS第1戦では18%の割合で使用。そしてカーブでは7スイング中6度の空振り、5打席で4三振を奪った。
つまり、ポストシーズンの大谷は、新しい技(カーブとスライダー)を用いる一方で、古い技(スプリット)を復活させたのだ。
ポストシーズンの試合で、球界屈指の強打者たちを相手に、形を変える武器を繰り出す大谷の自信、そして成功は、ポストシーズンでも予測不可能な投球戦略を適応させ、その新しい戦略を即座に実行する彼の能力を物語っている。フィリーズが打者・大谷を攻めるプランを持っていたのと同じように、投手としての大谷はフィリーズの最強打者に対するプランを持っていた。
ブルワーズとの一戦でも、大谷はプランを持って臨むことだろう。スプリットを使うかどうかはまだ分からないが、何かが起こる可能性はある。
