ポストシーズン不振の大谷翔平、異例の屋外打撃練習

October 16th, 2025

ナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS=7回戦制)第3戦を翌日に控えたドジャースタジアムで、珍しい光景が見られた。大谷翔平がフィールド上で打撃練習を行ったのだ。

普段は室内で黙々とバットを振る大谷が、珍しくフィールドに出現したことで、静かな練習風景に一気に熱が入った。

マイケル・ブーブレの「Feeling Good」がスピーカーから流れる中、打席に向かう大谷にチームメートたちは歓声を上げた。5ラウンドの打撃練習で、大谷はボールをスタンドに運び、右翼スタンド最上部の屋根にまで届く特大弾を放つ場面もあった。この異例の行動は、ポストシーズンでの不振を打開するきっかけをつかむためだったのかもしれない。

「このままでは勝てない」――ロバーツ監督の苦言

NLCS開幕前、デーブ・ロバーツ監督は大谷の打撃不振について率直に語っていた。

「あのパフォーマンスでは、ワールドシリーズは勝てない」

ロバーツが言う「パフォーマンス」とは、地区シリーズ(NLDS)での18打数1安打9三振という数字を指す。

そのNLDSを突破し、ドジャースはブルワーズ相手にシリーズ2勝0敗と好スタートを切り、ホームで迎える第3戦からワールドシリーズ進出に王手をかける状況にある。しかし、大谷の打撃状態は相変わらず厳しい。

NLDS以降、深刻なスランプが続く

レッズとのワイルドカードシリーズでは、2本塁打4打点と存在感を示した大谷だが、その後の6試合では25打数2安打(打率.080)、2打点、5四球、12三振という苦しい成績だ。とはいえ、その中でも貴重な2安打はいずれも適時打(NLDS第2戦、NLCS第2戦)であり、申告敬遠からムーキー・ベッツの押し出し四球を誘うなど、チームに貢献した。

メジャーキャリアにおいて、大谷が6試合でわずか2安打(長打なし)という成績は、過去に2回のみ。いずれもエンゼルス時代の2019年と2020年だった。

「彼の存在自体が貢献」――ロバーツ監督は前向き

ロバーツ監督は、NLCSに入ってからは打席内容が改善していると評価しつつ、「もっとできるはず」とも語る。ただ、打率以上に「貢献」を重視しているとも強調した。

「貢献は打率だけでは測れない。ラインアップに名を連ね、四球を選び、ムーキーに得点機を作ること、それも立派な貢献だ。私はその考えを変えていない。私たちにはまだ長い道のりがある。ワールドシリーズを勝ち取るためにはね」

不振の要因:二刀流の影響?

大谷にとって二刀流は当たり前だが、今季は右肘の2度目の大手術からの復帰シーズンで、打者に専念する時間が長かった。過去には「登板日」や「登板翌日」に打撃成績が落ちる傾向があり、実際、今年もその傾向は少なからず見られた。しかし、ポストシーズンでは今のところ先発は1試合のみで、登板翌日は休養日だったため、影響は少ないと本人も語る。

「基本的には打撃に関してはやっぱり自分の思っている構え方であったりとか、技術的な部分っていうのがしっかりしていないと結果に結びつくのは難しい作業ではある。ピッチングは、自分がやれることをしっかりやれば、いい結果が生まれてくる可能性が高いので、あんまり(登板が打席成績に)関係はない」

不振の要因:スイングの判断

ロバーツ監督は、大谷のスランプの一因として「スイングの判断」を指摘する。特に、ストライクゾーンの際どいコースでのスイング率が大きく上昇している。レギュラーシーズンでは43.7%だったのが、ポストシーズンでは52.1%にまで増加し、これは75球以上を見た選手の中で最多。

このゾーンでのスイングは、大谷の打球の質が大きく下がるという傾向がある:

  • ストライクゾーン中央:打率.363/長打率.870/平均初速99.2マイル(159.6キロ)
  • シャドーゾーン:打率.251/長打率.516/平均初速92.1マイル(148.2キロ)

不振の要因:球種の変化

ポストシーズンに入り、大谷に対してフォーシームとシンカーの割合が増えている。

  • レギュラーシーズン:フォーシーム+シンカー=43.7%
  • ポストシーズン:同=49.3%(特にシンカーは13.8%→27.1%に倍増)

レギュラーシーズンではこの2球種に強かった大谷だが、ポストシーズンでは結果が出ていない

  • レギュラーシーズン:打率.280/長打率.619/wOBA.413/空振り率26.4%
  • ポストシーズン:打率.143/長打率.357/wOBA.269/空振り率14.8%

(※wOBA=出塁の質と量を示し、総合的な得点力の指標。.400以上でMVPクラスとされる)

復活は「時間の問題」か

このような不振は大谷にとって極めて珍しいが、「時間の問題でブレークするだろう」という期待も根強い。実際、大谷が不振の6試合で、ドジャースは5勝1敗と勝ち星を重ねている。

ロバーツ監督は「ワールドシリーズ連覇のためには大谷のベストパフォーマンスが必要」と語っており、それは大谷にとってもポジティブな励ましになっているようだ。

逆に言えば、打てば勝てると思ってるのかなと思うので、頑張りたいなと思っています」