ブルワーズvsカブス、因縁のNLDS第5戦の見所3選

October 11th, 2025

初めてのポストシーズンでの対決となったブルワーズとカブスのナ・リーグ地区シリーズ(NLDS=5回戦制)は、これまでの因縁を全て詰め込んだかのような、緊張感に溢れる4試合となっている。

ブルワーズの本拠地・ミルウォーキーで開催したシリーズは、ホームチームが連勝でいきなり王手をかけ、その勢いのまま突破を決めるかと思われた。しかし、その後シカゴに戻ったカブスが連勝で2勝2敗のタイに。両チームは再びミルウォーキーに戻り、第5戦に臨む。

カブスの指揮官にとっては古巣との対戦。対するブルワーズは、球団の象徴的実況アナウンサーのボブ・ユッカー氏との別れを告げた年となった。それぞれの背景と因縁を抱え「勝てば突破、負ければ敗退」の一戦が行われる。そんな試合の注目ポイントを3つ紹介しよう。

1 ブルワーズはどう投手陣をやりくりするか?

ブルワーズは第4戦を理想的なプランで迎えた。エースのフレディ・ペラルタが中4日と、通常通りのローテーションで登板し、敵地で突破を決めるつもりだった。しかし、初回からイアン・ハップに3ランを浴びると、プランは一気に瓦解した。

第5戦は再びブルペンゲーム(リリーフ投手で継投する作戦)となる。第2戦ではそれが功を奏したが、敗れれば即終了の試合では、たった1人の乱調がシーズンの終わりにつながりかねない。

ブルワーズはオープナーとしてトレバー・メギルを起用するが、鍵を握るのは23歳の豪腕新人ジェイコブ・ミジオロウスキーだろう。レギュラーシーズンでは潜在能力の高さを見せた一方で制球やメンタル面に波があり、第2戦では3回無失点と好投したが安定感は依然として課題だ。

もちろん新人にとって波があるのは当然だが、「負ければシーズン終了」という緊張感に満ちたマウンドでの登板は、感情のコントロールがより一層試される。ホームの歓声も、展開によってはプレッシャーになりかねない。

ブルワーズの投手起用は流動的だが、ミジオロウスキーには、できれば無失点で複数のイニングを投げて欲しいと期待しているだろう。これ以上ない重圧がかかる中、新人右腕がその期待に応えられるかが勝負の鍵となる。

2 カブスは長打力でリーグ優勝決定シリーズへ進めるか?

カブスはシーズン前半、リーグ随一の攻撃力を誇ったが、後半戦はカイル・タッカーの負傷やピート・クロウ=アームストロングの不振により得点力が低下。しかしポストシーズンで再び火がつき、最も必要なタイミングでそのパワーが戻ってきているように見える。

カブスは今ポストシーズン最多の11本塁打を放っており、第4戦ではハップ、10月を通して絶好調のマイケル・ブッシュ、そして日ごとに状態を上げているタッカーの3人が本塁打を放った。

ポストシーズンでは小技の重要性が語られることが多いが、最も確実に得点(つまり勝利)につながるのはやはり本塁打だ。野球評論家ジョー・シーアンが言うように、「ボールが遠くへ行けば、チームも遠くへ行く(勝ち進む)」のである。

カブスのこの地区シリーズでの巻き返しは、まさにその理論を証明している。問題は、このブルペンゲームが本塁打を打ちやすくするのか、難しくするのかということ。テレビ解説者がよく言うように、ブルペンゲームのリスクは「1人の投手の乱調で全てが崩れる」ことにある。その“1人”が現れたとき、カブスはそれを逃さずスタンドまで運べるだろうか。

3 パット・マーフィー対クレイグ・カウンセル―両指揮官による采配対決の行方は?

カブスのカウンセル監督は、ブルワーズで最も成功を収めた指揮官の1人。そのため、彼がミルウォーキーに”凱旋”する時はいつも注目が集まる。その後任であるマーフィー監督は、戦力が低下し苦戦も予想されたシーズンで、球団史上最高の成績を残した。そんな2人の采配が、両軍のシーズンの明暗を左右する。

マーフィー監督は、今シリーズで意外にも小技を積極的に使っており、第4戦では3点ビハインドの中で、無死一、二塁の場面で送りバントの指示を送っていた。

一方のカウンセル監督は、カブスへの移籍を昇進と捉えている節があり、昇給も伴ったことでブルワーズファンの反感を買っている。投手交代のためにマウンドへ向かうたび、ブーイングが浴びせられるのもそのためだ。

両ベンチの心理戦・駆け引きは、一球ごとに緊張感と重要度を増していく。負けたらシーズンが終了という大きなプレッシャーの中、因縁に一つの決着がつく。