あと4週間で投票期限を迎えるナショナル・リーグの新人王争いは、長らくカージナルスのJJ・ウェザーホルトとレッズのサル・スチュワートによる一騎打ちと考えられてきた。
確かに、守備力に優れたウェザーホルトと、打点王になる可能性もあるスチュワートは素晴らしいシーズンを送っている。しかし、2人だけではない。現時点で候補は4人いる。
- 外野手 カーソン・ベンジ(メッツ)
- 先発投手 ノーラン・マクリーン(メッツ)
- 一塁手/三塁手 スチュワート(レッズ)
- 二塁手 ウェザーホルト(カージナルス)
(もちろんローガン・ヘンダーソン、シェーン・ドローハン、ブラジェリー・ロドリゲス、ジョー・マックらも見逃してはいない。彼らも素晴らしいシーズンを送っている。ただし、出場機会の差が大きすぎるため、受賞争いへ加わることはないだろう)
4人の争いという印象が薄いのは、シーズンの大半で実際にそうではなかったからだ。
5月終了時点でマクリーンの防御率は4.21。ベンジのOPSは平均以下の.677で、当時のウェザーホルトより約100ポイント、スチュワートより150ポイント以上低かった。7月上旬の投票ではウェザーホルトがスチュワートを僅差で上回り、マクリーンが3位。4位はコナー・グリフィン、5位はTJ・ラムフィールドで、ベンジはトップ5にも入っていなかった。
しかし、それからの2カ月で状況は大きく変わった。グリフィンは負傷によりその間出場できずに脱落。ベンジは打席での構えを修正し、6月1日以降はOPS.836を記録した。スチュワートの.785を明確に上回り、苦しむウェザーホルト(.689)には大差をつけている。一方、防御率2.40のマクリーンは、新人という枠を超え、球界屈指の先発投手となっている。
新人王はシーズン全体を対象とする賞であり、「序盤に誰がリードしていたか」は重要ではない。そもそも非公式な模擬投票以外に、シーズン途中の順位は存在しない。実際に反映されるのは、レギュラーシーズン終了時に提出される票だけだ。
では、シーズンの8割強を消化した今、争いはどうなっているのか。それは何を重視するかによって変わる。
※成績はすべて27日の試合開始前時点。
WARではどう評価されるのか?
WARがすべてではなく、今後も絶対的な指標になることはない。それでも、比較を始めるうえで最も有用な出発点だ。27日時点のFanGraphs版WARは以下の通りとなっている。
- ウェザーホルト 4.5
- ベンジ 3.2
- マクリーン 2.7
- スチュワート 2.3
この数字が示す構図は明確だ。ウェザーホルトは打撃がほかの候補よりやや劣るものの堅実で、内野守備は最高水準にあり、ベンジは走攻守のバランスが優れている。スチュワートは最高の打力を持つ一方、走塁と守備では後れを取っており、大まかに言えば、いずれもスカウティング評価と一致する。
WARには複数の算出方法がある。数値は多少変わっても、順位は変わらない。守備をまったく異なる方法で評価するBaseball-Reference版でも、ウェザーホルトが4.8でトップに立ち、ベンジが3.1、マクリーンが2.4、スチュワートが2.0と同じ順番だ。WARの小数点以下に大きな意味はないため、ここで言えるのは、主要な2つの算出方式が同じ結論を示しているということだ。絶対的なものとして扱う必要はないが、合理的に考えれば無視することもできない。
では、ウェザーホルトが受賞争いをリードしているのか?
そうとも言い切れない。4月はOPS.856と素晴らしい成績を残し、その数字が今季の通算成績を支えてきた。しかし、その後の4カ月は打率.242、出塁率.337、長打率.346、OPS.683にとどまっている。特に8月は深刻で、OPSはわずか.645だ。9月も同程度か、それ以上に低調なら、シーズン全体でも平均以下の打者となる可能性がある。強力なライバルがいる以上、そうなればどれほど優れた守備力があっても物足りないだろう。
打点王候補のスチュワートの評価は?
スチュワートがシーズン終了時にMLB打点王となれば、新人としては史上3人目となる。過去の2人は、1939年の「あの」テッド・ウィリアムズと、1950年のウォルト・ドローポだ。ドローポは、出塁率.452のウィリアムズが3番を打つ打線で、年間を通じて5番に座っていた。
伝統的な数字と先進的な分析、どちらを重視するとしても、極めて優れた記録であることに変わりはない。ただし、打点には考慮すべき背景もある。カーソン・ベンジは50試合、ウェザーホルトは125試合で先頭打者を務めてきた。そのため初回は必ず走者なしで打席に入り、それ以降も打点を上げるには下位打線の出塁に頼ることになる。一方、スチュワートはシーズンを通じてエリー・デラクルーズの後ろを打ち、両者は3番と4番、または1番と2番の順で並んできた。
当然ながら、スチュワートには打点を挙げる機会そのものが多かった。これは否定できない事実だ。
当然ながら、スチュワートには打点を挙げる機会そのものが多かった。これは否定できない事実だ。
打席時に塁上にいた走者
- スチュワート 359人
- ベンジ 274人
- ウェザーホルト 252人
スチュワートが打席に立った際の走者数は、ウェザーホルトより100人以上多い。少なくとも1人の走者を置いた打席の割合も44%で、ベンジの37%、ウェザーホルトの32%を大きく上回る。
得点機会に大きな差があることは明白だ。もちろん、走者がいても実際に生還させなければ打点にはならず、スチュワートはその点でも非常に優れている。打席時に塁上にいた走者の20%を生還させており、MLBでも上位に入る数字だ。ベンジは15%、ウェザーホルトは14%にとどまる。スチュワートが見事な働きをしていることと、ほかの候補よりはるかに多くの機会を与えられていることは、どちらも事実だ。
打点以外の攻撃面は?
見落としがちだが重要な要素の一つが、打者有利の球場を本拠地としているかどうかだ。
例えば、ロッキーズの打者や投手を評価する際、球場の影響を補正せずに数字を見ることはない。球場ごとに特徴が異なるのは野球の魅力の一つであり、現在はそれぞれが成績に及ぼす影響もかなり正確に把握できている。
ウェザーホルトがプレーするカージナルスの本拠地は、左打者が本塁打を放つにはMLBで最も難しい球場だ。一方、スチュワートがプレーするレッズの本拠地は、右打者の本塁打が出やすい上位5球場に入る。攻撃力は本塁打だけで決まるわけではなく、シンシナティでは一部の打球が本塁打になる代わりに、本塁打以外の長打が減る面もある。それでも総合的には、セントルイスよりシンシナティの方が打者に有利だ。メッツの本拠地はおおむね平均的で、シティフィールドは以前のような極端な投手有利の球場ではなくなっている。
この違いは、スチュワートとウェザーホルトの成績にも表れている。スチュワートの本拠地OPSはアウェイ時より30ポイント高い。一方、ウェザーホルトの本拠地OPSは遠征時より160ポイント低い。こうした環境差に加え、走者なしで迎える全打席の50~70%についても考慮しなければならない。
そのために最も適しているのがOPS+と、関連指標であるwRC+だ。どちらもリーグ平均を100としている。
- スチュワート OPS+ 120、wRC+ 116
- ベンジ OPS+ 115、wRC+ 115
- ウェザーホルト OPS+ 108、wRC+ 107
どちらの指標も同じ結論を示している。第一に、本拠地球場の影響を補正しても、最も優れた打者はスチュワートだ。第二に、ここ数カ月絶好調のベンジとの差は、それほど大きくない。
守備も重要ではないのか?
もちろん重要だ。スタットキャストのチーム守備ランキングを見ると、上位9球団はすべてプレーオフ争いに残っている。一方、下位9球団は例外なく、借金が少なくとも4ある。
勝つために必ずしも圧倒的な守備力が必要なわけではない。しかし、守備が悪いチームが勝つのはほぼ不可能だ。守備は常に重要となる。
では、守備は正確に数値化されているのか。
その判断は人によるが、少なくとも今回、守備指標が示す評価は実際に見た印象とも一致するはずだ。スタットキャストでは、ウェザーホルトの守備得点価値はプラス20で、球界最高の二塁手と評価されている。DRS(守備防御点)でも、全守備位置を通じて上位12人に入る。算出方法が異なる2つの指標が、守備面ではウェザーホルトをピート・クロウ=アームストロングにほぼ匹敵する選手と評価している。
スチュワートは平均からやや下の評価で、スタットキャストではマイナス3。ベンジは球界最高水準の強肩もあり、平均以上のプラス5となっている。これらはまだ守備位置による補正を加えていない、単純な合計値だ。
こうした評価に大きな異論はないだろう。セントルイスにメイシン・ウィンがいなければ、ウェザーホルトは遊撃を守っていた可能性が高い。実際、ウィンの負傷離脱中は違和感なく遊撃を務めている。ベンジの外野守備への評価も高まり続けている。一方、スチュワートの守備は十分に役割を果たせるものの、それ以上ではない。反論するのは難しい。
スチュワートは一塁手であることで評価を下げられるのか?
ある程度は下がる。ただし、想像するほど大きくはない。
WARには当然、守備位置による補正がある。OPS.900を記録しながら遊撃を守れる選手は、左翼かDHに限られる同程度の打者より価値が高い。(ヨーダン・アルバレスが主にDHではなく、遊撃の守備までこなせたら、どれほどの選手になるか想像してほしい)一塁は三塁より相対的な価値が低く、三塁は二塁、遊撃、中堅、捕手などより低い。スチュワートが一塁を守っているのは出場時間の約3分の2だけであり、その点も計算に反映されている。
ただ、「守備の悪い三塁手でも、守備の良い一塁手より価値が高くなる」という見方があるが、実際には正しくない。例えばマット・オルソンは、一塁と三塁の相対的な価値を補正した後でも、WAR上の守備価値でニック・ゴンザレスを上回る。オルソンが一塁で非常に優れている上、ゴンザレスの三塁守備が低く評価されているからだ。
別の言い方をすれば、二遊間で最高水準の守備を見せる選手、両翼で平均以上の守備を見せる選手、一塁や三塁で及第点の守備を見せる選手を同じ評価にすべきではなく、実際、同様には評価されていない。
では、WARの数値はどのように構成されているのか?
打撃の影響が最も大きく、次に守備、そして走塁が続く。ただし、すべてが評価に含まれる。以下は各選手の内訳だ。野球における共通の価値基準である得点に換算し、守備位置による補正も含んでいる。
- ベンジ:打撃+10/走塁+3/守備+1
- スチュワート:打撃+12/走塁-2/守備-5
- ウェザーホルト:打撃+5/走塁+3/守備+18
前述した通り、最高の打者はスチュワート、最高の守備選手はウェザーホルト、最も総合力が高いのはベンジだ。スチュワートは3人の中で相対的な価値が最も低い守備位置を務め、守備の貢献度も最も低い。すでに分かっている特徴を数値で表したにすぎない。
投手はどうなのか?
そう、この争いには4人目がいる。
ここまでは野手3人の話に終始し、マクリーンについて十分に触れてこなかった。マクリーンは昨季終盤の8先発で防御率2.06を記録し、正式な新人シーズンが始まる前にワールドベースボールクラシック決勝の米国代表先発としてマウンドに上がった。5月の不振がなければ、新人王争いの構図はまったく違っていたかもしれない。月別防御率を見れば、その落ち込みは一目瞭然だ。
マクリーンの月別防御率
- 4月 2.55
- 5月 6.10
- 6月 2.79
- 7月 1.78
- 8月 2.74
5月の不振を「評価に含めなくていい」と簡単に片づけることはできない。ベンジの出遅れや、ウェザーホルトの最近の不振と同じく、すべてが評価対象となる。ただし、マクリーンがここ3カ月にわたって素晴らしい投球を続けていることも事実。5月31日以降の防御率2.37はMLB6位で、上位5人はジェイコブ・ミジオロウスキー、トロイ・メルトン、ディラン・シース、ロビー・レイ、山本由伸だ。
ワイルドカード制度が始まった約30年前までさかのぼっても、キャリア最初の34先発でマクリーンと同等の投球回数を記録し、防御率を3.00未満に抑えた投手はごく少数しかいない。その大半が、その後も素晴らしいキャリアを築いている。
では、現時点での結論は?
多くの「もしも」が残っている。
もしも、ウェザーホルトの打撃不振が続けば、受賞争いから完全に脱落する可能性がある。
もしも、マクリーンがエース級の投球を続け、防御率3.00未満で170イニングを投げれば、極めて有力な候補となる。
もしも、ベンジが好調な打撃を維持すれば、20本塁打、20盗塁に加えて強肩を誇る外野手は十分に受賞に値する。
もしも、スチュワートが125打点へ到達すれば、それだけでほかの要素が気にならなくなるかもしれない。
少なくとも、非常に興味深い新人王争いになるはずだ。「もう決着した」あるいは「2人だけの争いだ」という見方だけは正しくない。断じてそうではない。争いは完全に開かれている。
