米国代表が最強左腕スクーバルを勧誘した経緯

December 19th, 2025

タリック・スクーバルの2025年シーズンにおいて、強烈な印象として刻まれているのは、5月25日にコメリカパークの熱狂的な観衆の前で行われたガーディアンズ戦だ。ガブリエル・アリアスを三振に取って締めくくった102.6マイル(約165.1キロ)のラスト1球。スクーバルはこの試合、2安打、13三振で完封勝利した。

「私は感情を前面に出すプレーヤーだ。スタジアムのエネルギーを力にしている」とスクーバルは語った。

「全員が総立ちになると、何か特別なことが起こるような気がする」

今、スクーバルが母国代表としてマウンドに上がり、同じようなパフォーマンスを披露する姿を想像してみてほしい。

スクーバルも、米国代表のマイケル・ヒルGMやマーク・デローサ監督からの後押しを受け、そのような姿を思い描いたはずだ。2年連続のア・リーグ、サイ・ヤング賞受賞者をワールドベースボールクラシックに参加させるための勧誘であり、見事に功を奏した。スクーバル自身によるSNSの投稿とメジャーリーグ機構からの発表により、大会への参加を表明。ナ・リーグ、サイ・ヤング賞右腕のポール・スキーンズ(パイレーツ)とともに、世界を相手に戦う米国代表の強力な2枚看板が誕生した。

この発表は、水面下で行われてきた数カ月に及ぶ勧誘活動の集大成となった。

「(ラスベガスでの)MLBアワードの授賞式で彼と会う機会があった」とヒルGMは先週のウィンターミーティングで語った。

「胸に赤、白、青(星条旗の三色)を掲げるのは名誉なことだと率直に伝えた。選手として、そのような機会が何度あるだろうか。私たちが対話しているすべての選手に、そのことを印象づけようとしている。あのユニフォームを着ることは名誉だ。これは特別な大会であり、米国の最高の選手たちが参加を望んでくれることを願っている。私たちが仕事を完遂するために、ベストな選手たちの力が必要だ」

スクーバルにとって、一度も経験する機会がなかったことだった。

スーパースターには、トッププロスペクト(有望株)として育ち、アマチュア時代から母国を代表してプレーする者もいる。スクーバルのチームメートであるライリー・グリーン(タイガース)は昨夏、2018年のU18(18歳以下)パンアメリカン選手権で米国代表として金メダルを獲得した思い出を懐かしく語った。そのメンバーには、後にスターとなるボビー・ウィットJr.(ロイヤルズ)、コービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)、CJ・エイブラムス(ナショナルズ)、ピート・クロウ=アームストロング(カブス)らの選手が名を連ねていた。

スクーバルにはそのような経験は全くなかった。シアトル大学からディビジョン1(1部リーグ)のオファーを1つ受けただけだった。当時、ナショナルチームに入るなど想像すらできなかった。だからこそ、昨春にデローサ監督から最初の連絡があったことは、特別な瞬間となった。

「タリックには4月に電話した」とデローサ監督は先週語った。

「私はシーズンを非常に尊重してきた。もし私が彼のようなレベルの選手だったら、ワールドシリーズ優勝を目指している最中に米国代表の監督から連絡攻めを受けたくない。たまに携帯電話のショートメッセージで『君のことを気にかけているよ』といった具合に連絡を入れるだけにとどめていた」

その勧誘が、デローサ監督なりの敬意だった。

「タリック(スクーバル)を知り、投球を見て感じる最も大きなことは、スクーバルが心底打ち込んでいることだ」と米国の指揮官は語った。

「球威、2度のサイ・ヤング賞、102マイル(約164.2キロ)の剛速球、そのすべてにおいて、スクーバルはエンターテイナーであることを楽しんでいる。多くのメジャーリーガーは緊張で余裕がないが、スクーバルはその瞬間を存分に味わっている。すでにその域を超えている。スクーバルの競い合う姿を見るのは本当に楽しい。遊び心があり、私はそれを心から気に入っている」

そうしたエンターテインメントの側面は、実戦よりも調整が優先される開幕にはめったに見られないオープン戦での先発時、スクーバルは1、2種類の特定の球種や配球の確認、あるいは単に肩を作ることを目的として登板する。

それが明らかに変わる。ワールドベースボールクラシックでの先発でスクーバルが長いイニングを投げることはないが、その熱量はフロリダ州レイクランド(タイガースのキャンプ地)で経験してきたものとは全く異なるだろう。スクーバルは肉体的にも精神的にも、それに備える必要がある。来オフ最大のFA選手になる可能性があり、契約最終年に向けてこのような準備を進めることは、さらなる興味をかき立てる。

幸いなことに、大会は投手にとって非常に柔軟な日程となっている。先発投手は必ずしも大会期間中ずっとチームに帯同する必要はなく、春季キャンプの計画に合わせて登板を組み立てることができる。米国代表は3月6日に初戦を迎える予定。タイガースのオープン戦が始まってから2週間後だ。

「あのチームを率いる際、最も難しいのは投手起用だ。投手陣をどう扱うかを知らなければならない。そこに大きな誇りを持つことになる」と2017年に米国代表を優勝に導いたジム・リーランド元監督は語った。

メキシコ、英国、イタリア、ブラジルなどを含む米国代表のプールBはマイアミではなくヒューストンで行われるため、スクーバルにとって移動距離は長くなる。しかし、スクーバルにとって大きなプラス要因は、クリス・フェッター投手コーチとともに詳細な投手起用の予定を組み立てるA.J.ヒンチ監督の存在だ。ヒンチ監督もまた、母国のためにプレーすることの意味を分かっている。元メジャーリーグの捕手であるヒンチ監督は、スタンフォード大学からアスレチックスに指名された1996年の夏、米国代表として五輪に出場した。

国際大会への参加がスクーバルにとって、生涯忘れられない思い出となる可能性がある。