「日本語で“おはよう”って何て言うの?」
「オハヨウ」と今井。
「オハイオ? それ、僕の出身地だよ!」
そんな何気ないやり取りから、異なる文化と環境で育った二人の間に、小さな絆が芽生えた。球団もこうした交流を後押し。ジョー・エスパーダ監督も自ら日本語習得に挑戦する姿勢を示している。
「時間はかかるだろうけど、ベストを尽くしている。日本語だけじゃなく、中国語もみんなで少しずつ学ぼうとしている」
アストロズは過去5年、開幕ロースターにおける外国出身選手の数がメジャー最多を記録。昨季は16人にのぼった。クラブハウスはまさに“人種のるつぼ”。音楽や食事、ファッション、そして言語まで、世界各地の文化が交錯している。
今季のスプリングトレーニングには、米国、ドミニカ共和国、プエルトリコ、メキシコ、ベネズエラ、日本、キューバ、台湾出身の選手が参加し、4つの言語が飛び交う。コミュニケーションが不可欠な野球という競技において、球団はこの春、言葉の壁を越える取り組みを始めた。
選手が毎日クラブハウスに入ると、ホワイトボードには「Word of the Day(今日の単語)」が英語、スペイン語、日本語、中国語で書かれている。ジャイアンツからトレードで加入した台湾出身の右腕・鄧愷威(テン・カイウェイ)は中国語(北京語)を話す。単語は毎日、球団のトラベルディレクター、フアン・ウイトロン氏が選んでいる。
「キャンプの終わりには、いくつかの文をつなげて話せるようになるのが目標だよ。選手たちも、僕たちが挑戦していることを本当に喜んでくれている」とエスパーダ監督。
キャンプ初日の単語は「baseball(野球)」。スペイン語で「beisbol」、日本語で「やきゅう」、中国語で「bangqiu(バンチウ)」と並んだ。「hello(こんにちは)」「food(食べ物)」「friend(友達)」なども、発音付きで紹介されている。
「日本語の“おはよう”は覚えたよ。オハイオ州出身だからね」とブルーバーは笑う。「それと“こんにちは”も。少しずつだけどね。単語やフレーズをつなげようとしているところ。発音はまだ課題だけど、そのうち何とかなるさ」
スペンサー・アリゲッティも、通訳の高木凌氏を通じて今井との交流を深めている一人だ。できる限り日本語を覚えようと努めている。
「日本の文化や、スプリングトレーニングへの取り組み方、あとは彼のスライダーについても聞いているよ。彼は本当に努力家で、自分に何が合うのかをよく理解している。そういう姿勢を見るのはすごく刺激になる。通訳を通じていろいろ聞いて、今井から直接答えをもらえるのは楽しいね」
27歳の今井は、NPBで3度のオールスター選出を誇り、2024、25年と連続出場。近年は日本を代表するエースへと成長した。アストロズでプレーする4人目の日本人選手で、2024年シーズン終盤に在籍した菊池雄星以来となる。今井自身も、少しずつ英語を覚え始めている。
「毎日少しずつ、小さな単語を積み重ねていきたい。菊池雄星さんのように、周りと会話できるようになるのが目標です。今はその途中段階ですね」と今井は高木通訳を通じて語った。
今季、試合中にエスパーダ監督やコーチ、トレーナーがマウンドへ向かう際には、今井や鄧愷威には通訳が帯同し、正確なコミュニケーションを支援する。
「彼は本当に野球IQが高い。それは投球や日々の姿勢を見れば分かる。彼から学べることはたくさんあるし、もっと話して、あいさつを交わせるようになれば、お互いに成長できると思う」とブルーバー。
言葉は違っても、野球という共通言語がある。アストロズのクラブハウスでは今、単語一つから、新たなチームの形が築かれている。
