言葉の壁を越えろ 今井達也所属のアストロズ 球団全員が4カ国語に挑戦中

February 17th, 2026

アストロズのAJ・ブルーバーは、キャンプ序盤に新加入の今井達也に真っ先に声をかけた一人だった。1月に3年契約を結び、日本から加入したエース右腕の今井は、常に通訳を伴って行動している。それでも、オハイオ州出身のブルーバーは、通訳を介さずに今井本人ともっと話したいと思った。

「日本語で“おはよう”って何て言うの?」
「オハヨウ」と今井。
「オハイオ? それ、僕の出身地だよ!」

そんな何気ないやり取りから、異なる文化と環境で育った二人の間に、小さな絆が芽生えた。球団もこうした交流を後押し。ジョー・エスパーダ監督も自ら日本語習得に挑戦する姿勢を示している。

「時間はかかるだろうけど、ベストを尽くしている。日本語だけじゃなく、中国語もみんなで少しずつ学ぼうとしている」

アストロズは過去5年、開幕ロースターにおける外国出身選手の数がメジャー最多を記録。昨季は16人にのぼった。クラブハウスはまさに“人種のるつぼ”。音楽や食事、ファッション、そして言語まで、世界各地の文化が交錯している。

今季のスプリングトレーニングには、米国、ドミニカ共和国、プエルトリコ、メキシコ、ベネズエラ、日本、キューバ、台湾出身の選手が参加し、4つの言語が飛び交う。コミュニケーションが不可欠な野球という競技において、球団はこの春、言葉の壁を越える取り組みを始めた。

選手が毎日クラブハウスに入ると、ホワイトボードには「Word of the Day(今日の単語)」が英語、スペイン語、日本語、中国語で書かれている。ジャイアンツからトレードで加入した台湾出身の右腕・鄧愷威(テン・カイウェイ)は中国語(北京語)を話す。単語は毎日、球団のトラベルディレクター、フアン・ウイトロン氏が選んでいる。

「キャンプの終わりには、いくつかの文をつなげて話せるようになるのが目標だよ。選手たちも、僕たちが挑戦していることを本当に喜んでくれている」とエスパーダ監督。

キャンプ初日の単語は「baseball(野球)」。スペイン語で「beisbol」、日本語で「やきゅう」、中国語で「bangqiu(バンチウ)」と並んだ。「hello(こんにちは)」「food(食べ物)」「friend(友達)」なども、発音付きで紹介されている。

「日本語の“おはよう”は覚えたよ。オハイオ州出身だからね」とブルーバーは笑う。「それと“こんにちは”も。少しずつだけどね。単語やフレーズをつなげようとしているところ。発音はまだ課題だけど、そのうち何とかなるさ」

スペンサー・アリゲッティも、通訳の高木凌氏を通じて今井との交流を深めている一人だ。できる限り日本語を覚えようと努めている。

「日本の文化や、スプリングトレーニングへの取り組み方、あとは彼のスライダーについても聞いているよ。彼は本当に努力家で、自分に何が合うのかをよく理解している。そういう姿勢を見るのはすごく刺激になる。通訳を通じていろいろ聞いて、今井から直接答えをもらえるのは楽しいね」

27歳の今井は、NPBで3度のオールスター選出を誇り、2024、25年と連続出場。近年は日本を代表するエースへと成長した。アストロズでプレーする4人目の日本人選手で、2024年シーズン終盤に在籍した菊池雄星以来となる。今井自身も、少しずつ英語を覚え始めている。

「毎日少しずつ、小さな単語を積み重ねていきたい。菊池雄星さんのように、周りと会話できるようになるのが目標です。今はその途中段階ですね」と今井は高木通訳を通じて語った。

今季、試合中にエスパーダ監督やコーチ、トレーナーがマウンドへ向かう際には、今井や鄧愷威には通訳が帯同し、正確なコミュニケーションを支援する。

「彼は本当に野球IQが高い。それは投球や日々の姿勢を見れば分かる。彼から学べることはたくさんあるし、もっと話して、あいさつを交わせるようになれば、お互いに成長できると思う」とブルーバー。

言葉は違っても、野球という共通言語がある。アストロズのクラブハウスでは今、単語一つから、新たなチームの形が築かれている。