優勝への執念とレギュラーシーズンへの準備。この微妙なバランスが、ワールドベースボールクラシック(WBC)決勝に向けたアメリカ代表の投手起用に影響を及ぼした。目標とする王座奪還まで残り27のアウトを、マーク・デローサ監督(51)率いるアメリカ代表がどのように積み上げていくのか、その采配が注目される。
15日夜(日本時間16日)にドミニカ共和国を倒した後、デローサ監督は、17日(同18日)の決勝でノーラン・マクレーン投手(24)が先発することを明言した。メッツの右腕はメジャーでの先発がわずか8試合だが、昨季終盤に防御率2.06をマークするなど、その実力は折り紙付きだ。
デローサ監督は「彼はこのために生まれてきた。大舞台でも臆することなく戦えることを証明してくれた」と語った。
救援陣の起用については、難しい判断を迫られている。抑えのメイソン・ミラー(27)は15日の試合で20球を投げてセーブを挙げており、決勝での登板は不透明だ。同様にデビッド・ベッドナー(31)やタイラー・ロジャース(35)も緊迫した場面で起用された。
ブルペンを強化するため、アメリカ代表は登録メンバーを変更した。準々決勝後にメンバーから外れたクレイトン・カーショー投手(37)に代わり、ブルージェイズの救援ジェフ・ホフマン投手(33)を加えた。ホフマンは昨季、トロントで28セーブを記録している。
メジャーでの先発登板はわずか8試合ながら、球界屈指の圧倒的な球威を誇る新人のマクレーンは、野球人生最大の一戦でマウンドに上がることに意欲を燃やしている。
マクレーンにとって、今大会は雪辱を果たす好機でもある。1次ラウンドのイタリア戦では、2回にカイル・ティール捕手(23)とサム・アントナッチ内野手(22)に本塁打を許し、チームも6−8でまさかの逆転負けを喫した。これが今大会、アメリカ代表にとって唯一の敗戦だ。
「確かに(イタリア戦では)本塁打を数本浴びてしまった。だが全体的には、とても調子が良いと感じていた。アスリートとして、一生をかけて何かに取り組んできたなら、こうした場面に身を置きたいと思うものだ。これほど大きな舞台で先発できるのは夢のようだし、自分がやりたいことだ」
WBCの規定では決勝での投球数は95球まで認められているが、期待の若手に対するメッツ側の意向もあり、実際には65〜70球程度に制限される見込みだ。こうした一発勝負では、先発投手が早めに交代することも珍しくない。
そのため、ツインズのジョー・ライアン投手(29)を加え、第2先発として継投させる計画もあった。しかし、キャンプ中に腰の炎症を経験したライアンの調整を考慮し、ツインズ側は救援ではなく先発としての起用を希望した。
アメリカ代表側が準決勝前にその保証をできなかったため、計画を変更。ライアンのために用意されていた枠には、クレイトン・カーショウ投手(37)に代わってブルージェイズのジェフ・ホフマン投手(33)が入った。
これによりアメリカ代表は救援陣の層が厚くなり、16日の休養日は日程面で大きな利点となった。実際、今大会の日程はアメリカにとって有利に働いており、3月6、7日を最後に連戦は一度もなかった。
それでも、レギュラーシーズンに向けた現実的な懸念は無視できない。デローサ監督は、七回をベッドナー、八回をギャレット・ウィットロック投手(29)、九回をメイソン・ミラー投手(27)に任せる終盤の勝利の方程式を確立した。この3人は準々決勝のカナダ戦での勝利を確実にし、準決勝でも強力なドミニカ共和国打線を封じた。
17日夜の試合に全員が登板可能かについて、アメリカ代表は前日の段階で明言を避けた。特にミラーの登板については不透明な状況だ。
17日を前にベッドナーは直近11日間で4試合に登板して4イニングを投げ、計79球。ウィットロックは直近9日間で3試合に登板して3イニング、43球。ミラーは直近5日間で2試合に登板して2イニング、40球を投じている。
この3人のうち誰かが登板すれば、5日間で3度目のマウンドとなる。15日夜のドミニカ共和国戦で22球を投じたミラーは、自身の登板について「登板するために全力を尽くす」と語った。
WBCの球数ルール上、アメリカ代表が決勝で救援投手を起用することを制限するものはない。しかし、ライアンのように、所属する球団側の意向が優先される。
理想的な展開は、アメリカはマクレーンが3イニング、ライアンが3イニングを投げ、ベッドナー、ウィットロック、ミラーの継投で締めくくる継投だろう。
現状では、他の救援陣を頼ることになりそうだ。
タイラー・ロジャース(35)はカナダ戦を前にロースターに加わり、極端なアンダースローで救援陣に新たな選択肢をもたらした。15日のドミニカ共和国戦という大舞台で初登板を果たすと、五回にフアン・ソト(27)を併殺打に仕留めてピンチを脱した。
新たにロースター入りしたウィル・ベスト(30)、ティム・ヒル(36)、ホフマンはいずれも今大会でまだ登板していないが、決勝で重要な役割を果たす可能性がある。3人のうち、ホフマンは興味深い存在だ。直近の重要な試合での登板はワールドシリーズ第7戦。九回にミゲル・ロハス(37)に同点本塁打を許した。この決勝という舞台は、雪辱を果たす機会になるかもしれない。
大会の性質上、デローサ監督やアンディ・ペティット投手コーチ(53)は、継投の判断だけでなく、各選手が所属する球団からの要望へ対応を迫られる。首脳陣を悩ませ、万全とはいえない布陣を強いる要因にもなっている。
それでも、休養日があったことや選手層の厚さは、決勝の対戦相手に対してアメリカ代表が優位に立つ要因となる。
