「ただ投げる」から「投球へ」剛腕ミジオロウスキー飛躍の理由

May 31st, 2026

ブルワーズの24歳右腕、ジェイコブ・ミジオロウスキーが圧巻のシーズンを送っている。

今季は11試合に登板し、5勝2敗、防御率1.83。5月は驚異の防御率0.29を記録。1試合平均9個以上の三振を奪い、三振数はリーグ最速で100に到達した。このペースを維持すれば、2019年のゲリット・コール、ジャスティン・バーランダー以来となるシーズン300三振も視野に入る。

さらに最速103.6マイル(約166.7キロ)を計測したほか、今季ここまでに投じた988球のうち311球が100マイル超。全投球の31.2%を100マイル以上が占めるという、驚異的な数字を叩き出している。

昨季も100マイル超の速球で注目を集めたが、長いイニングを投げ切れない課題があった。しかし、今季は登板した全試合で5イニング以上を消化。5月には2度の7イニング登板など、先発投手としての完成度も大きく向上した。

なぜここまで安定して結果を残せるようになったのか。その背景には、肉体面、精神面、そして投球術の進化があった。

1)100マイル超連発を支える下半身強化

ミジオロウスキー自身は飛躍の要因として、まずオフシーズンの取り組みを挙げる。

「一番大きいのはオフの取り組み。フォームを毎回再現できるように意識して、ウォーターバッグを使いながら前側が突っ込みすぎないように練習した。それがすごく効果があったと思う。フォームの再現性が上がって、ズレを感じても『少し前に突っ込み過ぎているな』と気づいて修正できるようになった」

昨季、課題の一つが、体が前に流れ、制球が乱れることだった。改善に向けて、ローテーションの合間には繰り返しフォームを確認。だが、試合中の修正は難しかった。

そこで、昨オフには下半身を中心に約9キロの増量を行い、さらにスクワットやデッドリフト、ランジなどを中心に下半身の筋力強化に取り組んだ。

ミジオロウスキーの長いエクステンション(※)の投球フォームは、上半身よりもむしろ下半身に支えられているといっても過言ではない。オフの徹底した下半身強化により、フォームの安定感と再現性が向上した。

(※どれだけ投手プレートから、打者に近くボールをリリースしたかを示す数値)

パット・マーフィー監督も、その成長の背景に下半身の強化を挙げる。

「彼はどんどん成熟している。オフに下半身をかなり強化した。脚が本当に強くなったことが大きい」

2)「常に10」から「必要な時だけ10」へ

今季の安定感を語る上で欠かせないのが、精神面の成長だ。

マーフィー監督は「感情のコントロールもできるようになってきた。そこが安定感につながっている」と話す。

さらにブルワーズのクリス・フック投手コーチは、昨季との違いをこう説明する。

「去年は毎試合“ボリューム10”だった。感情も出力も常に最大だったけれど、今は“7”くらいで投げられている。本当に必要な時だけ10に上げればいいということを理解し始めている」

確かに昨季のミジオロウスキーは、常にアクセル全開だった。感情をむき出しにし、全力で打者をねじ伏せようとする。その球威は魅力だった一方で、感情の波がメカニック(投球フォーム)の乱れを招き、不安定な投球につながることも少なくなかった。また、常に全力で打者と向き合うあまり、その場面で何が求められているのかを冷静に判断できないこともあった。

ミジオロウスキー自身も、その変化を認めている。

「ずっと100%ではやれないということを学んだ。毎球全力で投げていたら、1日が終わった時には完全に消耗してしまう。だから100%を出し切らなくても、その日の目的を達成できればいいと思えるようになった」

昨季は全球が勝負球だった。だが今は、必要な場面でギアを上げることを覚えた。その精神的な成熟が、今季の安定感を支えている。

3) 「ただ投げる」から「投球する」へ

投手コーチは、投球そのものに対する考え方の変化を最も評価している。

「ミズ(ミジオロウスキーの愛称)は今、“throwing(投げる)”から“pitching(投球する)”へ大きく進化している」と話す。

「去年は常に全力で三振を取りにいっていた。でも今は『この打席で何が必要か』を考えて投げている。初球から三振を狙うわけではない。質の高い球でカウントを作り、その結果として三振が取れる。そこが大きく変わった」

昨年は登板間の調整でも、自分なりの正解を探している段階で、クリス・フック投手コーチは「疑問ばかりで答えがない状態だった」と振り返る。

しかし、昨季の登板を分析する中で、自分に合った調整法や必要なことを理解できるようになった。今では試合中もコーチ陣と具体的な修正点を共有し、自ら課題を言語化できるようになっている。

フォームの再現性が高まり、精神的にも余裕が生まれた。その結果、長いシーズンを見据えた力配分も身につけつつあり、安定した投球へとつながっている。

4)課題は変化球の使い分け

とはいえ、まだ完成形には程遠い。100マイル超の速球に加わる“もう一つの武器”はいまも模索の途中だ。

ミジオロウスキー自身は、「変化球で打者のタイミングを崩せるようになった。相手も速球だけじゃなく変化球があると意識してくれていて、それがかなり助けになっている」と話すが、フック投手コーチは、さらにもう一歩上を求めている。

「まだ変化球の違いを学んでいる段階。カットボール、スライダー、カーブ、チェンジアップのそれぞれの役割を理解し始めている。質のいいチェンジアップを持っているが、まだ多投はしていない。今後はそれぞれの球種がどの場面で最も効果的かを見極めることが課題」と話す。

さらに「これまで99~100マイル(約159~161キロ)を出した際、本人は『楽に投げられている』と言っていた。チェンジアップも同様だった。でも、『投げられる』と『投げるべき』は違う。次のステップは、それぞれの球種をどこで使うべきかをさらに理解することだと思う」と説明する。

経験を積みながら、力任せで打者を圧倒する投手から、試合を支配する投手へ。

剛腕投手は今、その階段を着実に上がっている。