ウォーカー・ビューラーがフィリーズと契約することを選んだとき、頭の中には一つの目標があった。ワールドシリーズで優勝することだ。「それが私がここにいる理由だ」とビューラーは、フィリーズの選手としてのデビュー戦を翌日に控えた11日(日本時間12日)に語った。
8月31日にマイナー契約を結んだ右腕は、12日(同13日)に行われるロイヤルズとの3連戦の初戦に先発する。
31歳のビューラーにとって、2025年シーズンは波乱万丈のシーズンとなっている。昨季ドジャースでワールドシリーズの胴上げ投手となったビューラーは、オフシーズンにレッドソックスと1年総額2105万ドル(約31億円)の契約を結んだ。しかし、23試合(先発22試合)の登板で防御率5.45と苦戦し、8月29日に解雇された。
「ボストンではうまくいかなかったのは言うまでもないけど、ここ(フィリーズ)に来られて本当にうれしいよ。オフシーズン中に、僕がここに来る可能性について話し合ったんだけど、みんなが望んでいたような結果にはならなかった。でも、ここはずっと尊敬してきた場所」と新天地フィラデルフィア・フィリーズへの思いを口にした。
ドジャースでワールドシリーズを2度制覇したビューラーは、フィリーズが2008年以来の世界一になる力があると信じている。
「実力ある選手がとてつもなく豊富だ。チーム文化も本当に素晴らしい。多くの選手が同じ目標に向かって頑張っていると思う。このチームには、自分のキャリアや役割に満足し、『チームの勝利に貢献するために必要なことなら何でもやる』という姿勢の選手が多いと思う。必ずしもどのチームもそうとは限らない」
「でも結局、最終的に勝利を決める最大の要因の一つは実力ある選手の多さだと思うし、このチームには確かに十分に選手がそろっていると思う」
フィリーズは、ビューラーが2021年に16勝4敗、防御率2.47をマークした時の実力を突然再現するとは期待していない。しかし、昨季のポストシーズン終盤で見せたような復調に期待している。昨季のレギュラーシーズンで防御率5.38を記録したビューラーは、ワールドシリーズ3戦で5回を無失点に抑えた。そして第5戦ではブルペンから登板し、九回を無失点に抑えてセーブを挙げ、胴上げ投手になった。
「彼は以前にもそれを成し遂げた。だから、今回もやってくれることを期待している」とロブ・トムソン監督は期待を寄せる。ビューラーは通算19回のプレーオフ出場で防御率3.04を記録している。特にワールドシリーズでは圧倒的な活躍。4試合(先発3試合)で防御率0.47だった。
「まずは私たちがそこに辿り着き、彼も良い投球をしなければならない。しかし、彼はスポットライトを浴びるのが好きで、気にも留めない。以前にもスポットライトを浴びた経験があるという事実は、プラスに働く」
トムソンが指摘したように、ビューラーはまず今後数週間でポストシーズンのロースター(ベンチ入り選手登録)枠を勝ち取る必要がある。ただ、フィリーズは少なくともその可能性に自信を持っている。そうでなければ、ビューラーとの契約にこれほど力を入れることはなかっただろう。
ビューラーはレッドソックスから解雇されてから1日以内に、トムソン監督、デーブ・ドンブロウスキー編成本部長、投手コーチのケイレブ・コサムらを含むフィリーズ関係者と電話で話した。
「あれは大きかったと思う。多くの場合、このプロセスはエージェントと組織内の1人の担当者と電話で行われる。だから、そもそも電話で話ができただけでも、そして関係者全員が時間を割いて対応してくれただけでも、非常に大きな意味があった」とビューラーは契約当時を振り返る。
ビューラーが今後3週間でどのような活躍をするかに関わらず、フィリーズは終盤に6人ローテーションを組める大きなメリットがある。6人ローテーションで生まれる休養日は、クリストファー・サンチェス、レンジャー・スアレス、アーロン・ノラ、ヘスス・ルザード、タイワン・ウォーカーら今季、過酷な登板をこなしてきた、あるいは負傷に悩まされてきた選手を助けるだろう。しかし、フィリーズが6人ローテーションを組むだけで十分だとしたら、3Aのリーハイ・バレーから誰かを昇格させるだけでも良かったはずだ。それでも、ビューラーがワールドシリーズ優勝に貢献してくれると信じていたからこそ、フィリーズは白羽の矢を立てた。
ビューラーは、フィリーズが優勝できるとすでに信じていたため、その呼びかけに応じた。
「結局、このチームには、僕が好投しようがしまいが、やっていけるだけの才能があると思う。自分にできる限りの貢献をするよ」
