今季のカージナルスには不思議な勢いがある。オフには完全再建も噂されたが、ここまで29勝18敗。ジョーダン・ウォーカーやJJ・ウェザーホルトのブレイクも大きいが、最近は特別な後押しを受けている。
本拠地ブッシュスタジアムを席巻しているのが、「Tarps Off(シャツ脱ぎ)」ムーブメントだ。右翼席の一角で数人のファンが上半身裸になり、シャツを応援タオルのように振り回し始めたのがきっかけだった。その輪はどんどん広がり、やがて若者からお年寄りまで、さまざまな男性ファンが加わり、セクションのほとんどが「半裸軍団」で埋まるようになった。
この現象が最初に現れたのは15日(日本時間16日)。この日、カージナルスはスタンドの勢いを借りて、ロイヤルズにサヨナラ勝利した。発案者はスティーブン・F・オースティン大学の野球クラブのメンバーだったという。翌日には、この熱気に感銘を受けたオリバー・マーモル監督が“上半身裸”席を買い取り、彼らをクラブハウスへ招待した。
そして19日(同20日)、“半裸の魔法”は再び起きた。延長十回、イバン・エレーラがサヨナラ3ランを放ち、ベースを回りながら半裸軍団を向いてうなずいた。さらにエレーラ自身もユニフォームを脱ぎ、振り回しながら喜びを爆発させた。
今や、この応援は全米へ広がっている。レイズ、マリナーズ、タイガースでもファンが参加し、さらには土砂降りの中でフィリーズファンまでがシャツを振り回していた。
では、このトレンドのきっかけはどこなのだろうか?
スポーツ観戦で上半身裸になる文化自体は昔から存在する。ただ、今のブームは2025年の大学フットボール界で再燃した。The Athleticによれば、オクラホマ州立大学のアメリカンフットボールのファンが、妹との10ドルの賭けでスタジアムの空席エリアに1人だけ上半身裸で立ち、シャツを振り回したのが始まりだった。
その年のチームは1勝11敗という悲惨なシーズンを送り、長年指揮を執ったマイク・ガンディ監督も途中解任された。そんな苦しいシーズンを少しでも楽しむための行動だったが、このスタイルは瞬く間に広がり、同じオクラホマ州立大学のファンたちが次々と参加した。
この流れは他の大学フットボール界にも広がり、苦戦するチームだけの文化ではなくなり、最終的に全米王者となったインディアナ大学でも、同じような現象が見られた。ついには、極寒の1月に行われたペンシルベニア州立大学での屋外でのホッケーの試合にまで波及した。
だからこそ、元気な大学生たちが“上半身裸応援”をメジャーへ持ち込んだことは、ある意味自然だった。そして、この文化はもう定着しつつある。カージナルスは20日(同21日)、ブッシュスタジアム右翼上段席を「高エネルギー応援専用エリア」とすると発表。チケット座席に関係なく誰でも参加可能になる。
ちなみに、シャツの着用は任意である。
