FA市場のトップ3外野手に最適なチームは?

ベリンジャー、グリシャム、タッカーのホーム&アウェイの記録チェック

November 17th, 2025

コディ・ベリンジャートレント・グリシャムカイル・タッカーの3人には、左打ちで今オフ市場の外野手トップ3という以外にも、もうひとつ共通点がある。

それが、2025年シーズンで、全員がホームとビジターでの成績に非常に大きな差があった点だ。しかし、どちらを得意としていたかは異なっており、1人はホームでの成績が良く、残り2人はビジターを得意としていた。

この違いを理解するには、ヤンキースタジアムとリグレーフィールドというそれぞれのホームスタジアムの影響を理解する必要がある。こういった要素は、彼らの新たな契約の内容に直接影響を与える。

以下に、この3人に何が起きていたのか、そして2026年以降どこが最適なチームとなり得るのかを整理する。

コディ・ベリンジャー

「ヤンキースタジアムで打撃成績が向上する」方の左打者。ベリンジャーはキャリア全体で上下動が激しく、評価が難しい。

2017〜20年:ドジャースでMVPも獲得した上昇期のスーパースター
2021〜22年:負傷に苦しみ成績低迷、ついにはドジャースにノンテンダー処分を受ける
2023年:カブスで大復活
2024年:失速し、カブスはほぼ無償で放出
2025年:ヤンキースで再び大きく復活

まさに激動のキャリアを送ってきた。

基本的に、左打者はヤンキースタジアムの浅いライトフェンスの恩恵を受ける。実際にはそうならなかった左打者(例:ファン・ソトやアンソニー・リゾ)もいるが、ベリンジャーはまさにその恩恵を受けた。

  • ホーム成績:18本塁打、打率.302、出塁率.365、長打率.544、OPS .909
  • ビジター成績:11本塁打、打率.241、出塁率.301、長打率.414、OPS .715

ホームではソト級、ビジターではミゲル・バルガスに近い打撃成績だった。

2024年は逆で、左打者にとって厳しい球場だったリグレーフィールドの影響もあり、ビジターのほうが成績が良かった。この成績差は、ベリンジャーの打者としての特徴を考えれば、ある程度説明がつく。好打者であることは間違いないが、典型的なスラッガーではない。バットスピードは下位20%、ハードヒット率は下位26%と、いずれもMLB平均を下回る。この特徴ゆえに、アーロン・ジャッジやソトのようにどの球場でも打てるタイプではなく、球場の影響を受けやすい打者だと言える。

打球方向の傾向も予想通りで、ここ2年以上、逆方向への本塁打は1本もない。さらに興味深いのは、パワーだけでなくコンタクト率にも差が出ている点である。ホームの三振率は11%と良好だが、ビジターでは16%と大幅に悪化している。この差が偶然なのか、アプローチの変化によるものなのかは断言できない。

いずれにせよ、彼にとって「左打者に有利な球場」にいることは非常に重要である。そのため、左打者に厳しい球場を本拠地とするマリナーズやジャイアンツのような球団がベリンジャーを説得するのは難しい可能性がある。

最適・現実的な候補:ヤンキース、フィリーズ、オリオールズ、レッズ、アストロズ、ブルージェイズ

トレント・グリシャム

一方、こちらは「ヤンキースタジアムで打撃成績が下がる」方の左打者だ。

トレント・グリシャムはヤンキースから1年契約のクオリファイング・オファーを提示されているため、実際にどれほど長く市場に出回るかは不透明だ。2024年は控え選手としての起用が中心で、パドレス時代の終盤も際立った存在ではなかったことを考えれば、キャリア最高のシーズンの直後に大幅な昇給を受け入れるのは自然な選択と言える。
実際、そうなる可能性は十分ある。ただ、センターとしての適性が徐々に限界に近づいていることから、ドラフト指名権を放出してまで複数年契約を提示する球団は想像しにくい。一方で、昨季のグリシャムはヤンキースタジアムよりもビジターでの打撃成績が優れていた点は、ひとつ気になる材料だ。

  • ホーム成績:13本塁打、打率.195、出塁率.326、長打率.376、OPS .702
  • ビジター成績:21本塁打、打率.269、出塁率.367、長打率.537、OPS .904

ベリンジャーが「ホームではソト、ビジターではバルガス」だったとすれば、グリシャムはその逆の成績だ。

左打者有利とされるヤンキーススタジアムでこのような成績になるのは奇妙で、旧本拠地時代も含めると、ヤンキースの左打者でここまでホームを苦手とした例は、ロビンソン・カノが新人だった2005年以来、約20年ぶりの水準である。

しかしベリンジャーと違い、これはコンタクト率の差によるものではない。グリシャムの三振率はホームとビジターでほぼ同じだからだ。通常、コンタクト率が変わらなければ、打球の質や角度に違いが出ていると考えたくなる。しかし、ハードヒット率、バレル率、打球角度、引っ張りのフライ/ライナー率など、どの指標を見ても大きな差はほとんどない。

さらに、この傾向は2024年には見られなかった。ただし、2024年はそもそも打撃成績が低迷していたため、比較は難しい。

この現象を理解するには、打球方向の観点を導入する必要がある。まず、時速95マイル以上のハードヒットで、空中に飛んだ打球のみを取り出す。弱いゴロは指標として意味を持たず、そもそもグリシャムはゴロのホーム/ビジター差がほとんどなかったため、対象外とする。

つまり、「ハードヒットかつ空中に上がった打球」の中で、最も価値の高い引っ張った打球に注目するわけだ。

  • ホームでの長打率:1.964
  • ビジターでの長打率:2.652

数値は明らかにビジターのほうが良く、その差も小さくはない。しかしそもそもホームでの長打率1.964に文句をつける人がいるだろうか。仮にビジターでの成績をどこでも再現できていれば、彼はファン・ソト級の打者ということになる。しかし、いかに素晴らしいシーズンだったとはいえ、グリシャムはソトではない。

むしろ注目すべきは、「センターから逆方向」へ飛んだハードヒットのフライ/ライナーである。

  • ホームでの長打率:.343
  • ビジターでの長打率:1.024

これはかなり厳しい。

引っ張り以外の方向に30本以上のハードヒットを放った100人超の打者の中で、長打率.343という数字は最下位である。グリシャムはヤンキー・スタジアムで、センターかレフト方向へ計35本のハードヒットをフライ/ライナーで打ち上げたが、ヒットはわずか8本。そのうち6本はシングルヒットだった。唯一の二塁打も、守備の良い外野手であればアウトにされていてもおかしくない打球だった。

本塁打となった一打は確かに強烈な当たりだったが、打球はわずかに引っ張り気味で、分類上は正面への打球となったが、逆方向弾とは言いにくいものだった。引っ張った打球のケースとは異なり、逆方向の打球についてはビジターだからといって打球初速や飛距離が伸びていたわけではない。ヤンキースタジアムでは、レフトが深いため、本塁打にならなかったというだけだろう。

これが単なる偶然で、繰り返されない可能性も十分ある。もっとも、シーズン全体の活躍についても同じことを言う人がいるかもしれないが。

最適・現実的な候補:アストロズ、フィリーズ、ドジャース、オリオールズ、レッズ

カイル・ タッカー

より打者有利の球場でプレーしていたら、あるいは完全な健康状態でFA市場に出ていたら、と想像したくなる選手だ。タッカーは今オフのFAクラスの中で「総額最大の契約を手にする選手」と広く見られており、同時に「その契約を結ぶのはカブスではない」とも予想されている。

その理由は、カブスにすでに十分な野手層があることや、空振りを奪える先発投手というより切迫した補強ポイントがあることかもしれない。だが、次の数字も関係している可能性がある。

  • ホーム成績:7本塁打、打率.236、出塁率.353、長打率.395、OPS .747
  • ビジター成績:15本塁打、打率.292、出塁率.399、長打率.524、OPS .923)

アストロズ時代には、ホームOPSが.866、ビジターOPSが.874とほぼ同じで、ここまで顕著な差は見られなかった。シーズン序盤こそ絶好調だったものの、夏場の大半を右手の負傷を抱えたままプレーし、その影響で成績が落ち込んだ。加えて、左ふくらはぎの負傷により9月の大半を欠場した。総じて奇妙な一年であったと言える。

ここでもう一度ソトとの比較を持ち出すと、タッカーのビジターOPS .923は、今季ソトがシーズン全体で記録したOPS .921とほぼ同水準。もしこれをシーズン通して維持していれば、契約に関する議論はさらに別の次元に達していたかもしれない。

タッカーは、バットスピードやハードヒット率が平均的かやや下程度で、ひとつの武器が突出しているというより全体として非常に高水準という点で、「より若く、より優れたベリンジャー」とも言える。したがって、どこでも関係なくスタンドに放り込む大砲タイプよりも、球場の影響を受けやすいタイプでもある。2025年のリグレーフィールドがいかに打者に厳しい環境だったかを言葉で表現するのは難しいが、タッカーは実際、5月から6月にかけて、本拠地で約2カ月間本塁打ゼロという期間があった。

一方で、この傾向を詳しく見ると、シーズン序盤にはホームでも問題なく打てていたことが分かる。負傷とスランプの時期は重なっており、このホーム/ビジター差を、負傷由来の成績悪化とみなしたくなるのも事実である。なお、ふくらはぎの故障のため、9月にはホームゲームに一度も出場していない。

Tucker's road OPS was 60 points better in the second half, but his home OPS dropped by 370 points

ここ数年のリグレーフィールドが打者に優しい球場ではなかったのは事実である。しかしタッカーに関して言えば、その影響は限定的であり、将来的にもそれほど問題にはならないとみるのが妥当だろう。

健康なときのタッカーは、間違いなく球界屈指の選手である。

最適・現実的な候補:ドジャース、ヤンキース、フィリーズ、メッツ、ブルージェイズ、オリオールズ