夢の舞台は、時に優しく、時に冷たく背を向ける。
ホワイトソックスの23歳ルーキー、ブレイダン・モンゴメリーは6月9日にメジャー昇格。デビュー戦となったブレーブス戦で、メジャー初本塁打となるサヨナラ弾を放ち、鮮烈なスタートを切った。
インパクトある一発を放ちながらも、本人にとってこの2週間は決して順風満帆ではなかった。
「想像していた通りの部分もあったけれど、これまでプレーしてきたどのレベルよりも難しい」
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初アーチの後はまだ2本目が出ていない。11試合で10三振を喫するなど、メジャーの洗礼も受けている。
「でも、自分はチャレンジが好きなので楽しめているし、学びも多い。もちろん精神的にはキツイこともある。失敗を受け入れるのはちょっと大変」
メジャー初遠征となった16日からのヤンキースタジアムでの3連戦初戦では無安打。試合後にはすぐにバットを手に取り、室内ケージへ。毎試合前にも長い時間を打撃ケージで過ごし、メジャー投手への適応を図っている。
モンゴメリーはマイナーとメジャーの違いをこう説明する。
「相手投手が自分たちのプランを高いレベルでしっかり実行してくるところが一番違う。特定のコースに投げ切ることや、カウントを有利に進めるための投球など、メジャーの投手は狙いを持ったボールをほとんどの場面で遂行してくる。ミスが少ないので、自分もゲームプランをしっかり守る必要がある。結局は、打者と投手のどちらがより正確にプランを遂行できるかの勝負だと思う」
結果が出なければ気持ちは沈む。しかし、162試合を戦うメジャーリーグでは感情に振り回されている余裕はない。
「できるだけ結果と感情を切り離すようにしている。もちろん結果に気持ちが左右される部分はあるけれど、うまくいかなかったことはしっかり受け止めて、次の日にどう改善するかを考える。そのほうが客観的に取り組めると思っている。成功で舞い上がりすぎず、失敗で落ち込みすぎないことを意識している」
メジャー適応に苦しむルーキーを、チームメートたちが支える。ダグアウトではベテランに積極的に声をかけ、相手投手の特徴や打撃のアプローチについて助言を受ける。
「みんなにサポートしてもらっている。彼らのおかげでパフォーマンスのことばかりに意識を向けず、この最高の舞台にいられること自体を楽しむことができている。同じようにここに来るまでに多くの失敗を経験してきた選手ばかりなので、自分の気持ちを理解してくれるし、結果を受け入れながら次に向かえる環境だと思う」
大学では二刀流も経験
野球との出会いは7歳の頃だった。継父の手ほどきを受け、すぐに野球に夢中になった。子どもの頃の夢はメジャーリーガーになることだった。
スタンフォード大学時代は外野手と投手を兼ねる二刀流選手としてプレー。しかし、テキサスA&M大学へ編入後は打者に専念し、2024年ドラフトでレッドソックスから1巡目(全体12位)指名を受けた。
二刀流について尋ねると、モンゴメリーは笑みを浮かべながらこう答えた。
「どちらも大好きだった。でも、このレベルでは自分には厳しいと思う」
その理由は明快だ。
「投手ミーティングと打者ミーティングの両方に参加しなきゃいけないし、練習時間の配分もかなり複雑になる。大谷翔平のような選手がいることで『二刀流が可能』であることは証明されたけれど、それを続けるにはとても大きな覚悟が必要だ。それでも、その挑戦自体はとてもやりがいがあった」
華やかなメジャーの舞台に立ちながらも、モンゴメリーには子どもの頃から変わらない習慣がある。試合後、ダグアウトに落ちたゴミを拾い、片付けを済ませてから球場を後にすることだ。
「小さい頃から親やコーチに『来た時よりもきれいにして帰れ』と教えられてきた。自分が使った場所は自分で片付ける。正しいと思うことをやるだけ」
そう語る23歳は、その理由をこう続けた。
「素晴らしい施設でプレーさせてもらっていることへの敬意でもあるし、自分のルーツを忘れないためでもある。子どもの頃にプレーしていた球場と比べたら、メジャーは本当に夢のような場所。だからこそ感謝の気持ちを忘れたくないから」
メジャー昇格からまだ2週間弱。初本塁打という華やかな瞬間もあれば、三振を重ねる苦しい夜もある。それでもモンゴメリーは、成功にも失敗にも過度に振り回されることなく、一歩ずつ前へ進んでいる。
「今の目標は、きのうの自分より少しでも良くなること。このレベルでは誰もが高い身体能力を持っているので、差を生むのはメンタルの部分だと思っている。失敗からどう立ち直るか、次の成功につなげられるかが重要。今はその挑戦を楽しんでいるところ」
最高峰の舞台で生き残るための学びの日々は、まだ始まったばかりだ。