ホワイトソックス躍進の秘密 「魔法のつえ」はもう終わり?監督の"ドッキリ作戦"

July 29th, 2026

※この記事はスコット・マーキン記者のホワイトソックス担当ニュースレターから抜粋。

ホワイトソックスの選手にとって、ウィル・ベナブル監督(42)の部屋に呼ばれる場面が、必ずしも良い知らせにつながるとは限らない。

しかも、クリス・ゲッツGM(42)とジン・ウォンGM補佐も到着を待っていたとなれば、なおさらだ。そんな状況に最近直面したマイク・バシル投手(26)は、不安を感じて当然だった。

「あの呼ばれ方が面白かった。動画を見れば、どんな呼ばれ方だったか分かる」と笑顔で振り返った。

「最初は、なぜか自分が何か問題を起こしたのかと思った。その後は、もう魔法のつえが残っていないのかと思った。でも実際は、さらに2万本の魔法のつえが球場に届いたんだよ」

このホワイトソックスの重要なミーティングで何があったのか。

ゲッツGMはまず、ダッグアウトで話題となっているバシルの「魔法のつえ」に問題があり、その件でコミッショナー事務局から連絡が入っていると切り出した。バシルを信じ込ませるための、ちょっとした小芝居だった。

もしゲッツGMが、8月3日(日本時間4日)のトレード期限までの交渉でも、バシルをだました時と同じくらいの説得力を発揮できれば、ホワイトソックスにとって有利な結果につながるかもしれない。

話を戻そう。

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バシルが困惑する中、隣の部屋から三塁ベースコーチのジャスティン・ジャーシェリー・コーチ(35)が現れ、レートフィールドで予定されている「魔法のつえ」の来場者プレゼントを伝えた。

ツインズ戦が行われる9月4日(同5日)は来場した先着2万人にバシルの「魔法のつえ」が配布される。

「初めての昇格、おめでとう」と、ジャーシェリーコーチはそう声を掛けた。

「メジャーリーグのハリー・ポッターになる」

バシルは喜びながら、そう話した。

バシルがア・リーグ中地区首位を走るホワイトソックスにもたらした貢献については、これまで数多く語られてきた。1イニングもプレーせずに最優秀選手(MVP)投票を受ける初の選手になるかもしれない。

バシルは春季キャンプ中に右肘のトミー・ジョン手術を受けた。それでもリハビリ期間中、この特別なチームの一員であり続けたいと考えていた。球団もベナブル監督をはじめ、コーチ陣やチームメートまで、バシルがチームに帯同することを望んでいた。

そこで救援投手のジョーダン・リージャー投手(27)がアマゾンで20ドル(約3000円)の魔法のつえを購入し、レートフィールドへ配送した。バシルは4月27日(同28日)にその魔法のつえを受け取った。この日はホワイトソックスが本拠地でエンゼルスに3連勝を飾った日でもあり、この日から伝説が始まった。

リージャーは、自身をバシルの「小道具係」と呼ぶ。

その関係は2025年から続いている。バシルはホワイトソックス1年目の昨季、47試合に登板し、101回を投げて防御率2.50の好成績を残した。

「昨季はバットマンのマスクを買った。でも、それほど話題にはならなかった。見た人はいたけど、この魔法のつえがチームの象徴になるなんて思いもしなかった。自分も1本手に入れないとね」とリージャーは笑顔で語った。

「まさか2万本の魔法のつえが配られる日が来るとは思わなかった。本当に今年こんなことが起きるなんて想像もできなかった。でも今、それが現実になっている」とバシルは笑顔で話す。

バシルの“魔法”は、つえだけではない。チームメートが本塁打を放つたびに、ホワイトソックスのダッグアウトで魔法使いの帽子もかぶる。

その一連の光景から、バシルは以前、MLB.comに語っていた理想の場面を思い描いている。

2021年以来となるホワイトソックスのポストシーズン初戦。本拠地レートフィールドは満員となり、勝負どころではスタンドを埋めたファン全員がバシルの魔法のつえを振っている――。

魔法のつえは用意された。

後は、ホワイトソックス次第だ。

「その話は親しい友人にもした。もし球場全体が魔法使いの帽子をかぶっていたら、自分のことをよく知っているから、パニックになると思うと言われた。でも何より望んでいるのは、ポストシーズンでファンが大騒ぎしてくれることだ」

バシルはそう話した。

トミー・ジョン手術が決まった後、同じ手術を経験したチームメートからは、気を紛らわせる方法を見つける方がいいと助言を受けた。なかにはハイキングを始めた選手もいれば、テレビゲームに打ち込んだ選手もいた。

バシルは地元中継局CHSNで特別番組の解説者を務めたほか、ホワイトソックスのオールスター選出発表では3人全員の司会役も務めた。

それでも、野球界の“魔法使い”としての活躍に勝るものはない。

では、この魔法のつえには本当に力があるのか。バシルとリージャーが、それぞれの考えを語った。

「魔法のつえ自体に力があるかと言われたら、たぶん違う。でも『マイク、点を取らせてくれ』と言ってくる選手はいる。魔法使いという役目を任されている以上、自分がダッグアウトに立っていると得点が入ると信じている選手は確かにいると思う」

バシルはそう語った。

「ただのプラスチックだよ」

リージャーは苦笑いを浮かべながらそう言うと、続けた。

「でも、そのつえが生み出した一体感には魔法の力がある」