瀬戸内ブルーシャインズ3選手、来季開幕の米国女子プロ野球リーグへ

日本の10選手がドラフトで米挑戦の切符を獲得

November 29th, 2025

来年8月、米国女子プロ野球リーグ(WPBL)が開幕する。WPBLは1940~50年代の全米女子プロ野球リーグ(AAGPBL)以来、米国で初の女子プロリーグで、ボストン、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコの4球団で展開される。それに先立ち、11月20日(日本時間21日)にドラフト会議が行われ、日本からは10選手が指名された。

ロサンゼルス

  • 1位:里綾美(35歳)西武ライオンズ・レディース/トロント・メープルリーフス
  • 7位:佐伯絵美(24歳)阪神タイガースWomen
  • 11位:楢崎涼 (26歳)瀬戸内ブルーシャインズ
  • 20位:小櫃 莉央(24歳)埼玉西武ライオンズ・レディース
  • 24位:島野愛友利(21歳)読売ジャイアンツ)

ニューヨーク

  • 7位:米谷 奈月(24歳)埼玉西武ライオンズ・レディース

ボストン

  • 9位:山本 涼香(26歳)瀬戸内ブルーシャインズ

サンフランシスコ

  • 6位:山本彩夏(21歳)瀬戸内ブルーシャインズ 
  • 15位:別府日向乃 (29歳)GENESIS FUKUOKA(ジェネシス・フクオカ)
  • 19位:三浦帆菜 (22歳)札幌国際大学

世界各国から米国をはじめカナダ、オーストラリア、日本、韓国、英国、キュラソー、メキシコ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどから120人が指名される国際色豊かな顔ぶれになった。

WPBLは8月末にワシントンD.C.でトライアウトを開催し、最終評価で上位に入った選手がドラフトプールに登録された。日本選手たちもトライアウトで見出され、指名につながった。

岡山を拠点に活動する「瀬戸内ブルーシャインズ」からは、楢崎涼、山本彩夏、山本涼香の3選手が晴れてドラフト指名を受けた。

楢崎涼選手/瀬戸内ブルーシャインズ

指名の受け止め方は、それぞれに個性が表れていた。

山本涼香は「期待はしていました。トライアウトで自分のパフォーマンスを出し切れたなと感じていたので、これで選ばれなかったら仕方ないなと思っていた」と話す。一方、楢崎涼は「トライアウトでは自分の実力を出しきれず、最終日のナショナルズパークでの試合に出場できなかったので、指名されるか不安でした」と吐露し、名前が発表された瞬間には「とてもうれしく、『やったー!』と言いながら、家の中で飛び跳ねました」と喜びを表現した。3人の中で最年少の山本彩夏も「とてもうれしかったし、指名されて一安心しました。名のある選手たちとプレーできるのが楽しみ」と目を輝かせる。

海外のドラフトは3人とも当然初めてだが、山本涼香は「(ドラフトされる可能性のある選手のリストが)深夜0時や2時などに投稿されていたので、毎日いつ自分のポジションが投稿されるかとギリギリまで寝れない日や夜中起きて携帯を確認することもありました」と笑うが、日本選手の多くが同じ気持ちだったのではないだろうか。

期待と共に、新しい環境への不安もある。

楢崎は「海外の選手と一緒にプレーできることや、以前のチームメートと再会できるのが楽しみ。でも英語や食事には少し不安があります」と明かす。

山本涼香は「現地でチームになじめるか心配」と話し、山本彩夏も「英語でのコミュニケーションが課題」と吐露する。お腹が弱い楢崎は、日本食と腹巻き持参で米国に乗り込む予定だ。

最初はコミュニケーションがとれず苦戦するかもしれないが、野球という共通言語を通じてすぐに仲良くなるだろう。ちなみに、楢崎は遠征に「数種類のカードゲーム」を必須アイテムとして持参し、それを通してチームメートと積極的に交流する予定だ。

山本涼香選手/瀬戸内ブルーシャインズ

活躍のカギは、自分の強みを理解し、それをプレーで発揮できること。3選手とも自身の「強み」を熟知している。楢崎は「長打力と足の速さ」、山本涼香は「堅実かつ粘り強い守備とバッティング」、山本彩夏は「積極的なバッティングと守備の幅」とそれぞれ自信を持つ。

さらに3人は女子野球の普及や発展にも貢献する役割も担う。プレーだけでなく、地域やコミュニティでの活動も重要な役割であり、女子野球の楽しさを広め、ファン層や選手人口の拡大につなげることも目標に掲げている。

瀬戸内ブルーシャインズの秋山創一朗GMは「選手自身の決断を心から応援しています。送り出せることを誇りに思うとともに、技術だけでなく人間的にも成長し、周囲から応援される選手になってほしい」と期待を寄せる。

女子選手たちの熱い野球への情熱が、少しずつ状況を変えてきた。日本でも高校に女子野球部が次々と設立され、競技人口は着実に増加している。さらに高校卒業後も、大学やクラブチームなどで活躍の場が広がり、女子野球の未来は確実に明るくなっている。

山本涼香は「18年間野球を続けてきて、自分がアメリカのプロ野球選手になるなど想像もしていませんでした」と振り返り、「ブルーシャインズや会社の方、家族など周りの方々がとても喜んでくれて応援してくれているので、良い報告、活躍ができるように気持ちを引き締めて頑張りたいと思います」とまとめた。

ブルーシャインズの3人、そしてWPBLに挑戦する日本人選手たちは、日本の女子野球に新たな風を吹き込み、未来を切り拓く大きな一歩となるだろう。