5カ月前、山本由伸はムーキー・ベッツがワールドシリーズ(WS)制覇を決めるダブルプレーを完成させた瞬間、両手を突き上げた。仲間に囲まれ、歓喜の輪は夜遅くまで続いた。
昨季ポストシーズン、山本はドジャースの“伝説”となった。チームの連覇を締めくくり、ワールドシリーズMVPを獲得。ワールドシリーズでは3試合に登板し、第7戦では中0日でマウンドに上がり、最後のアウトを奪った。
その記憶が刻まれたマウンドに再び立つ。
ドジャースファンにとっては、「負けるという選択肢はない」という自身の言葉を体現した存在で、一方でブルージェイズファンにとっては、優勝を阻んだ“壁”でもある。ロジャースセンターではブーイングが起こる可能性もある。
それについて聞かれると、山本は「特に気にはしていません」と笑顔で語った。
山本はワールドシリーズ第2戦、第6戦、そして第7戦とトロントで3試合に登板し、いずれも勝利した。第2戦では完投で1失点に抑える快投。さらに、その前のリーグ優勝決定シリーズでも完投しており、圧巻の投球を続けていた。
第6戦でも6回1失点と試合をつくると、第7戦ではプロ入り後初となる“連投”でマウンドへ。大一番の最終回を締め、世界一の瞬間を自らの手で引き寄せた。
ドジャースはシーズンを通して、山本がエースとして、そして負の流れを止める“ストッパー”として機能してきた姿を見てきたが、特に大舞台でその真価を発揮した。第7戦ではリリーフとして登板し、2回2/3を無失点。この試合で登板した6投手で最長イニングを担った。
「正直、マウンドに上がるまではあまり意識していませんでしたが、ブルペンで準備をしているうちに、実感が湧いてきました」
第6戦から第7戦にかけての連投を山本はそう振り返る。
結果的に山本は、わずか8日間で3試合に登板し、計17回2/3を投げて2失点、防御率1.02という圧倒的な数字を残した。さらに第3戦では、延長19回に備えてブルペンで準備もしていたが、その前にフレディ・フリーマンのサヨナラ打で決着。出番こそなかったが、フル回転でチームを支え続けた。
山本は、1度のワールドシリーズで3勝を挙げた史上14人目の投手となった。これは2001年にダイヤモンドバックスで達成した殿堂入り右腕ランディ・ジョンソン以来の快挙で、その3勝すべてが敵地での勝利というのは前例がない。
今季も連覇を狙うドジャースで山本は変わらぬ存在感を放っている。シーズン最初の2試合ではいずれも6回2失点と安定した投球。メジャー3年目を迎えた27歳の右腕は、さらなる進化を予感させている。チームは1998〜2000年のヤンキース以来となる“3連覇”を目指しているが、その中心にいるのは山本だ。
自身のキャリアでも屈指の大舞台となった球場への再訪に、少なからず感慨はある。それでも、意識が過去へ向くことはない。
昨年11月は世界一をつかむための登板だったが、今回の目的はただ一つ。チームに白星をもたらすことだ。
「どんなに重要な試合でも、すべて同じように臨むようにしています。逆に、普段の試合でも“これが一番大事な試合だ”と思って投げています」
常に平常心。
それこそが、山本由伸の強さだ。
