山本由伸、3試合連続完投なるか WS第6戦は最大の正念場

October 30th, 2025

105球で完投してから2日後、山本由伸(27)はブルペンを総動員して使い切っていたチームのために自ら志願して待機した。試合は開始から6時間を超え、延長18回に入っており、背番号18がブルペンで投げ始めた光景は、ワールドシリーズ(WS)第3戦そのものに匹敵する大きな注目を集めた。ただ、フレディ・フリーマンがサヨナラ本塁打を放ち、19回を前に試合が決着したため、山本の登板は不要になった。

この試合でウィル・クラインは10月のヒーローとなり、WSでの勝負強さを改めて証明した。一方で、山本は最終的に1球も投げなかったにもかかわらず、ポストシーズンの伝説をさらに深めた。

フリーマンの説明によれば、山本は感触を確かめるために10〜15マイル(約16〜24キロ)で軽く投げていた。ブルペンのコーチが「いけるか」と聞くと「いける」と答えた。さらに投球の強度を上げ、97マイル(約156キロ)を計測し、コースにきっちり決まった。

「これが山本由伸のすべてだと思う」とフリーマンは言った。

「彼は試合に勝つためなら何でもする」

ドジャースが、山本がシーズンの命運を懸けたマウンドに立つのにふさわしい投手だと確信するのに、改めて説得は必要なかった。

山本はロジャースセンターで行われるWS第6戦の先発を任される。ここは第2戦でポストシーズン2試合連続の完投を果たした球場だ。その時と同様にシリーズをタイに戻すための登板となるが、ブルージェイズがあと1勝で世界一に手が届く状況だけに、今回はその重みがまったく違う。

「多少、自信になったと思う部分もありますし、切り替えて(第6戦は)全く違うものだと考えている部分もあります。とにかくチームの勝利に貢献するだけなので、集中してプレーするだけだなと思います」

由伸は、第5戦の試合後、会見でそう語った。

12年契約の2年目にして、メジャーで1球も投げる前に山本に投じた3億2500万ドル(約494億円、投手として史上最高の金額)に野球界がなぜドジャースが踏み切ったのかを理解しつつある。

山本はプレッシャーに屈するよりも、大一番でこそ真価を発揮するタイプだ。

「それはずっと見てきたことだ」とマーク・プライアー投手コーチは言った。

「今あなたが見ているのは、リーグを1巡し、ほぼ全てのチームと対戦してきた投手だということだ。そうした積み重ねが、彼にますます大きな自信を与えているのだと思う」

エース右腕は直近、ポストシーズンで24年ぶりとなる2試合連続完投を達成した。3試合連続完投すれば、極めて限られた投手の仲間入りを果たす。過去55年間、単一ポストシーズンでこれを成し遂げたのは、カート・シリング(2001年)、オーレル・ハーシュハイザー(1988年)、ルイス・ティアント(1975年)の3人だけだ。

現代の野球で完投は1度でも珍しく、2度ならなおさらだ。山本のブルワーズ相手のナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)での快投は、ポストシーズンでは2017年のジャスティン・バーランダー以来の完投であり、ブルージェイズ相手の1試合は、WSでは2015年のジョニー・クエト以来の完投だった。

3試合連続完投となれば、まさに前人未到の領域だ。

野球で1人の選手が文字通り試合を勝たせることは滅多にない。山本が3度目の完投を目指したとしても、得点力に苦しむ打線とリリーフ投手の奮起が不可欠だ。

「山本が良い投球をするのは想定している」。ロバーツ監督はそう語った。

「だが、依然として質の高い打席に立ち、守備で確実にアウトにしなければならない。クリーンな野球ができれば、勝機は十分にある」

第3戦の後、フリーマンとクラインの活躍にふさわしい称賛が贈られると、何人ものドジャースの選手が山本を祝福するために駆け寄った。大谷、佐々木、ロバーツ監督の姿もあった。のちに、チームメートたちは山本が登板を志願した姿勢を口々にたたえた。

「信じられない」

その夜、クレイトン・カーショウは言った。

「彼は2日前に完投したばかりだ。大陸横断の移動をして、午前4時に到着して、実質休養は1日だけ。それでも…ワールドシリーズに勝つには、そういうものが必要になることがある」

もう1敗も許されないドジャースにとって、山本に匹敵する底力を全員で示すことが、生き延びる鍵になる。