【フィリーズ3-1レッズ】フィラデルフィア/シチズンズ・バンク・パーク、7月6日(日本時間7日)
わずか1安打の圧巻ピッチングを披露したザック・ウィーラー(35)。12三振、無四球というほぼ完璧な内容で2021年以来となる完投を達成した。
「握手して軽くハグしたあと、マウンドに着いたときに『ここで何をするんだっけ?』って聞いてきたんだ(笑)。一緒にその瞬間を過ごせてよかった、楽しい一日だったよ」と長年バッテリーを組んできたJ.T.リアルミュートは振り返った。
五回にオースティン・ヘイズに許したソロ弾が、この日唯一許した得点にして走者。フィリーズの投手としては昨年8月17日のクリストファー・サンチェス以来の完投となる。
「しばらく完投してなかったのはわかっていたから、久しぶりにできてうれしかったよ」とウィーラーは語った。
2010年5月29日のロイ・ハラデイの完全試合以来、フィリーズの投手として9回を完投し、走者を1人以下に抑えた初の投手に。さらに、12三振、無四球、1安打以下という記録を過去125シーズンで達成したフィリーズの投手はウィーラーだけで、35歳37日以上での達成は、MLB全体でもランディ・ジョンソン、R.A.ディッキー以来3人目となる。
では、これはウィーラーのキャリア最高の登板だったのだろうか?
「他にも満足できる登板はいくつかあったけど、今日はかなり上位に入るね」とウィーラーは語ったが、ロブ・トムソン監督は「Yes」と断言。通算140回バッテリーを組んできたリアルミュートも同意見のようだ。
「間違いなくそうだよ。最初から最後まで、これまで組んだ中でも制球とキレが最高だった」
ウィーラーの出来がどれだけ良くても、八回をちょうど100球で締めた時点で、九回は別の投手が出てきてもおかしくはなかった。実際、ベンチにウィーラーが戻る際には観客から大きな拍手が送られた。
しかし、ブルペンに動きはなく、トムソン監督は続投を決断。ブライアン・ストットが勝ち越しの2ランを放ったことで舞台は完璧に整った。スタンドのファンは熱狂し、「レッツゴー・ウィーラー!」という大合唱が九回を通して鳴り響いた。
「ピッチコムの音量を久しぶりに上げたよ。すごかった」とストットは語った。
サインを出すのは捕手、リアルミュートの役割だが、ミスを防ぐためにピッチコムで押したボタンの音は彼の耳でも再生されるようになっている。だが、この日はそれを打ち消すほどの声援が球場を埋め尽くしていた。
「ピッチコムの音が聞こえなかったから、正しいボタンを押していると信じるしかなかったし、彼がサインに逆らわないことを祈ってたよ」とリアルミュートは振り返った。
だが、すべてはうまくいった。1人目のウィル・ベンソンを三振に仕留めると、わずか8球で九回を三者凡退に抑えた。
「プレーオフの雰囲気みたいだったよ。あの声援が九回を投げきらせてくれた。フィリーでプレーするのは最高だよ」とウィーラーは語った。
ウィーラーは最初の四回を44球(うちストライク33球)で完璧なスタートを切っていた。
「四回が終わった時点で、『これはノーヒットノーランか完全試合もあるぞ』と思った。本当にそう感じた。それくらい支配的な投球だった」とトムソン監督は振り返った。
トムソン監督は過去6シーズンにわたり、ウィーラーのすべての先発を間近で見てきた。今年5月の試合後の記者会見では、「過去20試合のコメントをそのまま使っていいよ」と冗談を飛ばすほど、ウィーラーは安定した投球を見せ続けている。
しかし、今回の快投にはトムソン監督でさえ驚きを隠せなかった。
「完全試合を除けば、これ以上支配的な内容はない。彼には本当に驚かされるよ」
