ブルワーズ、球団初の世界一に 常勝軍団を築いた強さの秘密

October 29th, 2026

ブルワーズが球団史上初のワールドシリーズ制覇を成し遂げた。今季メジャー最多勝を記録し、ポストシーズンでも圧倒的な強さを発揮。ナ・リーグ優勝決定シリーズでは2連覇中のドジャースを破り、頂点に立った。レギュラーシーズン最多勝から世界一になったチームは、今世紀わずか7球団しかない。

ブルワーズの成功から、現代野球で勝つためのヒントを探ることはできる。ただし、その戦い方を単純に「スモールベースボール」と片付けるのは正しくない。先発投手が長いイニングを投げず、救援陣が試合を引き継ぐ投手運用は、むしろ現代的だ。では、何がこのチームを特別な存在にしたのか。

強さは一朝一夕には築けない

今回の優勝は、約10年にわたるチームづくりの成果だ。

クレイグ・カウンセル監督がフルシーズンで指揮を執った2016年、ブルワーズは73勝89敗。それ以降、一度も負け越すことなく、過去10年間のレギュラーシーズン勝利数はメジャー4位を記録した。ポストシーズン進出も9年間で8度。毎年のように優勝争いに加わってきた。

2017~18年の躍進を支えた選手で、今も残るのはブランドン・ウッドラフとクリスチャン・イエリッチだけ。選手が入れ替わり、編成本部長や監督もチームを去る中で、ブルワーズは勝ち続けてきた。フロントや球団スタッフが築いてきた組織の力が、その土台にある。

他球団が逆方向への打撃やコンタクト重視のスタイルを取り入れても、同じ成功を収められるとは限らない。優れた守備、強力な投手陣、質の高いコーチングやサポート体制までそろってこそ、ブルワーズの野球は機能する。

長打力を補う総合力

ブルワーズは今季、メジャーで2番目に少ない本塁打数にとどまり、ワールドシリーズでも5試合でわずか3本塁打だった。

本塁打が得点を確実にもたらす手段であることに変わりはない。実際、今ポストシーズンで相手より多くの本塁打を放ったチームの勝率は81.5%に達した。長打力に頼れないブルワーズには、ほかの部分で補う力が求められた。

その点で、守備はメジャー屈指。走塁ではメジャー最速のチームとなり、積極的に盗塁も仕掛けた。投手陣も強力で、若い選手たちはこうした戦い方に適応。パット・マーフィー監督をはじめとする首脳陣も、そのスタイルを実現させた。

本塁打が重要でなくなったわけではない。長打力が不足するなら、守備、走塁、投手力など、ほかの要素を高い水準でそろえなければならない。同じ本塁打数だったエンゼルスが62勝100敗に終わったことも、その難しさを示している。

データを生かし、新しい戦い方を探る

ブルワーズやレイズは古い野球を貫き、データ重視の考え方を退けているという見方もある。しかし、今季のワールドシリーズは、むしろ新しい戦術を積極的に取り入れる2球団の対決だった。

ブルワーズは、打たないことにも価値があると見極め、2019年以降のフルシーズンで最も低いスイング率を記録。一方、速球の使用を減らす傾向が広がる中で、複数の速球を使い分けることの価値に着目した。今季はメジャーで最も高い速球使用率を記録し、球速も上位に入った。

チェンジアップも特徴的だ。一般的には回転数の少ない球種だが、ブルワーズのチェンジアップはメジャー最高の回転数を誇った。

打撃では逆方向への意識も徹底した。投手の球速が上がる中、変化球にタイミングを合わせ、速球には多少差し込まれてもいいという考え方を採用。打席の後方に立ち、ボールを引きつけて逆方向へ打つことで、長打を犠牲にしても安打の確率を高めた。単にバットに当てるのではなく、狙いを持ってコンタクトする戦術だ。

他球団が学ぶべきなのは、ブルワーズのやり方をそのまま真似ることではない。新たな優位性を見つけることだ。

状況に応じて勝ち方を変える

ブルワーズの野手陣は、相手や状況に応じて戦い方を変えられる柔軟性を備えていた。レギュラーシーズンは四球を選んで出塁することが強みだった。四球率と出塁率でメジャートップに立ち、走者を本塁へ返す力もあった。

しかし、ドジャースとのナ・リーグ優勝決定シリーズでは様相が一変。三振、四球、本塁打の割合がいずれも高く、打球がインプレーにならない「三つの結果」の合計は史上最高に達した。全試合でドジャースを上回る三振を喫しながら、本塁打では7対1と圧倒した。

ワールドシリーズでは本塁打が出ず、守備や走塁にもミスが目立った。12試合で13失策を記録したが、打球を強く捉えることでチャンスをつくった。ワールドシリーズ史上4番目に高いハードヒット率を記録し、第3戦では2死から8得点を挙げる歴史的な猛攻も見せた。投手陣の好投もあり、それで十分だった。

選手層とスターの力

ワールドシリーズでは選手層の厚さも明暗を分けた。レイズはヤンディ・ディアスとジュニオール・カミネロに頼る打線で、2人が抑えられると得点力を失った。一方、ブルワーズは打線の下位からも上位を上回る生産力を引き出した。レギュラーシーズンの下位4人の成績はメジャー3位で、後半戦はトップだった。

今季、一定の出場機会を得ながらWARがマイナスだった選手は4人だけ。そのうち2人はシーズン中にロースターを外れ、ルイス・ララはポストシーズンで主に控えだった。サル・フリーリックはレギュラーシーズンの不振にもかかわらず起用され、その判断はワールドシリーズで実を結んだ。

もちろん、選手層だけで優勝できたわけではない。ジェイコブ・ミシオロウスキーは球団の育成を経てサイ・ヤング賞候補に成長。ジャクソン・チューリオは3年連続で20本塁打、20盗塁を達成し、22歳までにこの記録を3年続けた史上初の選手となった。ワールドシリーズでも歴史に残る活躍を見せた。

救援のアーロン・アシュビーも、今ポストシーズンで18イニング連続無失点を記録。ポストシーズンの救援投手として史上最長記録を更新した。

さらに、ブライス・トゥラングを守備型の選手からMVP候補へと成長させた育成力、主力を放出したトレードで新たな戦力を獲得した編成力も見逃せない。ファーム組織もメジャー最高水準と評価されている。

優れた選手をそろえ、その力を発揮できる環境を整え、時代に合った戦い方を見極める。そして、重要な場面で少しの幸運をつかむ。言葉にすれば簡単だが、実現するのは容易ではない。

ブルワーズの強さは、長年にわたる組織づくりと、選手の育成、戦術の工夫が結実したものだ。一朝一夕でまねできるものではない。