【ドジャース6-3ジャイアンツ】ロサンゼルス/ドジャースタジアム、9月19日(日本時間20日)
クレイトン・カーショウは、18年間のメジャー生活で、本拠地としてきた唯一の球場「ドジャースタジアム」のマウンドに一人立っていた。
スタジアムに「We Are Young」が響き渡り、満員の観客から降り注ぐ大歓声がそれに負けじと鳴り響く。伝説的なドジャース左腕は、チームメートの誰もフィールドに出てきていないことに気づいた。
カーショウはホーム側のダグアウトに向かって手を振って仲間を呼び、そして観客席を見渡しながらファンに手を振って応えた。
カーショウに次ぐ在籍年数を誇るチームメートのマックス・マンシーは試合前にこう語っていた。
「『特別扱い』されるのを本人が一番嫌がると思う。だから僕たちは普段通りグラウンドに出て、全力でプレーして、勝ち星を届けるだけ」
マンシーの読みは3つのうち2つは的中した。フィリーズがダイヤモンドバックスに勝利したことで、ドジャースはポストシーズン進出を決めた。
読みの一つは外れた。ファンは、特別な選手を見届けるための特別な瞬間を待ちわびていた。
2025年シーズン限りでの引退を表明したカーショウは、涙ながらに「感情面の整理は少しできた」と語った。しかし、試合に登板した時も、降板した時も、スタンドから降り注ぐファンやチームメート、コーチ陣の惜しみない愛情を全身で受け止めているようだった。
「ここドジャースタジアムに来てくれたすべてのドジャースファン、そして、これまで出会ったすべての人に心から感謝している。長年にわたりこのファンに支えられてきたことは、本当に特別だった。満員のドジャースタジアムで投げられる喜びに勝るものはない」
2008年のメジャーデビューから7月の3000三振達成まで、多くの偉業の舞台はこの球場だった。
宿敵ジャイアンツとの最後の登板。初回に先頭打者弾を浴びながらも踏ん張り、4回1/3を投げ、4安打、4四球、6三振、2失点でマウンドを降りた。ジャイアンツ戦での通算成績は62試合で27勝16敗、防御率2.08。奪三振421は歴代最多で、ウォーレン・スパーンの記録を超える。
五回にデーブ・ロバーツ監督がマウンドへ向かうと、観客は総立ちとなり、3分半にわたる大歓声で背番号22を見送ると、左腕はうっすらと涙を浮かべながら応えた。
今後はロードでの登板がもう一度予定されており、その後はポストシーズンのロースター入りが有力視されている。ただし、先発ではなく別の役割でチームに貢献することになりそうだ。
18年間、ただ一つの球団に身を捧げた未来の殿堂入り投手。この日、ドジャースタジアムはその栄光のキャリアを称えるにふさわしい舞台となった。
