ソーセージが球場を爆走?ブルワーズ名物「ソーセージレース」誕生秘話

November 29th, 2025

ミルウォーキーブルワーズ名物「ソーセージレース」は、今から30年以上前の1993年6月27日に産声を上げた。

始まりは、突然だった。

六回のイニング間に左翼ゲートがいきなり開き、巨大な3体のソーセージがグラウンドへなだれ込んだ。ブルワーズの元救援投手マイク・フェッターズはそのときマウンドにいたが、その瞬間については「まったく覚えてない」と苦笑する。だが、この突発的な『乱入』こそ、全米で真似されることになる名物レースの記念すべき第一歩だった。

当時のソーセージレースといえば、球場の大型ビジョンに映るアニメーションが定番で、ブラート、イタリアン、ポーリッシュのソーセージ三種盛りがミルウォーキーの街を駆け抜ける姿がおなじみだった。実際の着ぐるみがグラウンドに現れたのは、この日が初めてで、選手への事前告知もなく、ホーム付近でアップをしていたブルージェイズの捕手パット・ボーダーズも、突然の『実物登場』に仰天したという。

この記念すべき初回レースを制したのは、企画の発案者で、3体の着ぐるみを自作したグラフィックデザイナー、マイケル・ディロンで、「審判も選手もまったく知らされてなかった。アニメがふっと止まってゲートが開いた瞬間、球場中がどよめいたんだ」と振り返る。

こうしてソーセージレースは一気に名物へと成長し、他球団でも『ご当地レース』が次々誕生した。ワシントンD.C.の大統領レース、アリゾナのレジェンドレース、ピッツバーグの(ポーランドの餃子に似た料理を模した)ピエロギレースなどがその代表例だ。ただ一方で、デンバーで行われていた、歯ブラシやデンタルフロスが走る「トゥース・トロット」のように、短命で姿を消したレースもある。

歴代の選手や著名人が『飛び入り』した例も枚挙にいとまがない。マーク・グレース、ルイス・ゴンザレス、野茂英雄らのスターがビジターとして参戦。2003年には負傷者リスト入りしていたジェフ・ジェンキンスが「7馬身差で勝ったよ」と笑いながらゴールテープを切った。中継担当のビル・シュローダーが着ぐるみ姿のまま放送席に現れ、「ホーム後方をショートカットした」と『反則告白』をしたこともある。

一方で、この名物レースには『事件簿』も存在する。

2003年、パイレーツのランドル・サイモンがふざけ半分にイタリアンソーセージをバットで軽く叩いて転倒させ、思わぬ逮捕騒ぎに発展。後に和解し、被害を受けた女性はキュラソー観光局の招待でサイモンの故郷を訪れれている。さらに2013年には、イタリアンの着ぐるみが忽然と姿を消し、2週間後にバーで置き去りにされた状態で見つかるという『誘拐事件』まで起きている。

そして今年、30年の時を経て、初代3体の着ぐるみはついにオークションへ。ブルワーズの元選手で現カブス監督のクレイグ・カウンセルは、かつてこう語っている。

「ソーセージレースは、ウィスコンシンだからこそ成立する。他のどこにも真似できないよ」

名物は、ときに混沌を呼び、ときに大騒動を巻き起こす。それでも人々に愛され続けるのは、この土地特有の文化とユーモアがたっぷり詰まっているからだ。

※この記事は、2023年に初掲載されました。