ノーラン・アレナド。将来の殿堂入り候補と言われる三塁手は、この冬トレードされる見込みだ。
おそらく……。
「おそらく」と言うのは、球団側・本人側のどちらも『そろそろ変化の時』と示唆しているからだ。カージナルスの新しい野球運営部門トップ、ハイム・ブルームの「全員が別の場所を探すのがベストだと感じている」という発言からも、『動く』合図と見ていいだろう。
さらに、ノーラン・ゴーマンがおり、有望株JJ・ウェザーホルトのメジャー昇格が迫っていることもあり、カージナルスには別の選択肢が揃っている。
とはいえ「確定」ではない。というのも、昨オフも同じようにトレードの話が出ながら、アレナドはアストロズへの移籍を拒否し、チームに残った過去があるからだ。今回はアレナドがトレード拒否権について以前より柔軟な姿勢を見せているとはいえ、来年4月で35歳になる選手で、今季の成績は打率.237、出塁率.289、長打率.377。OPS+は87(100が平均)で、2013年の新人年を除けばキャリアで最も低い数字。2022年に30本塁打&MVP投票3位という輝きを放ってから、成績は3年続けて下り坂だ。
アレナドの契約は残り2年で総額3700万ドル(約58億円、ロッキーズが支払う500万ドル/約8億円を除く)。これは、かつてほどの超一流レベルではないにせよ、今も三塁でプラス評価の守備を見せる選手としては、そこまで重い契約ではない。
一方で、指標では2025年に「三塁手24位」、2026年に「22位」と予測されており、理由のひとつはハードヒット率(打球初速95マイル=153キロの割合)の大幅低下。10年前は上位25%だったのが、ここ2年はわずか12%まで落ち込んでいる。打撃データだけを見れば、ミッキー・モニアク、ジェイク・フレイリー、マイケル・コンフォートあたりと同程度。仮に一塁を守らせるとしても、そこまでメリットは大きくない。
市場状況も複雑だ。三塁が埋まっている強豪は多く、ほかのチームもFAのアレックス・ブレグマン、エウヘニオ・スアレス、さらには日本の村上宗隆や岡本和真の動向を見てから動く可能性が高い。とはいえ、相手はノーラン・アレナドだ。必ずどこかが手を挙げるはずだ。
それでは、残り29球団の中から“新天地候補”を順に見ていこう。
2026年に十分な戦力になりそうにないチーム(3)
ホワイトソックス、ロッキーズ、ナショナルズ
アレナドは今回、これまでよりトレード拒否権を行使しない姿勢を示しているものの、『来季の優勝争いから遠いチーム』に行くために拒否権を外すとは考えにくい。この3球団は昨季95敗以上しており、再び優勝争いに絡むにはまだ時間が必要だ。本音を言えば、ロッキーズ復帰を見てみたい気持ちはあるのだが。
すでに明確な三塁手がいるチーム(10)
ブレーブス、オリオールズ、レッズ、ガーディアンズ、アストロズ、ブルワーズ、ツインズ、パドレス、ジャイアンツ、レイズ
もちろん、現在の三塁手を一塁やDHに動かしたり、アレナドをそちらに回したりすれば可能性はゼロではないが、これらのチームは三塁がしっかり埋まっている。マニー・マチャドやマット・チャップマン、オースティン・ライリー、ホセ・ラミレスらの主力を動かしてまでアレナドを組み込むことは、現実的ではない。
条件次第では『ワンチャンあり』のチーム(9)
カブス、ロイヤルズ、ドジャース、マーリンズ、メッツ、ヤンキース、マリナーズ、レンジャーズ、ブルージェイズ
ここにはいろいろな事情や動く可能性のある要素が多い。たとえば、ロイヤルズには三塁で好成績を残したマイケル・ガルシアがいるが、二塁に穴があるため、必要ならコンバートする手もある。また、メッツはピート・アロンソ、ブルージェイズはボー・ビシェットら主力内野手と再契約しない場合はアレナドに手を伸ばす余地が出てくる。ただし、彼らが残留するなら可能性は薄い。
このグループを見ていくと、どのチームも「条件が整えば」「場合によっては」という状況ばかりで、アレナドにぴったり合うチームはほとんどない。
たとえば、
- カブス:ルーキーのマット・ショウの出塁率.295が懸念。
- ドジャース:マックス・マンシーの離脱日数を心配しているが、マンシー自体はアレナドよりもはるかに打撃が優秀。
- ヤンキース:自軍のコーナー内野手が左打者ばかりであることや、トレード後のライアン・マクマホンの不振を懸念して、別の選択肢を求めている。
- マーリンズ:コナー・ノービーにコミットせず、かつアレナドが行くことに同意すれば可能性がある。
- マリナーズ:守備は堅実だが打撃に不安のあるベン・ウィリアムソンが三塁にいるため、条件が揃わなければ厳しい。
こうした「椅子取りゲーム」のチームの中で、条件がうまく合えばアレナドの居場所が見つかるかもしれない。しかし、どのチームも本命と言えるわけではない。
これで22チームを見てきたが、明確な候補はなし。ここからは現実的な有力候補を見ていこう。
7位:アスレチックス
76勝86敗のA’sは、投手陣を補強できるかで優勝争いに絡めるかが決まる。後半戦は勝ち越し、若手ラインナップ(カーツ、ウィルソン、バトラー、ソーダーストロム、クラーク)が魅力的。三塁は大きな穴で、昨年はわずか10本塁打、守備も最弱クラス。アレナドがウェストサクラメントで晩年を過ごすかは課題だが、若手チームにベテランとして加わるには魅力的な選択肢。
6位:パイレーツ
71勝91敗のパイレーツは、投手は揃っているが打線はMLB最下位。チームはポール・スキーンズが柱で、チェリントンGMは打線強化に積極的。アレナドが加われば最大打撃補強ではないが、現状ではどんな優秀な打者でも大きな助けになる。
5位:フィリーズ
アレナドがボームより上かはさておき、重要なのはチームの動きだ。フィリーズはこの冬、FA再契約(カイル・シュワーバー、ハリソン・ベイダー、J.T.リアルミュート、レンジャー・スアレス)や、ニック・カステヤノスの放出、あるいは2年連続で地区シリーズ敗退した後のチーム刷新など、最も積極的に動く球団の一つと見られている。ボームがトレード可能なら、さらに三塁手市場に競争が生まれる。
4位:タイガース
グレイバー・トーレスの復帰で状況は複雑だ。トーレスは二塁を守るため、三塁には最大6人の候補がいるが、有力な選択肢ではない。ザック・マキンスリーはユーティリティ向き。ケビン・マクゴニグルは昇格すれば遊撃手として起用される可能性がある。2022年ドラフト12位のジェイス・ヤンもまだ候補だが、2025年はほぼ3Aで過ごしており、障害にはならない。昨オフにタイガースはアレックス・ブレグマン獲得を狙っており、今オフも候補となる可能性が高い。
3位:レッドソックス
ブレグマンの去就次第で動きが決まる。移籍すれば三塁は2年目のマルセロ・マイヤーが担当するが、右手首手術などで3年連続シーズン途中終了しており、本来は遊撃手で二塁もあり得るため三塁固定ではない。アレナドはアロンソ級のパワー打者ではないが、プルヒット中心の打撃はグリーンモンスターに合い、昨オフもボストン入りに前向きだった。
2位:ダイヤモンドバックス
昨季の三塁はスアレスが主だったが、移籍後はブレイズ・アレクサンダーが務め、ジョーダン・ローラーも数試合で起用されたが守備が不安定で、シーズン終盤はDH起用になった。アレクサンダーはOPS+95でまずまずだが、二塁・遊撃・センターも守れるため、他ポジションの起用の方がいいかもしれない。内部オプションが乏しく、アレナド獲得も現実的。
1位:エンゼルス
昨季72勝90敗で11年連続プレーオフを逃しているだけ、優勝争いに絡むチームを求める選手には一見、不向きに見える。しかし、球団は優勝を目指す姿勢を貫き、グレイソン・ロドリゲスの加入で注目を集めた。アンソニー・レンドンが完全に抜けたことで、2025年の三塁はMLB最弱の状況で、2026年も最下位予想となっている。アレナドは南カリフォルニア出身でドジャースファンだったが、高校はレイクフォレストにあり、エンゼルスタジアムの方がドジャースタジアムよりずっと近い。地元に戻るなら、これ以上の好機はないだろう。
