これを読めば、誠也の「すごさ」を適切に知ることができる、と願いたい。
MLB通算100号達成を記念して、その「すごさ」をデータや実績から分析し、正しく理解してほしい、と思いながら執筆した。右打ちの外野手としての希少価値を今一度、整理したい。
メジャー移籍から5年目。並みいるパワーヒッターの中で、鈴木は自らの価値を証明してきた。「メジャートップクラスの右打ち外野手」といってもいい。以下の条件でスラッガーとしての希少価値が際立つ。
- 右打ちの外野手兼DH(出場試合の50%以上がDHまたは外野手)
- 規定打席に到達
- OPS.800以上(OPSは出塁率+長打率、強打者を図る一般的な指標)
メジャー移籍後の過去4シーズンに今季を含めると鈴木の希少性が増す。ルーカーは左膝の手術で今季残り試合を欠場することになり、今季はOPS.800未満。ジャッジはOPS.900台と高水準を残しているが、7月1日時点では右肋骨の骨折で負傷者リスト(IL)に入り、規定打席に届いていない。鈴木がこのまま規定打席到達とOPS.800以上をキープすれば、2022年以降の5シーズンで、上記の3条件を4度クリアする唯一の選手になる見込みだ。つまり、ジャッジさえクリアできないことを誠也が、成し遂げる可能性が高い。
長いシーズン、負傷せず、安定してレギュラーを務めることだけでも困難だ。時には負傷を押して、その痛みに耐えながら、あるいは付き合いながら結果を残し続けなければ、メジャーで一流は張れない、という証左だろう。
ちなみに「左打ち」の外野手兼DHを含めると上記の条件を満たす選手は大谷とフィリーズのカイル・シュワーバー(33)の2人だけ(規定打席クリア&OPS.800以上を今季含む直近5シーズンで4度以上。大谷&シュワーバーは今季ここまでを含めて5年連続クリア)。
メジャー全体で「左右を問わず外野手兼DH」で過去4シーズンのうち上記の3条件を3度達成した選手は、10人だけ。つまり、鈴木は現在のメジャーでトップ10に入る外野手スラッガーといえる。
鈴木はメジャー1年目の2022年から、質の高い打球を継続している。スタットキャストによる平均打球速度は以下の通り。
- 2022年89.6マイル(約144キロ)=上位17%
- 2023年91.4マイル(約147キロ)=上位13%
- 2024年91.7マイル(約148キロ)=上位9%
- 2025年91.3マイル(約147キロ)=上位5%
今季はここまで平均打球速度89.6マイル(約144キロ)=上位46%、ハードヒット率(打球初速95マイル=153キロ以上の打球割合)41.4%=上位49%で過去2年と比べると下がっている(7月1日時点)。それでも、2023年からの3シーズンで示した打球の質は、打撃力の価値を支える確かな根拠だ。
昨季はカイル・タッカー(29=現ドジャース)がレギュラー右翼手を務めたため、DHでの出場が増えた。だが、右翼手として、今季は外野守備の指標が大幅に改善されている。
OAA(平均的な守備者と比べ、守備範囲でどれだけアウトを増やしたかを示す指標)は2022年が「-3」、2024年も「-3」だったが、2025年は「0」、今季は「+2」に上昇した(平均的な右翼手よりもアウト2つ多く奪った守備)。フィールディング・ランバリュー(平均的な守備と比べ、どれだけ失点を防いだかを得点換算した指標)も、昨季の「-1」から今季は「+4」に改善。つまり、メジャーの平均的な右翼手より、約4失点分を防いでいる。
今季終了後、鈴木は5年総額8500万ドル(約138億1500万円)、年平均1700万ドル(約27億6300万円)の契約を終えて、フリーエージェント(FA)になる。右打ちで長打力があり、OPS.800以上を継続でき、守備力が平均以上の選手となれば、複数年契約への需要を生む材料はそろっている。労使協定の改定内容によるが、33歳を迎える来季から再び100億円を超える大型契約も現実味を帯びるはずだ。
鈴木は3月に開催されたワールドベースボールクラシック(WBC)の準々決勝、ベネズエラ戦で盗塁を試みた際に右膝を負傷。開幕はILに入り、今季初出場は4月10日までずれ込んだ。さらに6月13日の敵地でのジャイアンツ戦では、浅いライトフライにチャージした際に右膝の痛みを再発させた。以降、チームの16試合で右膝への負担を軽減するため右翼でのスタメンは2試合にとどまる。欠場は2試合にとどめ、DHで12試合に先発出場し、カブスの5連勝に貢献している。右膝が万全ではないながらも、レギュラーとして打線を支えている。
以上から、鈴木誠也の外野手&スラッガーとしての希少価値をご理解いただければ、幸いだ。
