ポストシーズン采配の「鍵」はロバーツ監督の経験値

October 21st, 2025

不調に陥っていた終盤戦に、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督には同じような質問が繰り返し聞かれていた。

「このチームは、本当に重要な試合でスイッチを切り替えることができるのか?」

結論から言えば、答えは「イエス」だ。9月序盤の不振を振り払い、レギュラーシーズン最後の20試合で15勝を挙げると、その勢いのままポストシーズンでも10試合で9勝1敗という圧倒的な成績で、ワールドシリーズの舞台にたどり着いた。

10月24日(日本時間25日)から始まるブルージェイズとの戦いで、先に4勝すれば、ドジャースは25年ぶりのワールドシリーズ連覇を達成する。そして、ロバーツ監督のポストシーズン通算勝利数は69勝に達し、ジョー・トーリ(84勝)、トニー・ラルーサ(71勝)に次ぐ歴代単独3位となる。

選手としてワールドシリーズ優勝を経験し、監督としても10年間で2度の世界一と5度のリーグ優勝を成し遂げたロバーツは、ポストシーズンを勝ち抜く術を知っている。そして自分自身も、選手たちと同様に「10月の舞台でスイッチを入れる」タイプだと信じている。

「まず自分からだと思う。意思決定で、選手たちと息が合っているかどうか。ポストシーズンのマネジメントとは、彼らの意識や心がどこにあるか、特定の場面でどう反応するかを理解し、それをもとに判断を下すことだと思っている」とロバーツは10月初旬に語った。

その勝負勘は、年月とともに磨かれてきたものだ。

今年のドジャースにとって、その変化はポストシーズン前から始まっていた。後半戦の成績は平凡で、極めつけは9月6日オリオールズとの試合。山本由伸(27)が八回2死まで無安打に抑えながら、最後の1球でノーヒットを逃すと、後を継いだブレイク・トライネンとタナー・スコットが試合を締められず、チームはまさかのサヨナラ負けを喫した。

これで9月は初日から5連敗となり、その中でも間違いなく最も痛い敗戦だった。翌日、ロバーツはチーム全体を集めて話をした。「この先の4週間、そしてその後も、持てる力をすべて出し切れ」と檄を飛ばしたのだ。

「本当に心に響いた」とミゲル・ロハスは振り返る。

「彼はいつも、チームが最も必要としているタイミングで声をかけてくれる。デーブはフィールド上の監督というだけでなく、人の心を管理する監督だ。話すべき時を分かっている。あのタイミングは完璧だったと思う」

その瞬間、ドジャースは明らかにスイッチを入れた。それ以降、レギュラーシーズンとポストシーズンを合わせてわずか6敗しかしていない。

ブレイク・スネル、山本、タイラー・グラスナウ、そして大谷翔平(31)ら、スター揃いの先発4本柱は、いずれも試合の終盤まで投げ抜き、ロバーツ監督がポストシーズンで特に采配が難しいと感じる“プレッシャーの少ない場面”を減らしている。

ただし、どんな好投手でも途中で降板することはある。2020年のワールドシリーズで、当時レイズ所属だったスネルが73球で六回途中で交代し、結果的にドジャースがその采配の恩恵を受けたことを覚えている人もいるだろう。

一方で、その判断が難しい試合もある。NLCSでは、スネルが8回をわずか103球で最少打者数に抑えた後、ロバーツは継投を選択。佐々木朗希が反撃を受けて1点差に迫られたが、トライネンが火消しに成功した。

その次戦も同様の状況。山本が8回を97球1失点で終えると、今度はロバーツは続投を決断。山本はその信頼に応え、完投勝利を挙げた。

ロバーツのチームは常に才能にあふれている。だが、重要なのはその使い方だ。長年の経験を通じて、どのタイミングでスイッチを入れるべきかを学んできた。

「彼がブルペンをどう管理するか、一人ひとり性格の違う選手をどう扱うか、チーム全体をどうまとめるかを見ればわかる」とムーキー・ベッツはNLCS期間中に語った。

「彼は最高の監督の一人だし、彼の下でプレーできて本当にうれしい。デーブ・ロバーツの悪口なんて絶対に言えない。僕にとって本当に素晴らしい存在だ」