「ルーキー卒業」2023年の躍進を背に、次なる挑戦へ進む英国代表

January 20th, 2026

これまでグレートブリテン(英国)は、野球界で強豪と見なされる存在ではなかった。だが2026年のワールド・ベースボール・クラシックでは、史上初めて自動出場権を獲得して本大会に臨む。「初出場の挑戦者」から「強豪国と肩を並べて戦う存在」へと大きく変わった。

チームを率いるのは、2023年大会で指揮を執ったドリュー・スペンサー監督に代わり、新たに就任するブラッド・マルセリーノ。ダイヤモンドバックス傘下でコーチを務め、英国野球殿堂入りも果たしている人物で、2023年大会ではベンチコーチとしてチームを支えた。英国野球に何十年も携わってきた豊富な経験を持つ。MLB選手の数では他国に見劣りするかもしれないが、マルセリーノは「とにかくタフな連中をまとめ上げる」と語っている。

2026年大会で英国は、ヒューストンのアストロズ本拠地ダイキン・パークで行われるプールBに出場。アメリカ、メキシコ、イタリア、ブラジルと対戦し、同国史上初となるプール突破を目標に戦う。今年の国際舞台を前に、英国代表は着実に次の段階へと歩みを進めている。

2023年大会での戦い

グレートブリテンは2017年のワールド・ベースボール・クラシック予選で、最終戦でイスラエルに敗れ、本大会出場を逃していた。しかし2023年大会では最終予選でスペインを下し、ついに初の本大会出場を果たす。プール戦ではコロンビアを破る大金星を挙げ、これが同国にとって大会初勝利となった。その後、メキシコに2―1で敗れて敗退が決まったものの、アメリカがコロンビアに勝利したことで、英国はプール4位以内が確定。結果的に、2026年大会への自動出場権を手にすることになった。

2026年大会の日程

本大会を前に、英国代表はカクタスリーグでMLB球団との強化試合に臨む。3月3日にブルワーズ、4日にパドレスとエキシビションゲームを行った後、いよいよクラシック本番に突入する。初戦は3月6日(金)にヒューストンのダイキン・パークでメキシコと対戦。これは2023年大会で敗退を喫した相手との再戦となる。続いてアメリカ、イタリア、ブラジルと対戦し、プール戦を戦い抜く。

過去のベストパフォーマンス

出場経験がまだ限られている英国代表にとって、2023年大会でのコロンビア戦の勝利は、野球の伝統が深いとは言えない国にとって象徴的な一戦だった。この試合で英国は序盤に3点を先行されながらも、ジェイデン・ラッドの勝ち越し2点二塁打と、ハリー・フォードのソロ本塁打で流れを引き寄せ、突き放した。最後はMLBで救援を務めるイアン・ギボーが8、9回を締め、7―5の勝利でセーブを挙げている。

そもそもこの舞台に立つまでの道のり自体が、印象的な快進撃だった。2022年にドイツ・レーゲンスブルクで行われた予選では、ダブルエリミネーション方式の中で初戦でフランスを14―4、続く2戦目で開催国ドイツを8―1と圧倒。最終的にはスペインとの10―9の接戦を制し、劇的な形で初の本大会出場を決めた。

英国野球史における主な成果(要約)

2023年大会での初勝利が画期的だったことに加え、英国は直近のU-23欧州野球選手権でチェコを破り、年代別を含め史上初の欧州タイトルを獲得。約90年ぶりとなる国際大会の金メダルとなった。1938年には「アマチュア・ワールドシリーズ」で米国を4勝1敗で下した歴史もある。

欧州選手権では2025年に準々決勝敗退。最高成績は準優勝で、2023年、2007年、1967年に記録している。2026年にはWBSC主催のプレミア12予選に初出場予定で、上位4位以内なら2027年本大会に進出する。

五輪野球の本大会出場経験はないが、2007年欧州選手権で2008年五輪予選への出場権を得た実績はある。近年はU-23の躍進やワールドベースボールクラシック連続出場を追い風に、国際舞台で存在感を高めている。

注目のMLB選手候補

2023年のワールドベースボールクラシックで、イアン・ギボーは英国代表のブルペンを支える重要な存在だった。ただし、2025年途中に右肩の負傷もあり、大会メンバー入りについては不透明な状況にある。昨年10月、レッズからトリプルAに降格となった後にフリーエージェントを選択し、現在はMLB球団と契約していない。

もしギボーが不参加となれば、終盤を任される存在として浮上するのが、2023年大会でもチームメートだったマイケル・ピーターセンだ。イングランドのミドルセックス生まれで、2023年大会ではノーラン・アレナドをわずか3球で三振に仕留めたシーンが印象に残る。2024年にドジャースでMLBデビューを果たし、その後はブレーブス、マーリンズでも登板している。

また、ヤンキース内野手のジャズ・チザムJr.も名前が挙がる。バハマ出身のチゾムは2023年大会で英国代表としての出場を予定していたが、前年に負傷者リストで長期間を過ごしていたことを理由に、当時所属していたマーリンズが参加を認めなかった経緯がある。本人は英国代表としてプレーする意向を公言しているものの、現時点では連盟から正式なロースター発表はなされていない。

さらに、レッドソックスの救援左腕アロルディス・チャップマンも候補の一人として注目されている。本人は英国代表でのプレーに関心を示しているが、参加には書類手続きと所属球団の承認が必要となる。チャップマンはキューバ出身で、2009年大会では同国代表として登板しているが、父方の祖父母が、当時英国領だったジャマイカからキューバに移住していた経緯があり、英国市民権を取得できる資格を持っている。

参加が期待されるマイナーリーグ有望株

直近でマリナーズからナショナルズへ全米横断トレードで移籍した後も、全体42位評価の有望株ハリー・フォードは、再び英国代表としてクラシックに出場する予定だ。両親がともにイングランド出身のフォードは、2023年も英国代表としてプレーし、4試合で13打数4安打、2本塁打、4打点を記録。カナダ戦での3ラン本塁打、コロンビア戦でのソロ本塁打など、印象的な活躍を見せた。

もう一人、有力候補として名前が挙がるのが、レンジャーズの球団No.1、MLB全体でもNo.6と評価されるセバスチャン・ウォルコットだ。チザムと同じくバハマ出身で、同国は1973年まで英国領、その後も英連邦に属している。ウォルコットは2025年シーズンをダブルAのフリスコ・ラフライダーズで過ごし、124試合に出場して打率.255、13本塁打、59打点、二塁打19本、盗塁32をマーク。昨夏、英国代表入りの可能性について問われた際には、「話は進んでいる。まだ協議中だが、そうなればワールドベースボールクラシックに出るかもしれない」と語っている。

このほか、次回クラシックで英国代表入りが期待されるマイナーリーガーとして、いずれもバハマ出身のカブス内野手有望株BJ・マレーJr.、ダイヤモンドバックス外野手有望株クリスチャン・ロビンソンの名前も挙がっている。

注目のストーリー:2023年の勢いを、いかに次につなげるか

英国のアマチュアからプロへと続く野球の育成パイプラインは、まだ発展途上にある。若年層リーグや施設整備は進められているものの、現在メジャーリーグでプレーしている選手の中で、実際に英国生まれなのはマイケル・ピーターセンのみだ。それでも、2023年と24年に開催されたロンドン・シリーズ、そして2023年大会での歴史的勝利が地域における野球人気を大きく後押ししてきた。MLBと英国野球の双方に深い縁を持つ新監督の就任も追い風となり、代表チームの将来像は明るい。

今大会の注目点

今回、英国代表はどんなチームセレブレーションを見せてくれるのだろうか。2023年大会では、本塁打後に王冠と王族風のローブを身にまとう“戴冠セレブレーション”が話題となった。さらに、ビッグプレーの後には、英国らしさの象徴ともいえる紅茶を優雅なティーカップで飲む仕草をするパフォーマンスも披露している。

では、2026年はどんな演出が飛び出すのか。王室にちなんだ新たな要素か、それとも英国ならではの午後の習慣へのオマージュか。世界が注目する中で、英国代表の新たなパフォーマンスは、数年前に話題をさらったあのセレブレーションと否応なく比較されることになりそうだ。