あらゆるうわさが、ついに現実となった。トレード期限を前に、タイガースは8月1日(日本時間2日)、タリク・スクーバルをドジャースへ放出するトレードを成立させた。この左腕が、トレード期限の話題の中心に居続けた理由はシンプルだ。このレベルの投手がシーズン途中に移籍することは、めったにない。
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そもそも2年連続でサイ・ヤング賞を受賞する投手自体がほとんどいないことも、その理由の一つだ。過去にこの快挙を成し遂げたのはわずか12人。その中でもサンディ・コーファックス、ジム・パーマー、クレイトン・カーショーらは、現役生活を一つの球団だけで過ごした。
ただし、今回は「2年連続受賞」という条件にこだわらないことにしよう。この実績が超一流の証しであることは間違いないが、偉大な投手になるための必須条件ではない。(3度の受賞がいずれも少なくとも1年以上空いていたからといって、トム・シーバーの偉大さに異論を唱える人はいないだろう)
全盛期を迎えている球界屈指の投手の行き先が決まった今、いくつかの疑問が浮かぶ。エース級の先発投手がシーズン途中に移籍したのは、直近ではいつだったのか。そして、このようなトレードはどの程度の頻度で起きているのだろうか。
すぐに思い浮かばなかったり、真っ先に2008年のCC・サバシアのブルワーズ移籍を思い出したりしたとしても無理はない。しかし、それさえも20年近く前の出来事だ。シーズン途中に行われたエースのトレードとして、おそらく最も伝説的な1998年のランディ・ジョンソンのマリナーズからアストロズへの移籍は、30年近く前にさかのぼる。昨年移籍した先発投手にはメリル・ケリー、チャーリー・モートン、ザック・リテル、エリック・フェディ、そしてケガからの復帰途上にあったシェーン・ビーバーらがいたが、スクーバルとは単純に比較できない。
そこで、この疑問に答えるために、いくつかの条件を設定することにした。該当する優秀な投手たちがスクーバルとまったく同じレベルに達していなくても、それは仕方がない。現在も過去も、そこまでの投手はほとんどおらず、同等の選手だけを対象にすれば、ごく短いリストになってしまうからだ。(そのリストも最後に紹介する)。スクーバルには及ばなくても、十分に優れた投手であることに変わりはない。
では、シーズン途中に移籍した「傑出した投手」を、どのように定義するのか。今回は、以下の条件を満たしたシーズンの投手を探した。
- 100イニング以上を投げ、15試合以上に先発した
- 平均的な投手を15%以上上回る成績を残した
- (当然ながら)同じシーズンに複数の球団でプレーした
このような条件を設定したのは、選手の評判や過去の実績ではなく、移籍した時点でのパフォーマンスを重視するためだ。例えば2026年の今、ケガを抱える40代のレジェンド、マックス・シャーザーやジャスティン・バーランダーを獲得したとしよう。彼らが自軍のユニフォームを着て、クラブハウスで若手選手たちと過ごすことには、大きな価値がある。一方で、現在のキャリアの段階を考えれば、移籍後にマウンドで圧倒的な活躍を見せることまで期待するのは難しいだろう。
トレード期限が6月から7月へ戻された1986年以降、100イニング以上を投げた投手は、延べ6000近くに上る。そこから同じシーズンに複数球団でプレーした投手に絞ると、500弱まで減る。さらに、その年に平均を15%以上上回る成績を残した投手だけを選ぶと、該当するのは43例しかない。ここでは簡略化のため、防御率とFIPの加重平均を用い、FIPをやや重視している。現在96回2/3を投げているスクーバルは、次回登板でほぼ確実に44例目となる。
わずかそれだけだ。過去40年間で該当するのは、39人の投手による43件のトレードのみ。決して多くはない。
この条件が実態をうまく表していると考えられるのは、昨年の該当者がゼロだったことからも分かる。短縮シーズンを除けば、該当者が一人もいなかったのは2018年以来だった。その2018年に移籍した主な先発投手は、本格的にブレークする前のケビン・ゴースマン、全盛期を過ぎたコール・ハメルズ、そして好投手ではあったものの今回の条件にはわずかに届かなかったクリス・アーチャーだった。アーチャーがレイズからパイレーツに移ったトレードは、過去10年で最も悪名高い取引の一つとなっている。
約45年間で43件なら、単純計算では1シーズンに1件弱となる。しかし、実際には均等に起きてきたわけではなく、意外にも増加傾向にある。トレード期限が後ろ倒しされた後、1980年代最後の4シーズンではわずか4件だったが、1990年代には有名なジョンソンのトレードを含む6件、2000年代には11件、2010年代には14件が成立。2020年代は現時点で8件だが、もちろん間もなく9件となる。
(10件になる可能性もある。デトロイトで素晴らしいシーズンを送っている先発投手は、スクーバルだけでなく、ケーシー・マイズもトレード候補になっており、あと13回1/3を投げれば今回の条件を満たす。エンゼルスの先発ホセ・ソリアーノも、トレードされれば条件にかなり近づく)
増加の背景には、いくつかの要因があるだろう。1990年代に4球団が加わり、メジャーの球団数が増えたこと。ワイルドカード制度が複数回にわたって拡大され、ポストシーズン進出球団が増えたこと。そして、起用される投手の数自体が増えたことだ。1988年のドジャースでは、20イニング以上を投げた投手がわずか13人だったが、そのような時代はとうに過ぎ去った。(2025年のドジャースでは21人が20イニング以上を投げている)
このリストには、ジョンソン、シャーザー、サバシア、バーランダーといった伝説的な実績を誇る投手がいる。ジェフ・サマージャ、ルイス・カスティーヨ、ダルビッシュ有、バートロ・コローンといった実力派の投手が素晴らしいシーズンを送る中で移籍した例もある。1986年以降では珍しい6月の大型トレードとなったフレディ・ガルシアや、キャリア最高のシーズンを送ったシドニー・ポンソンも含まれている。ただし、ポンソンは今回の条件をぎりぎりで満たしたにすぎない。
直近でシーズン途中に移籍した「大物」は、現在タイガースに所属するもう一人の投手、ジャック・フラハティだ。2024年、デトロイトでの最初の在籍期間を終え、ドジャースにトレードされた。新天地ではタイガース時代ほどの投球を見せられなかったものの、優勝したチームでポストシーズン5試合に先発。ナ・リーグ優勝決定シリーズとワールドシリーズでは、いずれも第1戦の先発を任された。
今回の基準では、好成績を残していたシーズンの途中に複数回トレードされたエースが5人いる。
- デビッド・コーン(1992年、1995年)
- クリフ・リー(2009年、2010年)
- ザック・グリンキー(2012年、2019年)
- デビッド・プライス(2014年、2015年)
- ジャスティン・バーランダー(2019年、2023年)
極めて珍しいことが分かる。しかし、先ほども触れたように、これほど優れた投手が並ぶ中でもスクーバルは際立っている。
シーズン途中に移籍した43例を、移籍した年の防御率とFIPを組み合わせた指標に基づいて順位付けすると、上位は以下のようになる。スクーバルはここでも目立つ位置にいる。
- 2016年 リッチ・ヒル
- 2008年 リッチ・ハーデン
- 2026年 タリク・スクーバル
- 2015年 デビッド・プライス
- 2010年 クリフ・リー
キャリア中盤に復活を遂げ始めた頃のヒルが、どれほど素晴らしかったかは忘れられがちかもしれない。2016年にアスレチックスからドジャースへ移籍すると、レギュラーシーズン6試合に先発し、防御率1.83を記録。その後、ポストシーズンでも3試合に先発した。
さらに忘れられがちなのが、短期間ながら圧倒的な投球を見せたハーデンだ。2008年はアスレチックスで防御率2.34を記録し、カブス移籍後はそれを上回る防御率1.77を残した。(ただし、カブスはこのトレードで若手マイナー捕手を放出。その選手は後に通算279本塁打を放ち、同世代を代表する三塁手の一人となったジョシュ・ドナルドソンだった)
スクーバルは現在、シーズン途中に移籍した先発投手として歴代3番目に優れたシーズンを送っている。過去2シーズンも圧倒的な成績を残していることを考慮し、ヒルやハーデンより上に位置付けるべきだという意見もあるだろう。それも一理ある。ただし、それならジョンソン、シャーザー、バーランダーといった投手たちについても、過去の実績を同じように考慮しなければならない。
続く5例は順に、2021年のシャーザー(ドジャースへ移籍)、2008年のサバシア(ブルワーズ)、1998年のジョンソン(アストロズ)、2019年のグリンキー(アストロズ)、2014年のジョン・レスター(アスレチックス)となる。この顔ぶれにも納得できるだろう。中でもサバシアとジョンソンは、過去40年間の代表例として真っ先に挙がる2人だ。
素晴らしい顔ぶれであると同時に、非常に短いリストでもある。スクーバルほどの投手がシーズン途中に移籍するのは久しぶりだという感覚は正しい。そもそも、このレベルのエースを見つけること自体が難しく、ましてFA以外の形で獲得可能になることはほとんどない。だからこそ、ア・リーグを代表する現役エースに、これほど多くの球団が関心を寄せていたのだ。
