MLB球団の選手総年俸と成績の相関関係

August 1st, 2026

MLBは、選手総年俸に厳格な上限を設けるサラリーキャップも、最低額を定めるサラリーフロアも採用していない。そのため、米国の主要プロスポーツの中で、大都市圏と小規模市場を本拠地とする球団の年俸総額の格差が最も大きくなっている。

NFL、NBA、NHLは年俸総額の格差を抑えるため、上限と最低額を設けている。一方、MLBは1990年代に広がった球団間の格差を受け、2003年に導入されたCBT(ぜいたく税)を中心に格差是正を図っている。

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では、球団の選手総年俸と成績には、どの程度の相関関係があるのか。現在の経済制度は、勝敗やポストシーズン、ワールドシリーズ制覇といった重要な結果にどのような影響を与えているのか。

MLBでは、球団ごとの収益と選手総年俸に大きな格差がある。

本拠地の市場規模は、人口2000万人を超えるニューヨーク都市圏から、約150万人のミルウォーキー都市圏まで幅広い。最大市場と最小市場では、球団収益に約9倍の差がある。

収益の大きさは選手総年俸に直結する。小規模市場の球団は、大都市圏の球団に比べてFA市場で積極的に補強する機会が少なく、スター選手を長期間引き留めることも難しい。

球団間の年俸格差は、以前からMLBの経済構造に存在していた。しかし、現在の格差は過去最大の水準まで広がっている。小規模市場の球団を応援する多くのファンが、自分たちの球団には公平に競争する機会がないと感じていることも、無理はない。

ワールドシリーズを2連覇しているドジャースは、その格差を最も端的に示す例だ。

ドジャースは2025年、メジャーの選手総年俸とCBT(ぜいたく税)を合わせ、選手関連費用に約5億1500万ドル(約815億円)を費やした。

これは、マーリンズの6900万ドル(約109億円)を4億4600万ドル(約706億円)も上回る。

ドジャースが支払ったぜいたく税だけでも1億6900万ドル(約267億円)に達し、MLB16球団の選手総年俸をそれぞれ上回った。選手関連費用の総額5億1500万ドル(約815億円)は、ガーディアンズ、ホワイトソックス、パイレーツ、アスレチックス、レイズ、マーリンズの6球団を合計した金額よりも多かった。

ただし、これはドジャースだけの問題ではない。

選手総年俸上位5球団と下位5球団の平均額の比率は、2018年の2.6倍から、2025年には4.7倍まで拡大した。4.7倍の格差は、記録が残る1985年以降で最大。2026年には5倍近くまで広がると予測されている。

それまでの最大は1999年の4.4倍だった。この格差拡大を受け、2003年の労使協定から現在のCBT制度が導入された。

2022年からの現行労使協定下では、フィリーズ、ヤンキース、メッツ、ドジャースの4球団がFA選手に投じた総額が、支出下位22球団の合計を上回っている。

小規模市場の球団でも、選手の発掘や評価、育成で資金力のある球団を上回ることはできる。ただし、豊富な資金は失敗を許容できる余裕を生む。

大規模市場の球団は期待外れに終わった大型契約を抱えても、新たな補強で穴を埋められる。一方、小規模市場の球団では、一つの大型契約の失敗が長期間にわたり編成を苦しめる。

小規模市場の全球団が、地元から得る収益と収益分配で受け取った金額をすべて選手総年俸に充てたとしても、地元放映権料と市場規模に構造的な差があるため、最上位の球団と同じ水準まで支出を増やすことは難しい。

選手総年俸と成績の間には、明確な関係がある。

ポストシーズンの出場枠拡大や、限られた予算を有効に使う球団運営によって、さまざまな球団がプレーオフへ進出してきた。選手総年俸の順位を上回る成績を残す球団もある。

それでも、1998年から2025年までのデータによれば、資金力がシーズンの結果に影響を与える明確な傾向が残っている。

Payroll Rank Avg Wins Avg Record Win Differential (vs. .500)
Ranks 1–5 89 89–73 8
Ranks 6–10 86 86–76 5
Ranks 11–15 82 82–80 1
Ranks 16–20 78 78–84 -3
Ranks 21–25 77 77–85 -4
Ranks 26–30 74 74–88 -7



1998年から2025年までの27シーズンでは、選手総年俸上位5球団と下位5球団の間に、年間平均で15勝もの差があった。ヤンキースとドジャースは、同期間の選手総年俸の累計でそれぞれ1位、2位。勝率でもメジャー全体の1位、2位となっている。

ポストシーズンに進出する球団に一定の多様性がある背景には、ア・リーグ中地区とナ・リーグ中地区の存在が大きい。両地区の計10球団のうち、本拠地のテレビ市場規模がMLB上位半分に入るチームは、カブスとホワイトソックスの2球団だけだ。さらに、中地区10球団で収益分配の拠出側となっている球団はカブスだけとなっている。

しかし、ポストシーズンでは戦力均衡の効果が薄れている。

中地区の存在や、限られた予算を巧みに使う球団運営によって、ポストシーズンの顔ぶれには一定の多様性が生まれている。ただ、ポストシーズンで勝つことと、ワールドシリーズを制することは別だ。小規模市場の球団は、選手層の厚い大規模市場の球団と対戦するポストシーズンで壁にぶつかる傾向がある。

新型コロナウイルスの影響で特別方式が採用された2020年を除き、2015年から2025年までに延べ108球団がポストシーズンへ進出した。

この期間、市場規模が上位半分の球団は、下位半分の球団と比べて、

ポストシーズン進出が1.7倍
リーグ優勝決定シリーズ進出が3倍
ワールドシリーズ進出が6倍
ワールドシリーズ制覇が9倍

それぞれ高い確率となっている。

Postseason Success by Market Rank (2015-2025)

  Reach Playoffs Reach LCS Reach World Series Win World Series
Teams 108 40 20 10
Top Half 63% 77.50% 85% 90%
Bottom Half 37% 22.50% 15% 10%



※市場規模は、2025~26年の指定テレビ市場圏(DMA=地域ごとに区分されたテレビ放送市場)のテレビ世帯数に基づく。

過去8年間では、ワールドシリーズ優勝球団のうち7球団が選手総年俸上位10位以内だった。この期間で唯一の例外は、選手総年俸がメジャー14位だった2021年のブレーブスとなっている。

2005~25年のデータによると、市場規模が上位半分に入る球団のファンは、12歳までに応援球団のワールドシリーズ制覇を見られる確率が50%だった。一方、市場規模が下位半分の球団では、その確率が50%に達する年齢は73歳だった。

他の主要プロスポーツでは、市場規模が優勝へ与える影響ははるかに小さい。

MLBで最後に小規模市場の球団がワールドシリーズを制した例は、2015年のロイヤルズだった。

それ以降、他の主要プロスポーツでは小規模市場の球団が計16度優勝しており、各競技で少なくとも4球団が頂点に立っている。

2023年には、他の3競技すべてで小規模市場の球団が優勝した。NBAはデンバー・ナゲッツ、NFLはカンザスシティ・チーフス、NHLはベガス・ゴールデンナイツだった。

同年のワールドシリーズを制したレンジャーズは、選手総年俸がメジャー6位。本拠地の指定テレビ市場圏も、メジャー球団の都市で5番目の規模だった。

2025年のNBAファイナルでは、オクラホマシティとインディアナが対戦した。両都市には3A球団があるものの、MLBの球団拡張候補としては十分な市場規模があるとはみなされていない。

スポルティコ(Sportico)のデータによると、2021年以降に優勝した球団の平均収益順位は、MLBが7.0位だった。NFLは12.0位、NBAは16.3位、NHLは21.7位。MLBでは、他の競技よりも収益規模の大きい球団が優勝する傾向が強い。

ただし、問題は優勝争いだけではない。他の主要プロスポーツでは、レギュラーシーズンの成績もMLBほど市場規模に左右されていない。

Regular Season Win Percentage by Market Rank (10 most recent seasons)

  NBA NFL NHL MLB
Top-5 Markets 0.479 0.426 0.481 0.521
Bottom-5 Markets 0.527 0.514 0.489 0.478
Delta -0.048 -0.088 -0.008 0.043



他の主要プロスポーツでは、市場規模にかかわらず、各球団に成功する機会が平等に与えられている。どの都市を本拠地とするかが、どこまで勝ち進めるかを大きく左右するのは、米国の主要プロスポーツではMLBだけだ。

この格差を是正する手段が、サラリーキャップとサラリーフロアの導入だ。

NFL、NBA、NHLはいずれも、球団の選手総年俸に上限と最低額を設けている。次回の労使協定で同様の制度が導入されれば、MLBが抱える戦力面と財政面の不均衡を改善できる。

サラリーキャップは、1球団が1シーズンに選手総年俸として支出できる金額に厳格な上限を設ける制度だ。これにより、ヤンキースやドジャースのような高収益の大規模市場球団が、地元放映権料や入場料収入の優位性を生かし、小規模市場の球団を大幅に上回る資金を投入することを防げる。

全球団が同じ条件からチームづくりを始めることになり、選手の発掘や育成、限られた資金の効果的な活用が、より公平に評価される環境が生まれる。