またしても、アレックス・ブレグマンに向けたタイガースファンのブーイングが飛び交う夜となったデトロイトでの一戦。そんな因縁を抱える中で、今夜輝きを放ったのは、ホームチームがかつて獲得寸前まで迫ったブレグマンではなく、実際にチームに加入した元大物フリーエージェントだった。
その男の名はハビエル・バエズ。合計6打点となる2本の3ランを記録し、さらに2本目は11回のサヨナラ弾となり、タイガースを10-9の劇的勝利へと導いた。
バエズ自身、かつてはブレグマンと同様、観客からの厳しい声にさらされていた。しかもそれがホームチームのファンだったのだからなおさら堪えただろう。
2021年のオフに6年契約で加入した当初は不振に苦しんだ。ホームの観客からブーイングを浴びることもあったが、今では「エル・マゴ」のニックネームと新しいセンターというポジション(元々はショート)と共にファンに受け入れられている。
タイガースは球団で育成した若手中心で構成されているが、復活をとげたベテランの献身性はその多くの選手の手本となっている。「彼は常に全力でチームに尽くしている」とA.J.ヒンチ監督は語る。
「ここ数年、多くの困難を経験してきた中でも戦い続け、新たなポジションをこなし、今では毎日出場している。彼の献身には最大限の称賛を送りたいし、送られるべきだ」
ただ、本人はもちろんまだ感傷的になるつもりはない。「まだシーズンは長いし、やることがたくさんある」と語る一方で、サヨナラ弾を放った瞬間には両手を掲げ、バットを落とす「マニー・ラミレス風」のパフォーマンスも披露した。
「マニーっぽくやってみたかったけど、打球が入るか自信がなかったんだ。でも、いい感触だったよ」とバエズは笑った。
今回の2発はいずれも、かつてバエズが苦手としていた変化球で、特にスライダーに空振りする姿はファンの中でも印象的だろう。しかし、右股関節の手術を経て、バエズはスイングと守備の機動力を取り戻し、打席での我慢強さも見せ始めている。
「手術の決断は難しかった。でも、今こうしてほぼ100%の状態でプレーできて、スライダーに対してもしっかりとバットが反応して打つことができている。こういった感覚でプレーできるのは素直に嬉しいよ」と語った。
この日、タイガースは4度リードを奪うも、そのたびにレッドソックスに追いつかれる展開に。しかし、バエズは六回にギャレット・ウィットロックのスライダーを左翼スタンドへ運ぶと、延長十一回には、グレッグ・ワイサートからの同じような球を捉えてサヨナラ弾を放った。
スタットキャストによれば、119メートルを記録した1本目のホームランはどの球場でも本塁打となりうる一発に。しかも、対するウィットロックは試合前の段階でスライダーの被打率は.125、空振り率 41.5%という精度を誇る決め球だったが、甘く入ったところを完璧に捉えられた。
「前の投手は156キロの速球を2球投げてきた。ファールにはなったけどタイミングは合ってたから、感触は良かったし、変化球を狙っていた」とバエズは振り返る。
今季のバエズは「クラッチヒッター」ぶりが光る。得点圏では打率.424(33打数14安打)、3本塁打、24打点を記録しており、そのうち2死からの得点圏では7打数5安打、2本塁打という驚異的な数字を残している。
「(タイガースに)加入した当初は苦しんでいたが、彼は元々球界でも最高の選手の1人。今またその姿を取り戻しつつあるようだ」とレッドソックスのアレックス・コーラ監督も賛辞を送った。
もちろん彼のチャンスでの勝負強さは大きな財産だが、ヒンチ監督にとっては、バエズの姿勢こそに最大の価値がある。レッドソックスが一塁手のカサスの負傷の穴を埋めるのに苦労している一方で、バエズは負傷離脱したメドウズ、フィーアリング、ペレスに代わって不慣れなセンターをしっかりと務め、チームの模範となっている。
「彼はチームの勝利のためならどんな苦労もいとわないというチームが目指す姿勢を体現している。これは、口にするのは簡単だが、実際にやるのは難しい。特に彼のように経験を積んだ選手なら尚更だ。バエズはワールドシリーズ優勝も、ゴールドグラブも経験した男、それでも(新しいポジションを)『やる』と言ってくれた。本当に貴重な存在だよ」
