今季から導入された自動ボールストライク(ABS)チャレンジシステム。開幕から4月1日までに使用されたABSチャレンジは343件で、そのうち判定が覆った成功例は189件、失敗(判定は変わらず)は154件。成功率は55%だった。
打者側によるチャレンジは163件で成功85件、失敗78件の成功率52%。一方、守備側のバッテリーによるチャレンジは180件で成功104件、失敗76件、成功率は58%と高めになっている。
開幕から3月31日までの65試合では、五回までにABSチャレンジを使い切ったのはわずか7チームのみ。終盤まで温存する傾向があり、必ずしも結果に直結するケースばかりではない。しかし、僅差の試合では終盤の1球が試合を左右することも多く、タイミングが重要になる。
チャレンジをいつ使うかは選手に委ねられているが、「使うべきタイミング」が存在することは明らかだ。
3月31日のロッキーズ戦、五回に2点リードで1死満塁という絶好の場面で打席に立ったのは岡本和真。カウント2-1から投じられた低めスライダーを見逃すと、球審はストライクと判定。岡本は軽く頭を叩き、ABS判定のリクエストを要求した。
しかし、ボールはゾーン内と判断され、判定は覆らず。ブルージェイズはこの時点で五回までにチャレンジ権を使い切ることになった。この日、二回にも捕手ハイネマンが投手マックス・シャーザーの投球をボールと主張してチャレンジしていたが判定は覆らず、すでにチャレンジ権を一つ失っていた。
テレビ中継では、すでに一度チャレンジに失敗していることや、試合が僅差で進んでいた状況を踏まえ、岡本のチャレンジ判断には疑問符がつけられた。試合はブルージェイズが七回に3点を追加して勝利したが、試合後、チームのABSチャレンジ戦略を見直したはずだ。
一方、4月1日のガーディアンズ戦、4点を追うドジャースは八回1死二、三塁で、9番フリーランドが低めの球を見逃し三振と判定されたがチャレンジ。結果は覆らなかったものの、テレビ中継では「状況的に妥当な判断」と評価された。
ベンチのロバーツ監督も「低い」とジェスチャーを示し、チャレンジに納得した様子だった。結果は変わらなかったが、点差やイニングを考慮すれば、チームとして理解できる判断だった。
ABSチャレンジはコールから2秒以内という制限もあるため、即座の判断が求められる。
多くのチームが全員に権利を持たせつつも、冷静さを欠きやすい投手ではなく捕手に委ねるべきだとする声も多い。さらに、ゾーンの枠にわずかでもボールがかかればストライクと判定されるため、打者にとって見極めは極めて難しい。
一方、ABSの判定が試合を大きく左右した試合もある。
3月31日のフィリーズ戦で、ナショナルズは早々にチャレンジ権を使い切った。
二回、捕手の要求が覆らず1回分を消費。さらに三回2死から打者ルイス・ガルシアJr.もチャレンジに失敗し、三回終了時点で残り権利はゼロとなった。
その三回のフィリーズの攻撃では、先発リトルの初球が際どく見えたが、ボール判定。捕手はチャレンジできず、結果としてソロ本塁打を被弾した。さらに最終回も、明らかにボールの球がストライクと判定されたが、打者はチャレンジを要求できず、三振に倒れた。
また、4月1日のオリオールズ対レンジャース戦では、ABSチャレンジが決着を左右。九回2死で捕手バサヨの要求により判定が覆り、見逃し三振で試合終了となった。
今後は、選手や監督が経験を積むことで「使うべきタイミング」の判断がさらに洗練されていくはずだ。ABSで試合の流れが左右される場面も増え、戦略の一部としてより精密に活用されるようになるだろう。