「痛いんだよ」
ヤンキースとのシリーズ初戦前、練習のためにフィールドに出てきた主砲は右腕を気にするそぶりを見せ、顔をしかめた。
12日(日本時間13日)のレッズ戦最終戦、二回1死二、三塁。三塁走者だったマイク・トラウトは、ホルヘ・ソレアの110マイル(約177キロ)前後の鋭いライナー性ファウルを右前腕に受けた。反応する間もない一打だった。
幸い骨に異常はなかったが、右前腕にはボールの縫い目がくっきりと残り、ボール一個分の大きさで黒く内出血する痛々しい痕(あと)が広がっていた。
通常、選手たちは交代で3ラウンドくらい打撃練習を行うものの、トラウトは一度だけで、その後はグラブを持って外野へ行き、フェンスや風を確かめると、早々とクラブハウスに引き上げた。
走っている時も右腕を激しく動かさないよう、気をつけているように見えた。
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野球では死球や自打球が日常的に起きる。そのたびに選手は顔を歪めるが、その痛みの“本当の重さ”を見る側が推し量ることはできない。
時速160〜170キロの物体が身体に当たるのは、どれほどの衝撃なのか。
AIに聞いてみたところ、野球のボール以外では、テニスのサーブ、バドミントンのスマッシュ、ホッケーのシュートなどが挙げられた。
では実際に当たったら、どんな痛みがあるのだろう。
さらに質問を続けると、答えはシンプルだった。
「かなり痛いどころではなく、ケガのリスクがあるレベルです」
半ば、呆れたような感じだった。
強い打撲や内出血、場合によっては骨折もあり得る。骨の近くならダメージはさらに大きく、腕や脚なら強打されたような衝撃、背中なら息が止まるほどのインパクトだという。
そして見逃せないのは、野球のボールは重く硬いという点だ。同じ“160キロ”でも、そのテニスボールやバドミントンのシャトルとは危険レベルが別物になる、とも言われた。
骨に異常がないとはいえ、想像を絶する痛みがあることが理解できた。
ヤンキースとの初戦、トラウトは初回に一ゴロ、四回の第2打席ではショートのエラーで出塁し、続くソレアの二塁打で先制のホームを踏んだ。この回、エンゼルスは打者一巡の猛攻を見せ、2死満塁で再びトラウトに打席が回った。
ヤンキース2番手右腕クルーズの5球目、93.8マイル(約151キロ)の速球をすくい上げると打球はセンター深くへ。だがフェンス手前で捕球され、惜しくも満塁弾はならなかった。飛距離393フィート(約120メートル)は、エンゼルスの本拠地を含む複数球場で本塁打となる当たりだった。
首をかしげながらダグアウトに戻るトラウトを見て、腕の痛みのせいだろうかと思ったが、それは杞憂だった。
3点を追う六回2死一、二塁で3番手バードの高めスイーパーを完璧に捉え、左中間ブルペンへ同点3ラン。さらに同点の八回には、1死一塁から低めのスライダーを振り抜き、再びブルペンへ。2打席連続本塁打で試合をひっくり返した。(※第1戦はサヨナラ負け)
さらに第2戦(14日)の初回には前夜から3打席連続の先制ソロを放った。
「スイングした時、痛みはないんですか」
試合前に珍しく自ら痛みについて口にしていたため、あらためて尋ねると、トラウトは右腕を見せながら、「そんなこと聞くまでもないだろ」とでも言いたげな表情でニヤリと笑い、短く答えた。
「あまり良くはないよね。痛い」
スーパースターが痛みに強いのか、アドレナリンが出て痛みを忘れているのか、トラウトが超人なのかはわからないが、さまざまな意味で別次元にいることだけは間違いない。