最優秀監督候補6名のシーズンを振り返る

November 11th, 2025

MLBの監督の仕事は、単にスタメンを決めるだけではない。26人の異なる個性をひとつのチームにまとめ上げ、勝者の文化とメンタリティを築き、好不調の浮き沈みの中でもチームを導いていくことが求められる。

今季の最優秀監督賞の最終候補6名はいずれもそれを成し遂げ、チームをポストシーズンへと導いた。

ア・リーグでは、ブルージェイズ地区最下位から首位へと押し上げたジョン・シュナイダーを筆頭に、2001年以来の地区優勝を果たしたマリナーズのダン・ウィルソン、終盤戦の猛追でガーディアンズを地区制覇に導いたスティーブン・ボートが候補になった。ボートは受賞すれば2年連続となる。

ナ・リーグでは、MLB全体1位の成績を収めたブルワーズのパット・マーフィーが、2年連続受賞を狙う。フィリーズのロブ・トムソンが受賞すれば初となり、レッズのテリー・フランコーナが選ばれれば史上最多タイとなる4度目の受賞となる。

11日東部時間午後7時(日本時間12日午前9時)からMLBネットワークで発表される最優秀監督賞。その受賞候補6名の実績を振り返る。

アメリカン・リーグ

ジョン・シュナイダー(ブルージェイズ)

昨年74勝だったチームを一気にア・リーグの頂点へと導き、期待を大きく超える躍進を見せた。予想外の成功を収めたチームの監督がこの賞を受けることは多く、シュナイダー自身がこの職で見せた成長も踏まえると、ブルージェイズ史上2人目(1985年のボビー・コックス以来)の受賞が十分にあり得る。

シュナイダーは自身への称賛を避けがちだが、選手やコーチ陣はその手腕を強く評価している。3年目を迎えた45歳の指揮官は、監督もまた、成長し、成熟することを象徴している。特に、チーム内のコミュニケーション改善とクラブハウスの文化の確立において中心的役割を果たし、それがワールドシリーズ第7戦まで進んだチームの強みとなった。また、メディア対応にも長けており、トロントに限らずカナダ全体を対象とする巨大なマーケットのチームを率いる監督としての資質を十分に備えている。

2002年に捕手としてブルージェイズにドラフトされたシュナイダーは、球団一筋の生え抜きであり、野球だけでなく人間的なレベルでも選手と深くつながる能力を持っている。若手選手が飛躍することを「ジャンプ」と呼ぶが、シュナイダー自身も監督3年目でまさにその飛躍を遂げたといえる。

(記者:Keegan Matheson)

スティーブン・ボート(ガーディアンズ)

これまで連続受賞を果たしたのは、殿堂入りのボビー・コックス(2004〜05)とレイズのケビン・キャッシュ(2020〜21)の2人だけ。しかし、ボートはこの名誉あるグループに加わる資格を十分に持っている。2年目の今季は、激動の夏を乗り越えチームを頂点へ導いた。

ボート率いるガーディアンズは、最大15.5ゲーム差を逆転してア・リーグ中地区を制した。これは1969年以降の地区制導入以降、あるいはそれ以前のリーグ制を含めても史上最大の逆転だ。9月5日時点では11ゲーム差をつけられていたが、そこから19勝4敗という驚異的な追い上げを見せた。

ジェットコースターのようなシーズンの中で、ボートは「一日一日を大切に」という精神を貫き、それがクラブハウス全体に浸透した。6月下旬から7月初旬にかけて10連敗、8月には1勝9敗という苦しい時期もあった。さらに、クローザーのエマヌエル・クラセと先発のルイス・オルティスが7月にMLBの調査を受け休暇に入り、エースのシェーン・ビーバーはトミー・ジョン手術からの復帰途中でブルージェイズにトレードされた。チーム打率は.226と、球団史上最低の数字を記録した。

最優秀監督賞は、春季キャンプ時の期待をどれだけ上回ったかで決まることが多い。ガーディアンズは夏場に入ってもその限界を超えて飛躍した。そして、ボート自身は功績を選手やスタッフに譲るだろうが、シーズンを形づくったのはそのリーダーシップにほかならない。

(記者:Tim Stebbins)

ダン・ウィルソン(マリナーズ)

2025年、監督1年目のウィルソンはチームを90勝72敗へと導き、球団史上4度目の地区優勝を達成。直近2年連続でポストシーズンを逃したチームを立て直した。

ウィルソンは冷静沈着で忍耐強く、しかし内に秘めた闘志を持つ人物として選手たちから広く尊敬を集めた。球団史上初のワールドシリーズ進出目前まで迫ったのは、数字に表れないチーム環境づくりだった。

ウィルソンの柔軟な起用方針がなければ、カル・ローリーが今季打ち立てた数々の記録は達成できなかっただろう。ローリーは159試合に出場し60本塁打を放ったが、その背景にはウィルソンとの長年の信頼関係がある。マイナー時代から築いてきた関係が、ローリーにクラブハウス内でのリーダーシップを発揮させた。

もちろん最初から完璧だった訳ではなく、学びながらの指揮ではあったが、ウィルソンは確かな成長を見せた。その進化はマリナーズの将来的な成功、そしてウィルソン自身の最優秀監督賞受賞の可能性につながるだろう。

(記者:Daniel Kramer)

ナショナル・リーグ

テリー・フランコーナ(レッズ)

すでに過去3度の最優秀監督賞受賞歴を持つテリー・フランコーナは、就任直後からチームを進化させる手腕で知られており、今季のシンシナティでもそれを証明した。レッズは83勝を挙げ、シーズン最終日にナ・リーグのワイルドカード枠を勝ち取った。フランコーナが監督初年度でチームをポストシーズンへ導くのは、2004年のレッドソックス、2013年のガーディアンズに続き、これが3度目である。

「目の前の1試合に集中する」という表現はもはや使い古されているが、フランコーナのその姿勢は、若く経験の浅いチームにとって非常に有効だった。シーズン中の最も長引いた連敗はわずか5試合で、8月25〜27日にロサンゼルスでドジャースにスイープされるまで、42シリーズ連続でスイープを免れていた。

フランコーナの安定したリーダーシップの下、レッズはシーズン終盤の最も重要な局面で大逆転を果たした。9月5日時点では、最後のワイルドカード枠を争うメッツとパドレスに6ゲーム差をつけられ、その間には別の2チームがいた。しかし、9月12〜14日にアスレチックスに今季2度目にして最後のスイープを喫し、74勝75敗となった後、残り13試合で9勝を挙げて巻き返した。最終的に、シーズン対戦成績でメッツに4勝2敗と勝ち越していたため、タイブレークでポストシーズン進出を決めた。

これでフランコーナが率いたチームがポストシーズンへ進出するのは、24シーズン中12度目となった。

(記者:Mark Sheldon)

パット・マーフィー(ブルワーズ)

2025年のブリュワーズを語る上で、まず思い出すべきはシーズン序盤の惨状だ。3月の時点でチームは開幕4連敗を喫し、近代野球史上最多失点(1954年カージナルスと並ぶ)を記録。序盤戦の話題に上がっていたトルピードバットの(被害者として)中心にいたのがブルワーズだった。さらに負傷者も続出し、6人の先発投手が負傷者リスト(IL)入り。ネスター・コルテスもヤンキースタジアムでのデビュー戦で3球連続被本塁打という衝撃的な幕開けを迎え、1週間後には同じくIL入りしていた。

2024年に、球団史上初のナ・リーグ最優秀監督賞を受賞したマーフィーでも、日程を変えることはできない。負傷者が続出する中でも、どうにかやりくりをすることが求められた。

「ただ受け入れて、何かを学ぶだけだ。これほど打ちのめされたのは、本当に久しぶりだよ」とマーフィーは当時を振り返った。

しかし、ブルワーズは一気に巻き返し、最終的にはシーズン前の予想(84勝前後)を大きく上回った。5月末時点では借金3だったが、5月25日から8月16日にかけて8連勝、11連勝、そして球団新記録の14連勝を重ね、最終的にMLB全体で最高勝率を記録した。これにより、マーフィーはボビー・コックス(2004〜05)とケビン・キャッシュ(2020〜21)に続く史上3人目の連続受賞者となる可能性を手にしている。

(記者:Adam McCalvy)

ロブ・トムソン(フィリーズ)

通常、最優秀監督賞は低い前評判を覆したチームの監督に贈られる。そのため、レッズのフランコーナやブルワーズのマーフィーが候補に挙がっているのも納得だ。

そうした傾向からすれば、トムソンは異例だ。フィリーズはリーグ屈指の高額年俸チームで、シーズン前からワールドシリーズ進出が期待されていた。それでも、フィリーズ、メッツ、ブレーブスの三つ巴で始まったナ・リーグ東地区を悠々と制した手腕は見事だった。ザック・ウィーラー、ブライス・ハーパー、トレイ・ターナーの負傷、ホセ・アルバラードの80試合出場停止(薬物規定違反)、不満を抱えたニック・カステヤノスとの関係、7月末のヨアン・デュラン加入まで続いたブルペン不安など、数々の難題を乗り越えた。

監督の大きな役割の一つは、クラブハウス内の多様な人間関係をまとめることだが、トムソンはその点でチャーリー・マニュエル以来最高のフィリーズ監督と評されている。

(記者:Todd Zolecki)