ポストシーズンで本塁打を量産するには、十分な打席数と、大舞台で結果を出す力が求められる。
このランキングに名を連ねた選手たちは、その両方を兼ね備え、いずれもポストシーズン通算18本以上の本塁打を記録している。ポストシーズンの通算本塁打打者ランキングを見ていこう。
1.マニー・ラミレス:29本
ラミレスはガーディアンズ、レッドソックス、ドジャースで11回のポストシーズンに出場し、493打席(歴代3位)で長打率.544という堂々の数字を残した。1995年ALCS第2戦で放った2本の本塁打では、ガーディアンズのワールドシリーズ進出に貢献。2008年には36歳にしてドジャースで10月の8試合で25打数13安打、4本塁打と健在ぶりを示した。2004年には、レッドソックスのワールドシリーズ制覇でMVPにも輝いている。
2.ホセ・アルトゥーベ:27本
アルトゥーベはポストシーズンの“火付け役”としても知られており、初回に放った本塁打はプレーオフ最多の8本。ポストシーズン最初の3本塁打は、2017年ALDS第1戦レッドソックス戦での1試合3発だった。最も記憶に残るのは2019年ALCS第6戦、アストロズをワールドシリーズへと導いた、アロルディス・チャップマンから放ったサヨナラ弾だ。
2021年ALDS第4戦での一発で、アルトゥーベは5年連続でのポストシーズン本塁打を記録。続くALCS第1戦レッドソックス戦の2ランで通算20本に到達し、第4戦のソロで内野手としてのポストシーズン通算本塁打記録を更新した。さらにワールドシリーズでもブレーブス相手に第2戦と第4戦でそれぞれソロを放っている。
アストロズがワールドシリーズを制した2022年は、自身にとって2015年以来の“10月0本塁打”に終わったが、2023年のALDSツインズ戦では初打席で先頭打者弾を放ち、ALCSレンジャーズ戦でも第3戦にソロ、第5戦九回に逆転の3ラン、第7戦終盤に再びソロと勝負強さを示した。
3位タイ.カイル・シュワーバー:23本
シュワーバーは2015年のルーキーイヤーに、ポストシーズン2打席目でソロ本塁打を放ち、ワイルドカードゲームでカブスの勝利に貢献。初のプレーオフで5発を記録すると、その後も10月に強さを発揮し、左打者のポストシーズン通算本塁打記録を樹立した。先頭打者弾も通算5本で最多だ。
フィリーズ加入(2022年)以降はこのランキングをさらに駆け上がり、ポストシーズン14本塁打を放った。フィリーズ移籍後1本目は、2022年NLCS第1戦パドレス戦の豪快弾で、打球初速119.7マイル(約192.6キロ)とスタットキャストが導入された2015年以降で最速のポストシーズンの本塁打となった。このシリーズだけで3発、ワールドシリーズでもアストロズ相手に3発を放った。
2023年のポストシーズンでも5発(いずれもNLCS・ダイヤモンドバックス戦)。直近ではドジャースとの2025年NLDS第3戦でも2本を放った。四回に山本由伸から、打球初速117.2マイル(約188.6キロ)、推定455フィート(約138.7メートル)の特大弾を放つと、八回にはクレイトン・カーショウから右翼への2ランをマークしている。
3位タイ.ジョージ・スプリンガー:23本
スプリンガーはポストシーズン出場8回のうち5回で複数本塁打を記録し、特に2017年のワールドシリーズでは5本塁打を放ちMVP級の活躍を見せた。アストロズで19本を積み上げた後、プレーオフ本塁打は5年の空白を挟んだが、2025年にブルージェイズで3度目のポストシーズン進出を果たすと、ALDS第2戦でヤンキース右腕ウィル・ウォーレンからソロを放つと、ALCSでも第1戦でブライス・ミラーから先頭打者弾、そして第3戦でジョージ・カービーから一発。何よりも極めつけは第7戦、七回に放った逆転の3ランだった。
5.バーニー・ウィリアムス:22本
ウィリアムスはシーズンの最多本塁打30本と決して本塁打者として知られているわけではないが、1990~2000年代のヤンキースの主力として10月の打席機会を生かした。1996年ALCSオリオールズ戦では第1戦延長11回のサヨナラ弾を含む2発でMVPを獲得し、最終的にその年はポストシーズン6本塁打を記録した。さらに1999年ALCS第1戦でも延長でサヨナラ弾を放ち、異なるポストシーズン2試合を本塁打で終わらせた3選手(デビッド・オルティス、カルロス・コレアと並ぶ)の一人となった。
6.デレク・ジーター:20本
ジーターのポストシーズン打率.308は、レギュラーシーズンより2ポイント低いが、その分、長打率.465は25ポイントも上回っている。5度のワールドシリーズ王者は、レギュラーシーズン20本塁打を3度達成しているが、ポストシーズンを通算158試合での20本塁打を含めれば4度になる。2000年ワールドシリーズのメッツ戦では2本塁打でMVPに輝き、2001年の“秋のクラシック”第4戦では、史上初めて11月に開催されたワールドシリーズで延長10回のサヨナラ弾を放った。
7位タイ.コーリー・シーガー:19本
年齢の割にポストシーズン出場数がきわめて多い。2015年にデビューした遊撃手は、2023年までの9年で7度のポストシーズンに出場。2020年だけで8本(1ポストシーズンの歴代2位タイ)を放ち、2016年と2021年に各2本、2017年に1本放っている。2023年はALDS1本、ALCS2本、ワールドシリーズ3本の計6発と固め打ちした。第3戦の本塁打は打球初速114.5マイル(約184.3キロ)で、スタットキャスト導入後のワールドシリーズの本塁打では最速となった。
7位タイ.アルバート・プホルス:19本
プホルスはキャリア20回のポストシーズンで19本塁打、ワールドシリーズを2度制し、2004年のNLCSでは4発でMVPに輝いた。ポストシーズン1試合3本塁打の達成者11人のうちの一人で、最も有名な一発はアストロズとの、2005年NLCSの九回表、オールスター守護神ブラッド・リッジから放った逆転3ランで、敵地ヒューストンを静まり返らせた。キャリア後半はポストシーズン出場が3度(2014年エンゼルス、2021年ドジャース、2022年カージナルス)のみで、記録更新の機会は多くなかった。
7位タイ.アレックス・ブレグマン:19本
このランキングを、ポストシーズン初打席から駆け上がった。2017年ALDS第1戦、クリス・セールからの400フィート(約121.9メートル)の先制弾で記念すべき1発目を放つと、デビューから7年連続でポストシーズンでの本塁打を記録し、うち5年で複数本塁打を達成した。ワールドシリーズ通算6発の中でも、2019年“秋のクラシック”第4戦の満塁弾は圧巻だった。
10位タイ.ジャンカルロ・スタントン:18本
キャリア前半8年をマーリンズで過ごしたが、ポストシーズン18本はすべてヤンキースでのもの。2024年ワールドシリーズ第5戦ヤンキースタジアムでの2本目で通算10位タイに浮上した。この一発は2024年ポストシーズン球団新記録となる7本目で、ALCSガーディアンズ戦の4発でシリーズMVPを受賞した。2020年もALワイルドカード・インディアンス戦で2発、続くALDSレイズ戦で4発と固め打ちした。
10位タイ.レジー・ジャクソン:18本
「10月男」(Mr. October)の異名は伊達じゃない。11回のポストシーズンで長打率.527を記録し、ワールドシリーズMVPを複数回受賞したわずか3人のうちの1人だ(打者としては唯一人)。1973年アスレチックス、そして1977年ヤンキースで受賞した。後者ではドジャースを相手に、シリーズ通算5本塁打のワールドシリーズ記録を樹立(その後2009年チェイス・アトリー、2017年ジョージ・スプリンガーが並ぶ)。第6戦ヤンキースタジアムでの優勝決定試合では3本塁打を放ち、チームの8得点中5点を叩き出した。
10位タイ.ミッキー・マントル:18本
マントルは1969年にポストシーズンが複数ラウンド制になる以前の時代でプレー。その中で放ったワールドシリーズ通算18本塁打は歴代最多(ベーブ・ルースの15本を上回る)だ。そのうち9本はドジャースから放ったもので、対戦チーム別ではワールドシリーズ最多。これはレジー・ジャクソン(同じくドジャース相手)と並び、特定の相手へのポストシーズン本塁打数としては歴代2位だ。唯一上回るのはデューク・スナイダーで、ヤンキース相手に10本を記録している。1964年ワールドシリーズ第3戦、カージナルスのバーニー・シュルツから放った一発が、マントルのポストシーズン唯一のサヨナラ本塁打だ。
10位タイ.ネルソン・クルーズ:18本
ポストシーズン通算18本塁打を放っており、2010年の初出場で6本、翌2011年には8本を記録と2年間でその大半を稼いだ。そのうち6本をALCSで放ち、1シリーズでの本塁打数としての新記録を樹立し、このシリーズの第2戦では延長11回裏、タイガースのライアン・ペリーからサヨナラ弾を放った。2021年には40歳を超えてもポストシーズン本塁打を放った史上11人目の選手となり、レイズの一員としてALDS第1戦、レッドソックスのニック・ピベッタからソロホームランを放った。
10位タイ.カルロス・コレア:18本
27歳になる前に13本以上のポストシーズン本塁打を放った初の選手となり、ポストシーズン通算本塁打の記録でも歴史的なスタートを切った。その始まりは2015年ALDS第4戦での1試合2本塁打。以降も「10月男」として活躍を続けている。2020年には6発を放ち、そのうち1本はALCS第5戦レイズ戦でのサヨナラ弾で、アストロズを救うと共に、複数のポストシーズンでサヨナラ弾を放った史上3人目の選手になった。そして2021年ALCS第1戦レッドソックス戦では、七回に勝ち越しのソロをミニッツメイドパークのスタンドに叩き込み、通算18本目のポストシーズン本塁打を記録した。

