村上宗隆、MLBスターへの可能性、長所と弱点は

November 6th, 2025

1年前、村上宗隆(25)が2026年にメジャー移籍する可能性が高いと報じられたとき、この日本人スラッガーは野球界でも屈指の“謎”だった。

村上にはルース級の長打力がある一方で、ジョーイ・ギャロを思わせる三振の多さという課題もあった。2022年には日本プロ野球で56本塁打を放ち、三冠王にも輝いた史上屈指の打撃シーズンを経験しており、スーパースターとしての資質は明らかだった。しかし、その後の2シーズンでは本塁打数こそ維持したものの、打撃全体の成績ではあの歴史的な年を再現できていなかった。

そして1年が経過した今、村上が動き出す。25歳となる左打者は、所属する東京ヤクルトスワローズからポスティングされる見込みで、MLB各球団はすでに受け入れ準備を進めている。
それでも村上はいまだ“謎”のままだ。メジャーでどんな打者になるのかを予測するのは簡単ではないが、その上限にある可能性は非常に魅力的だ。

村上が「次なる国際的スター候補」としてこれほど注目を集める理由、そして本当にその地位に到達するために村上自身が答えを出さなければならない最大の問い。それがこれから語られる。

最重要ポイント:長打力は圧倒的

村上は2025年、左脇腹の負傷によりわずか56試合の出場にとどまったが、復帰後には再び豪快なスイングを見せつけた。

スワローズの打線に戻ってからは驚異的な勢いで本塁打を量産し、56試合で22本塁打を放った。このペースは、2022年に141試合で記録した56本塁打を上回るものだった。

村上は、出場試合がわずかシーズンの3分の1程度だったにもかかわらず、本塁打数でNPB全体のトップ5に入った。つまり、長打力は健在だ。

2025年の村上は、平均的なNPB打者の2倍以上の打撃生産力を示し、wRC+208(100が平均)という数字は2022年シーズンを彷彿とさせるものだった。再びフライボールを打ち上げる能力に優れ、強烈な引っ張りのパワーを発揮していた。これはカイル・シュワーバーやカル・ローリーら多くのMLBスラッガーが本塁打を量産する典型的な打撃スタイルでもある。

また、その圧倒的なパワーは投手に恐れられる要因となり、四球を多く選ぶことにもつながっている。

Murakami's best hitting stats -- via NPB Batter Profile app

その投手たちからの敬意は、まったくもって正当なものだ。メジャーの大砲左打者たちと同様に、村上も打球速度の上限で“最上位クラス”に達することができる。MLBの屈指の強打者たちと比べても遜色がない。

NPBの新たなトラッキングデータ(NPB+アプリによる計測)によると、2025年シーズンで村上の打球初速の最速は116.5マイル(約187キロ)を記録していた。これは多くのMLBスラッガーでも滅多に到達しないほどの数字である。

打者にとって「打球初速の最大値(Max Exit Velocity)」は非常に重要な指標だ。これは、その打者が長打力でどこまで到達できるか、いわば“天井の高さ”を示している。打球をより強く打てるほど、打者としての結果も良くなる。

打球を極めて強く打つこと自体が一つの能力であり、村上のようにそれを高いレベルで実現できる選手は極めて稀だ。

2025年、MLBで116マイル(約187キロ)以上の打球を1本でも放った打者はわずか23人。そのうち左打者は9人しかおらず、オニール・クルーズ、ジェームズ・ウッド、カイル・シュワーバー、エリー・デラクルーズ、そして大谷翔平(31)の顔ぶれが名を連ねている。

村上が今季記録した116.5マイル(約187キロ)の打球初速は、2023年のワールドベースボールクラシック(WBC)でスタットキャストの計測下で示した数値とも一致しており、国際舞台でもそのパワーが本物であることを裏付けている。

ワールドベースボールクラシック(WBC)決勝の米国戦で、村上がメリル・ケリーから放った本塁打は、打球初速115.1マイル(約185キロ)を記録していた。この大会で計測された村上の最速打球である。参考までに、今季のMLBで115マイル(約185キロ)以上の本塁打を放った打者はわずか19人。そのうち左打者は9人で、大谷翔平、オニール・クルーズ、カイル・シュワーバー、ジェームズ・ウッド、エリー・デラクルーズ、フアン・ソトらが名を連ねている。

村上もまた、こうした強烈な打球を安定して生み出すだけの高いスイングスピードを備えているようだ。NPB+アプリによると、2025年の村上のバットスピードの最速は85.7マイル(約138キロ)。参考までにスタットキャストでは、75マイル(約121キロ)以上を「高速スイング」と定義しており、MLBで平均80マイル(約129キロ)を超えるバットスピードを記録しているのはジャンカルロ・スタントンただ1人である。

もっとも、村上の単発で記録した最高スイングスピードの数値だけでは、本質的な分析はあまりできない。多くの打者は、全力で振り切ったときに一時的に高いバットスピードを出すことがあるためだ。つまり、あの数値は“予告編”のようなものにすぎない。

現時点では、村上の平均スイングスピードのデータは公開されていない。それでも、これまでの打球初速や長打力の結果を踏まえると、村上のスイングにはそれに見合うバットスピードが備わっていると期待できる。

最大の課題:三振の数を減らせるのか

もし村上が2022年の直後にメジャーへ挑戦していれば、この問いはそれほど切迫していなかっただろう。NPBはMLBより三振が少ないリーグとはいえ、当時の三振数は今よりずっと抑えられていた。

しかし、記録的だった2022年以降の3シーズンで、村上の三振は増加した。その結果、2023年と2024年は打撃生産がやや落ち込み(依然として優秀だが、歴史的水準ではない)、2025年は表面上の数字が戻ったあとも、その傾向自体は続いた。

空振りが多く、三振が多く、コンタクトが少ない。こうした基礎指標こそ、MLBでの村上に関する最大の懸念点だ。

村上の空振り率と三振率(シーズン別)
出典:DeltaGraphs

  • 2022年:空振り率31.7%、三振率20.9%
  • 2023年:空振り率34.3%、三振率28.1%
  • 2024年:空振り率37.3%、三振率29.5%
  • 2025年:空振り率36.7%、三振率28.6%

日本でこれだけ空振り率・三振率が高いのは良くない。NPBの強打者はMLBに来るとコンタクト指標が悪化しがちで、村上の空振り率と三振率は2025年のMLBでも上位に入る高さだったはずだ。

JapanBallでのカラサワ・ユリ氏の詳細な分析によれば、2025年の村上のストライクゾーン内コンタクト率は72.6%で、2022年の77.1%から低下している。MLBの平均的なゾーン内コンタクト率は82.5%だ。

メジャーリーグでは、アーロン・ジャッジ、大谷翔平、カイル・シュワーバーら長打力と三振の多さを併せ持つ強打者でさえ、ストライクゾーン内のコンタクト率を75%以上に維持している。2025年にこの水準を下回ったスター打者は、ラファエル・ディバースとニック・カーツら、ごく少数に限られた。しかもNPBからMLBへ移ると、コンタクト率はさらに下がる傾向がある。

他の日本人打者、例えば鈴木誠也(31)は、MLBに来た時点で村上よりも高いコンタクト率を示していた。しかし、カラサワ・ユリ氏(JapanBall)は、村上により近いタイプとして興味深い比較対象を挙げている。それが若き大谷だ。大谷は22歳で2017-18年オフにエンゼルスへ加入した際、村上と似たような高いハードヒット率とコンタクト指標を示していた。

もっとも、村上にはリスクもある。速球への対応力に加え、変化球、特に左投手のブレーキングボール(カーブやスイーパーなど)や右投手のオフスピード系(チェンジアップやスプリット)に課題を抱えていたのだ。これは、速球の平均球速が高く、鋭い変化球が多用されるMLB環境では不利に働く可能性がある。

NPBのBatter Profileアプリによると、村上は2025年シーズン、右投手のオフスピード系に対してスイングした球のほぼ半分で空振りし、左投手のブレーキングボールに対してはスイングの約3分の2で空振りしていたという。MLBで成功するためには、これら変化球への対応力をさらに高める必要がある。

つまり村上がMLB入りした際の最優先課題は、持ち前の圧倒的な長打力を維持しながら、コンタクト能力を高めることになる。

それを実現できれば、メジャーでもスター打者になるだろう。村上のバットは、それほどまでに危険だ。

複数の識者が指摘しているように、村上はマット・オルソン型、あるいはディバース、ウッド、ライリー・グリーンらのようなタイプになる可能性がある。三振の多さと引き換えにしても十分な価値がある、本塁打特化型の打者だ。