ワールドベースボールクラシック(WBC)で、誰もが待ち望んだ対決が実現する。大会屈指の「最強投手」と「銀河系軍団」が激突する。
ポール・スキーンズとドミニカ共和国打線だ。
米国代表のローガン・ウェブは「ものすごい試合になる」と期待を寄せ、マーク・デローサ監督も「史上屈指の名勝負になると思う」と語った。
2026年ワールドベースボールクラシック
スキーンズは、15日(日本時間16日)準決勝のドミニカ共和国戦で先発登板。ナ・リーグのサイ・ヤング賞を受賞した現役最強クラスの投手で、今大会に残る投手の中でもトップクラスの存在だ。
一方、ドミニカ共和国打線はここまで5試合で14本塁打、51得点を記録。フェルナンド・タティスJr.、ケテル・マルテ、フアン・ソト、ブラディミール・ゲレーロJr.、マニー・マチャド、ジュニオール・カミネロ、フリオ・ロドリゲスといったスターが並ぶ。
これまで彼らを封じたチームは存在しない。
「ウチにはたくさんの馬(=戦力)、たくさんのスーパースターがいる」
今週初め、マニー・マチャドはこう語った。
「俺たちは自分たちがいいチームだと分かっていることだ。相手がどんな投手でも関係ない。スキーンズでも(前に対戦したベネズエラのエドゥアルド・ロドリゲス)でも同じだ。相手が誰でも、自分たちのゲームプランを遂行する。それが俺たちの得意なことで、目標で、意識していることなんだ」
だが、ドミニカ共和国打線を止められるとすれば、それはスキーンズ以外いない。
では、どちらが優位なのか?
今回の“ヘビー級対決”でスキーンズ対ドミニカ共和国打線の勝負を分ける 3つのポイントを挙げていく。
1)ドミニカ共和国打線はスキーンズの“豪速球”に対応できるか?
大会を通じてドミニカ共和国は対戦先発投手を打ち崩してきた。しかしポール・スキーンズは今大会屈指の破壊力を誇る投手だ。準々決勝のメキシコ戦で投げた速球の平均球速は97.4マイル(約156.7キロ)。これはドミニカ共和国がこれまでWBCで対戦したどの先発投手よりも約4マイル以上速い速度だ。
これまでドミニカ共和国が相手した先発投手の速球平均(WBC 2026)は以下の通り
- エドゥアルド・ロドリゲス(ベネズエラ) 約93.2マイル(約150キロ)
- アリジ・フランセン(オランダ) 約92.4マイル(約149キロ)
- ロナルド・メドラーノ(ニカラグア) 約90.6マイル(約146キロ)
- ヒョン・ジン・リュウ(韓国) 約88.9マイル(約143キロ)
- ライアン・プレイガー(イスラエル) 約87.2マイル(約140キロ)
それに対し、スキーンズは97.4マイル(約157キロ、4シーマー/シンカー合計)を記録。圧倒的な球速差で打者を圧倒する。
つまり、単純な球速の差ではスキーンズが圧倒的で、ドミニカ共和国打線がこれまで慣れ親しんだ速球よりひと段上の速さが襲いかかる可能性がある。ここで打者がどれだけ対応できるかが、勝負のカギになりそうだ。
今大会、ドミニカ共和国打者が先発投手から受けた平均速球は90.8マイル(146キロ)で、20チーム中5番目に遅い。スキーンズの速球はそれを大きく上回るため、対応が勝負のカギになる。
とはいえ、ドミニカ共和国の主力打者は高速球に強い。ジュニオール・カミネロ、フリオ・ロドリゲス、フアン・ソトは特に危険で、昨季MLBのレギュラーシーズンとプレーオフでは、97マイル以上の速球で本塁打を4本以上放った打者はわずか15人。その3人は全員このリストに入っている。
さらに、ブラディミール・ゲレーロJr.、フェルナンド・タティスJr.、ケテル・マルテも高速球に対応可能で、ゲレーロは97マイル以上で打率.329、タティスは.346、マルテは.344を記録。一方、マニー・マチャドのように高速球に空振りや三振が出やすい打者もいる。とはいえ、打線全体として簡単に封じ込められる相手ではなく、スキーンズにとっても油断できない強力打線だ。
2)スキーンズにとって最も危険な打者、狙い目は?
スキーンズの武器は速球だけではない。4シーム、シンカー、スプリッター、チェンジアップ、スイーパー、スライダー、カーブの7種類を駆使する豪華な投球術だ。米国代表のブライス・ハーパーも「すごい球種のレパートリーを持っている。ゾーンを自在に操りながら投げるので、相手は手こずるだろう」と語る。
右打者には高めの4シーム、内角のシンカー、外角へのスイーパーで攻め、左打者には高めの速球からスプリットやチェンジアップで低めに落とすのが基本パターンだ。
この組み合わせを考えると、特に注目の対決はフアン・ソトだ。左打者向けの主要3球種(高速度4シーム、スプリッター、チェンジアップ)すべてに強く、どれも鋭い打球を放つ。スキーンズでもソトの打撃を封じるのは容易ではないだろう。
左打者のソトだけでなく、注目すべきはフリオ・ロドリゲスだ。スキーンズは右打者に対して、上段90マイル台後半のシンカーと中80マイル台のスイーパーを組み合わせる投球スタイルを好むが、ロドリゲスは昨季、同じような速度と変化のシンカーとスイーパーに対しても強打を放った。
右打者では、マチャドやカミネロはスイーパー系の球にやや弱く、スキーンズの得意球で攻めれば有利に立てる可能性がある。ブラディミール・ゲレーロJr.も同じ球種は空振りを誘える場面もあるが、ミスすれば強打されるリスクがある。また、タティスJr.は速球系のシンカーにやや弱いものの、4シームやスイーパーには要注意の打者だ。
左打者では、ケテル・マルテがスプリッター系の変化球に苦戦する場面があり、同僚のジェラルド・ペルドモはチェンジアップ系を苦手にする。
要するに、主軸に1球、2球うまく投げ込めるかが勝負の分かれ目になる。スキーンズがこの駆け引きを制するかどうかが、準決勝の鍵を握る。
3)スキーンズは新たな球を仕掛けるか?
スキーンズには打者ごとの得意球パターンがあるが、7球種を操るサイ・ヤング級の投手。単に決まった組み合わせだけで勝負するわけではない。実際、メキシコ戦では普段あまり使わないフロントドア・シンカーで左打者を翻弄し、思わぬ武器として効果を発揮した。
今回対戦するドミニカ共和国打線はおそらくキャリアで最も手強い相手だ。スキーンズが予想外の球種や使い方を仕掛けても驚くことはないだろう。1打席ごとに攻防の駆け引きが繰り広げられる中で、スキーンズはドミニカ共和国打線の弱点を突き、逆に打者たちは彼の多彩な投球に対応し続けなければならない。
勝敗のカギは、スキーンズがどこまで意表を突けるか、そして強力打線がそれに対応できるかにかかっている。
