今オフ、積極補強を掲げていたオリオールズが、ついに大物を仕留めた。情報筋によると、オリオールズは強打の一塁手ピート・アロンソと5年1億5500万ドル(約240億円)の契約に合意した。契約はメディカルチェックを条件とし、一部トレード拒否条項が含まれるという。球団からの正式発表はまだ行われていない。
10日(11日)、ウィンターミーティングの会場を駆け巡ったビッグニュース。そのインパクトは計り知れない。
今回の契約は、一塁手として史上最高額の平均年俸となり、オリオールズ史上でも最高の平均年俸をマーク。総額でも球団史上2番目の大型契約だ。ここまでの「本気補強」は、2016年にクリス・デービスと7年1億6100万ドル(約250億円)で契約して以来となる。
マイク・エリアス編成本部長就任後、球団は再建を優先し、長期契約には慎重だった。近年は大型補強を狙いながらも結果を出せずにいたが、アロンソ獲得でその流れが大きく変わった。
今回のアロンソ獲得は、マイク・エリアス体制のオリオールズにとって大きな転換点となる可能性がある。2025年は75勝87敗でア・リーグ東地区最下位に沈んだが、2026年は過去4年で3度目のポストシーズン進出を目指し、早期の巻き返しを図る。
31歳のアロンソは、昨季低迷した打線を大きく押し上げる存在だ。5度のオールスター選出を誇り、2025年には打率.272、二塁打41本、38本塁打、126打点、OPS.871を記録し、ナ・リーグのシルバースラッガー賞を初受賞した。
メッツ一筋7年で通算264本塁打。直近5シーズンはいずれも34本塁打以上を放ち、ホームランダービーも2度制覇(2019、21年)。直近4年のうち3年でMVP投票を受け、2024年、25年はいずれも全162試合に出場した。陽気な性格で、チームメートからの評価も高い。
オリオールズ開幕戦予想オーダー
- テイラー・ウォード(左)
- ガナー・ヘンダーソン(遊)
- ジョーダン・ウェストバーグ(三)
- ピート・アロンソ(一)
- サミュエル・バサヨ(DH)
- アドリー・ラッチマン(捕)
- ジャクソン・ホリデイ(二)
- タイラー・オニール(右)
- コルトン・カウザー(中)
MLB.comによると、今週はじめの時点でタンパ在住のアロンソがウィンターミーティングのためオーランドを訪れ、複数球団と面談するという情報があり、その中にオリオールズが含まれていると伝えられていた。実際に9日の会談は、うまく進んだようだ。
アロンソは昨オフにクオリファイング・オファーを拒否しているため、今季はドラフト指名権補償の対象にならない。
MLB.comのマーク・フェインサンド記者によれば、メッツは3年を超える契約を提示することに消極的だったという。またアンソニー・ディコモ記者は、交渉額が想定を超えていく中で、メッツは正式なオファーを出さなかったと伝えている。今週はレッドソックスの関与も噂されていた。
なお、オリオールズは当初、カイル・シュワーバーに5年1億5000万ドル(約233億円)を提示したが、シュワーバーはフィリーズと同条件で再契約。その後、獲得の狙いをアロンソに切り替えた。
これまでなら、これほどの大型補強は他の動きを制限する一手になっていたはずだ。しかし、エリアス編成本部長は、2024年3月に就任したデービッド・ルービンスタイン氏率いる新オーナー陣から、十分な資金的支援と柔軟性を得ていることを強調してきた。
この冬の補強は、これで終わらない可能性が高い。一塁にはすでに人材が揃っているが、それは障害にならない。チームにはライアン・マウントキャッスル、コビー・メヨがおり、捕手のサミュエル・バサヨも一塁起用が見込まれていた。
それでも方針は明確だ。エリアスは「ポジション不問でインパクトのある打者」を最優先に掲げていた。まず獲る。その後で編成を考える。
「重要なのは、チームを強くするかどうか。天井を引き上げ、違いを生む存在かどうかだ。十分に優れた選手なら、起用法は後から見つかる」と語った。
アロンソ加入により、マウントキャッスルやメヨがトレードの駒になる可能性も浮上する。オリオールズは今オフ、先発投手をまだ獲得しておらず、引き続き市場を探っている。
もっとも、この5週間、チームは休みなく動き続けてきた。11月4日にキットレッジを再獲得し、19日にはウォードを補強。12月1日にはヘルズリーと2年2800万ドル(約43億4000万円)で契約した。だが、それらを一気にかき消すインパクトがアロンソ獲得だ。この一手で、オリオールズは「本気で勝ちに行く球団」へと舵を切った。
