QO受諾は4名、今後の動きは?

November 18th, 2025

13人の選手にクオリファイング・オファー(2026年の1年・2202.5万ドル=約36億8000万円の契約)を提示され、ブルワーズのブランドン・ウッドラフ、カブスの今永昇太、タイガースのグレイバー・トーレス、ヤンキースのトレント・グリシャムの4選手が受諾した。他の9選手はフリーエージェント(FA)のままとなり、他球団と契約した場合は、元の所属球団がドラフト指名権の補償を受け取る。なお、この制度が2012年に始まって以来、QOを提示された選手のうち、受諾したのは18人である。

以下に、今年のクオリファイング・オファーに関する動きをまとめる。

QO受諾

※ファングラフスによる2025年WAR(勝利貢献の総合指標)順に記載

*トレント・グリシャム(外野手/ヤンキース)
**
2025 fWAR: 3.2*

2025年の大きなサプライズの1人となったグリシャムは、本塁打(34本)、打点(74)、四球(82)、OPS(.812)など多くの項目でキャリアハイを記録した。2022〜24年の381試合での打率.191、出塁率.298、長打率.353、39本塁打から大きな飛躍となった。

*グレイバー・トーレス(二塁手/タイガース)
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2025 fWAR: 2.6*

タイガースは2024年12月に1年1500万ドル(約24億7000万円)で契約。ヤンキースが昨オフ、FAとなったトーレスにQOを提示しなかったため、今年もその対象だった。オールスターに選出されたものの、シーズン後半はOPS.659と失速。最終成績は16本塁打、74打点、OPS .745(OPS+ 108)で、2024年と同程度の数字に落ち着いた。

ブランドン・ウッドラフ(先発投手/ブルワーズ)
2025 fWAR: 1.8

キャリアを通じてケガによる欠場が多く、右肩手術により2024年は全休した。それでも2019年以降、イニング単位の投球内容ではトップクラスだ。2025年9月に右広背筋の張りで再び離脱するまで、12先発で防御率3.20、K/BB(三振/四球比率)5.93を記録していた。

*今永昇太(先発投手/カブス)
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2025 fWAR: 0.9*

今永は2024〜25年の54先発で防御率3.28、K/BB 5.39と安定した成績を残していたが、カブスは2025年終了時に3年5700万ドル(約94億円)の球団の契約延長権を行使せず、それを受けて今永も1500万ドル(約24億7000万円)の選手の契約延長権を破棄し、FAとなった。だが最終的にはQOを受諾し、再びカブスに戻ることとなった。

QO拒否

※ファングラフスによる2025年WAR順に記載

カイル・シュワーバー(DH/フィリーズ)
2025年fWAR:4.9

シュワーバーにとって、フィリーズとの契約最終年はこれ以上ないほど素晴らしいシーズンとなった。全162試合に出場してリーグ最多の56本塁打を放ち、メジャー最多の132打点を記録。OPS+は自己最高の150をマークし、フィリーズとの4年契約を華々しく締めくくった。契約期間中、シュワーバーの187本塁打を上回るのはメジャー全体でアーロン・ジャッジ(ヤンキース)だけ。ポストシーズンでも見事な活躍。通算23本塁打は歴代3位タイにランクインしている。

カイル・タッカー(外野手/カブス)
2025年fWAR:4.5

今FA市場のNo.1選手とされ、2021年以降のWAR23.4(ファングラフス)、OPS+145を記録。2025年は右手の骨折や左ふくらはぎの張りに悩まされながらも、アストロズからトレードで獲得したカブスで136試合に出場し、22本塁打25盗塁の3度目の20-20シーズンを達成。OPS+143とハイレベルな成績を残した。

レンジャー・スアレス(先発投手/フィリーズ)
2025年fWAR:4.0

フィリーズの先発ローテーションに加わった2021年以降、116試合に先発して防御率3.39を記録。これは同期間に100試合以上先発した投手の中で13位の好成績だ。また、ポストシーズンでも素晴らしい成績を残しており、通算42回2/3を投げて防御率1.48をマークしている。

フランバー・バルデス(先発投手/アストロズ)
2025年fWAR:4.0

「真のエース」が不足しているFA市場において、おそらく最高の先発投手であると思われるバルデスは、アストロズで継続的な成功を収めてきた。2020年以降、973イニングを投げて防御率3.23を記録。奪三振とゴロ率を両立させたピッチングで先発ローテーションを牽引してきた。

ボー・ビシェット(遊撃手/ブルージェイズ)
2025年fWAR:3.8

2024年はケガに悩まされ、81試合でOPS.598に終わったビシェットにとって、今季はFA前に自身の価値を証明するための重要なシーズンだった。かつての輝きを取り戻し、打率.311、18本塁打、94打点、OPS.840の好成績をマーク。見事に復活した。

ディラン・シース(先発投手/パドレス)
2025年fWAR:3.4

成績は安定していないものの、シースは素晴らしい球威を持ち、非常に頑丈な投手であることを証明している。今季は全先発投手の中でトップの空振り率33.8%(1000スイング以上)を記録。5年連続で32試合以上に先発し、214個以上の三振を奪っている。

エドウィン・ディアス(救援投手/メッツ)
2025年fWAR:2.0

ディアスは2022年シーズン終了後にFAとなった際、メッツからクオリファイングオファーの提示を受けなかった。クオリファイングオファーの提示期限前に5年契約で残留したからだ。今季は防御率1.63をマークし、9イニングあたり13.30奪三振と三振奪取能力の高さも健在。オプトアウトの権利を行使し、5年契約の残り2年を破棄してFAとなった。

ザック・ギャレン(先発投手/ダイヤモンドバックス)
2025年fWAR:1.1

ダイヤモンドバックスは今季、シーズン終了後にFAとなる予定の選手を夏場に次々と放出したが、ギャレンはチームに残した。今季は33試合に先発し、自己ワーストの防御率4.83。2019~24年には防御率3.29をマークしていたが、今季は本来の実力を発揮できなかった。

マイケル・キング(先発投手/パドレス)
2025年fWAR:0.8

キングは昨季、フルタイムの先発投手への転向を成功させ、サイ・ヤング賞投票で7位にランクイン。今季も好成績を残していたが、ケガに泣き、シーズンの約半分を欠場した。

クオリファイングオファーの提示を受けなかった主な選手

ルイス・アライズ(パドレス)
ザック・エフリン(オリオールズ)
ルーカス・ジオリト(レッドソックス)
ホルヘ・ポランコ(マリナーズ)
デビン・ウィリアムス(ヤンキース)

クオリファイングオファーの対象外となる選手

FA選手全員がクオリファイングオファーの対象となるわけではない。過去にクオリファイングオファーの提示を受けたことがある選手は対象外となる。つまり、以下のFA選手たちはクオリファイングオファーを受ける資格がない。

ピート・アロンソ(メッツ)、タイラー・アンダーソン(エンゼルス)、クリス・バシット(ブルージェイズ)、コディ・ベリンジャー(ヤンキース)、アレックス・ブレグマン(レッドソックス)、アレックス・カッブ(タイガース)、マイケル・コンフォート(ドジャース)、パトリック・コービン(レンジャーズ)、ジェイソン・ヘイワード(パドレス)、ライセル・イグレシアス(ブレーブス)、ケンリー・ジャンセン(エンゼルス)、ニック・マルティネス(レッズ)、マーティン・ペレス(ホワイトソックス)、マーセル・オズナ(ブレーブス)、J・T・リアルミュート(フィリーズ)、デービッド・ロバートソン(フィリーズ)、カルロス・サンタナ(カブス)、マックス・シャーザー(ブルージェイズ)、クリス・テイラー(エンゼルス)、ジャスティン・ターナー(カブス)、ジャスティン・バーランダー(ジャイアンツ)

また、メジャー/マイナーにかかわらず、レギュラーシーズン開幕日から最終日まで、同じ球団に所属していなかった選手も対象外となる。このカテゴリーに該当する主なFA選手は以下の通り。

ハリソン・ベイダー(フィリーズ)、ライアン・ヘルズリー(メッツ)、メリル・ケリー(レンジャーズ)、キム・ハソン(ブレーブス)、ジョシュ・ネイラー(マリナーズ)、ライアン・オハーン(パドレス)、タイラー・ロジャース(メッツ)、エウヘニオ・スアレス(マリナーズ)、マイク・ヤストレムスキー(ロイヤルズ)

補償とペナルティ

チームが選手にQOを提示し、その選手が他球団と契約した場合、前所属球団は翌年のドラフト指名権による補償を受け取る。

一方で、QOを拒否した選手と契約する球団は、ドラフト指名権の没収というペナルティを受ける。ただし、球団の最上位の1巡目指名権は没収対象外となる。また、翌年MLBドラフト開始時点で、QOを拒否して所属先が決まっていないままの選手は、補償対象から外れるため、新チームは指名権を失わずに契約できる。