チェコ代表の捕手マルティン・チェルベンカは、幼い頃、バリー・ボンズ氏が大好きだったから、”バリー”というあだ名がついている。ボンズはメジャーリーグ通算762本塁打の記録保持者で、正真正銘のレジェンドだ。そんなスーパースターに匹敵する、むしろそれさえ上回るほどのレジェンドに、チェルベンカとチームメートは出会う機会を得た。
それが、世界プロ野球本塁打記録を持つ王貞治氏だ。7日に行われたチャイニーズ・タイペイとの試合前に、王氏はグラウンドを訪れていた。
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王氏は日本プロ野球で22年間プレーし、通算868本塁打を記録。さらに1990年にはハンク・アーロンとともに「ワールド・チルドレンズ・ベースボール・フェア」(WCBF)を創設し、世界中で野球の普及活動に励んできた。世界最多本塁打記録以上にレジェンドが大切にしているのが、野球の楽しさを、どれだけ世界の子どもたちに広められるのかという影響力だ。
昨年の東京シリーズで「こんなに幸せなことはないですよ。子供たちが野球について深く学ぶと同時に、自分自身を知り、野球の楽しさを見つけることができます」と王氏はコメント。
「これは私だけではなくハンク・アーロンにとっても成し遂げたかった夢なんですよ。私もアーロンも現状に満足しているし、とても幸せを感じています。何よりも私は野球の現状にとてもワクワクしています」と続けた。
チェルベンカ、三塁手マルティン・チェルビンカ、捕手マルティン・ゼレンカはいずれも子どもの頃にこのイベント(WCBF)に参加している。野球が最近までそれほど知られていなかった国だからこそ、彼らが選手として成長するうえで大きな役割を果たした大会だった。
チェルベンカは「特別なことだ。世界中の偉大な選手と会える機会なんてそうない。もちろんみんなメジャーリーグは見ているけど、王貞治は日本だけでなく世界の人々にとっても大きな存在だ。こうしたレジェンドに会えるのは特別な瞬間だ。野球には本当にすごい可能性があるし、本当に感謝している」と語った。
「体が大きく立派になっちゃったから分からないけどね」と王氏は冗談まじりに語った。
「野球を続けてくれて、今度は後輩たちの指導にも役立ってくれるだろうから、チェコの野球のレベルを上げるためにも頑張ってほしいです」
チェコ代表を訪れた日本のレジェンドは王氏だけではなかった。侍ジャパンの前監督、栗山英樹氏も、パベル・チャディム監督を訪ねていた。
2人は2023年のWBCをきっかけに親しくなり、栗山氏はチェコにあるチャディム監督の自宅や神経科クリニックを訪れたこともある。また、同氏の協力もあり、チェコ代表と日本代表は正式なパートナーシップを締結。日本は大学選抜チームを「プラハ・ベースボール・ウィーク」に派遣し、チェコは侍ジャパンとのエキシビション試合を行うようになった。
普段は背番号13をつけるチャディム監督が、89番をつけている理由は二つ。一つは、栗山氏への敬意を示すため。もう一つは、共産主義体制を終わらせた「ビロード革命」だ。この革命によって国が開かれ、世界各国の野球指導者がチェコに来られるようになった。
「89は私のメンターであり、WBCで最も尊敬する監督である栗山さんの番号だ。栗山さんへの敬意、日本への敬意、日本のファンへの敬意、そして私たちが感じている多くのサポートへの感謝を示したかった」とチャディム監督は説明。
「そして1989年、ビロード革命によって私たちの人生は大きく変わった。普通のスポーツとして野球をプレーできるようになったことは、本当に大きな意味がある。もう隠れる必要はないんだ」
チェコ代表のコーチ陣は、こうした国際的な協力関係を象徴している。監督のチャディムはチェコ出身、投手コーチはオーストラリア人、打撃コーチはアメリカ人。さらにこの冬は韓国の打撃専門家と協力し、日本人コーチもスタッフに加わっている。
「野球界にはヨーロッパの存在がもう少し必要だと思う。私たちは全てをつなぐことができるからだ。だからこそ、オーストラリア、日本、韓国、アメリカ、それぞれから知識を得られることがとても嬉しい。さまざまな野球観を集め、その中から最良のものを見つけることができるんだ」とチャディム監督は締めくくった。
